重なる有耶無耶





リドウと来たそこは、お洒落な所で庶民に親しまれる飲み屋って感じはあまりなかった


とりあえず、2人でカウンター席に座ってメニューを見る

こういう店は飲み物しかないと思っていたが、ご飯もあった


店員が注文を聞きにきたから、私はパスタセットを頼んだ




「これと……これの2つで」




リドウは高そうなカクテルを指してそう注文した

やっぱエリートは格が違うねぇ〜と思ったが1つ疑問が




「(あれ?“2つ”?)」




たしかにそう聞こえたけど、まさか1人で2つ飲むわけないよなぁ……私は聞き間違えたんだろうって思って注文は以上にして後は待つ


……その後すぐ、何も会話が無く沈黙が出た




「(こんな…2人っきりになるのは、分史世界でたまにだからなぁ…)」




違った形で……プライベートで2人っきりになるのは、初めて

だから、緊張する気持ちと、周りから見て自分達はどんな風に見えるのかな?と気になった

まさか、いきなりこんな事になるなんて…

リドウは何の為に自分を?

…と、思っているとリドウが話し掛けてきた




「緊張してんのか?」




私の様子を見て楽しそうにクスクス笑う彼に「えぇ、まぁ…」と答えた




「なんで、俺がこうしてお前を誘ったかわかるか?」

「……いえ」




本当にわからない。聞きたいぐらいだよって思っていたら、彼は顔を近付けて「教えてやるよ」って耳元に囁いてきた




「っ…!?」




なんだか、耳に何とも言えない圧と言うか温度を感じて、思わず顔が赤くなるのが自分でもわかる


リドウは真っ直ぐ私を見つめてきた




「お前を見て思ったんだ…」




これって、まさか…

いやいや、超モテるリドウに限って私なんか…

それに、あんなに嫌な奴って思っているのに、ドキドキしてるなんて…

私は…

複雑な気持ちで、リドウを真っ直ぐ見て聞く



そして




「最近、貧相な生活しているって思った」

「……え?」

「飯だよ。お前いつも安っぽいのしか食ってないだろ?」

「はぁ…」

「だから、今夜は奢る。ありがたく思えよ?」

「な、な、な……何ですと!?」




言われたのは、そんな人を見下した態度で頼んでもいない奢り発言


その時、私が頼んだパスタセットが来た

それを見たリドウは「これだけでいいのか?もっと頼んでいいぞ」と言ってきた


おいおいおい!私の食事の事情を見てたんかいっ!

リドウはまたクスクス笑っている


そして、顔の赤い私を見て一言




「告白してほしかったか?」

「なっ……!?」




たしかに、さっきはドキドキしてしまったけど……そんな期待なんて!

いや、でも奢り発言って普通はちょっと嬉しいはずなのに、なんかガックリ感が……

雰囲気に騙されたって思ってしまった


……ん!?

いやいやいやいや!まさか、まさか、まさか!

私がリドウに対して…

あぁ!もう、わからなくなってきた!


とりあえず…




「ち、違いますよっ!何言ってんすか!勘違いも良いところです!だいたい貧相な生活って……あんたがあたしに借金背負わせなければ、そうならなかったんだよ!!」




もう途中から敬語は消えたけど、関係ない

とりあえず「告白してほしかったか?」って言って“俺の事好きだろ?”みたいな態度で笑うリドウに完全否定した!




「全く!モテる人ってナルシス度と自惚れがひどいっ!一旦、山に籠もれ!」




なんて、訳がわからない言葉を並べて怒って、その勢いでパスタを食べ始めた

……おぉ、美味いな

パスタの美味しさで、怒りが無くなりそう


そうなった時、リドウはクスクス笑うのを止めて言った




「ようやく、いつものリルになった」

「え……?」




何…?どういう事なの?

そう思っていると、言いたい事が顔に出ていたのか、話し続けた




「ここのところ俺の発言にあまり反応しなくなった上に、俺を避けているように見えた」

「そ、そんなわけ無いです…」

「じゃあ、理由は何だ?」

「特に……」




マズい…避けていたわけでは無いけど、そんな風に見られていたんだ

じゃあ、この誘いは奢りが目的じゃなくて私が悩んでいたのを聞く為に?

けど、それに関してはユリウス室長に聞いてもらったから大丈夫

だから、リドウにまで話そうか?って悩んでいると…




「……ユリウスには話せて俺には秘密か?」

「えっ!?今日公園で話していたの、わかったんですか?」




驚いて聞くと、ただ今日の昼に会社で私とユリウス室長が見かけなかったから、カマを掛けたって…


は、はめられた〜!

まんまと引っ掛かり、今日ユリウス室長と話した事を肯定すると、リドウは不機嫌な表情になり、どうなんだ?って目で訴えてきた

……仕方ない。こうなったら話すしかない




「その……リドウ副室長って分史世界には容赦無いんだなって思ってます」

「何故だ?」

「だって、この前リドウ副室長は過去の自分の前で母親を……!」




ここまで話すと、リドウは「あぁ、あの時か」と言って、さっきとは打って変わってなんだか落ち着いた表情になった




「……昔話をしようか」



そう言ってゆっくり話始めた


[TOP]