重なる有耶無耶





赤くてレモンが刺さったグラスはリドウに。

オレンジ色の液体の入ったグラスを私に寄越した




「えっ」

「2人で来てるなら、2人で飲むだろ?」

「それは、20歳以上の方同士の話だと思いますよ?私はまだギリギリ未成年です」

「もう少しで20歳になるだろ?なら、問題無ぇよ」




たしかに元の世界での時間を持ち越せば、私はもう数ヶ月で20歳になる

けど、今はまだ19歳だから飲んだら違反だって思っていると




「……なんてな、それはジュースだから安心しろ」

「本当ですか?」




恐る恐る飲むと、たしかにアルコールの無い甘みの強い果汁の味が口に広がった




「美味いか?」

「はい。甘くて美味しいです」




本当に美味しいから、笑顔でそう答える




「お前に似合うって思って選んだ」

「このジュースですか?」

「あぁ。リルっぽいだろ?」

「ん〜……自分じゃわからないです」

「要するに甘過ぎるって事だ」




甘過ぎる?それってつまり…




「私は優しすぎて甘っちょろい性格…?」

「わかっているじゃねぇか」

「むぅー。たしかに自分で言っちゃなんですけど、他人に気を遣い過ぎているかもしれませんけどねー」




わざと子供みたいに頬を膨らませて、そう言った

それを見たリドウが「ハハハッ!」と笑う

……別にウケを狙ったわけではないけど、リドウがこの膨れっ面に笑ってくれるなんてって怒らずにその様子を見た

その時、リドウは自分の飲んでいたグラスについていたレモンを私のジュースに絞り入れた




「あぁーーー!何するんですか!?」

「人生、甘いばかりじゃないからな」

「意味わからない!何ですかそれ!?」




急にこんな嫌がらせをして何なんですか!?と怒るとリドウは続けて言った




「つまり、お前が甘い判断や考えをするのは自由だが、不意な事があってそれは酸い物や……もしくは辛い苦さになる結果にもなるぞ?」

「え……?」

「このジュースみたいに、酸い物になってどうしようもならない時、お前ならどうする?」




これって…単なる嫌がらせじゃない

私に何かを教えようとしているのかな?


…レモンを入れられたジュースを見てある事を思い出す


元の世界で、友達たちと遊んだある時に、1人が皆の麦茶をアイスティーと間違えてガムシロップを入れた事

私達は爆笑しながら「どうするんだよ、これ!」ってガムシロップ入り麦茶を飲むか飲まないか話した

で、結局飲んでみたら……以外とイケたと私は思った。なんか味の薄いコーヒーを飲んだみたいで


そんな感じに、ジュースも違う味だけど飲めると思って飲んでみた

……酸味がついたけど、悪くない味だ




「“悩んだ末に飲む”選択か。結果は?」

「はい、果物同士だった為か、このジュースの味とレモンは味の喧嘩はしませんでした」

「そうか……ま、そんなわけだ」

「え、何がですか?」

「ある程度、先の事が予測出来ればすぐに選択をしている。つまり俺はそうしている」

「っ!」




そうなれば……リドウは両親には情は無いとは言え、考えて選択して分史世界を破壊しているって事かな?

よくわからないけど、そこで辛い事が起きても、その次に“それでよかったんだ”って思えるときがある

それを伝えたかったのかな…?

けど、飲み物で例えられてもなぁ

ちょっと違うのではないか?って思った




「ちなみに、それを飲んだのが俺だったとしよう」

「はぁ」

「俺は失敗したな…って言ったらどうする?」

「それは……別の美味しそうなのを勧めます」

「……レモンを入れたのは俺だから自業自得だろって言って深く関わらないようにしないって選択は無いのか?」

「え…?」

「他人を放って置けないリルはやっぱ甘い……けど」

「?」

「俺の代わりに心を痛ませたのは申し訳ないって思っている……俺が自分の親を殺す所を見せて悪かった」

「あ、いえ…リドウ副室長の正史世界での事情を聞いたら、なんだか……」

「……ハハッ甘い過ぎる言葉だが、それは嬉しいな。特別に優しさと受け取ってやるよ」

「あ、ありがとうございます…」




何が言いたいのか、やっぱりちょっとわからない

けど、私が悩んでいたのを本人に話せてよかった


そして、私達はしばらく飲んでちょっと別の話をしてから帰ることに










―――――――





帰る時、リドウが家まで送ると言って2人で私の住むマンションに向かう




「じゃあ、此処まででいいな?」




マンションの入り口近いところでリドウが立ち止まって私に言った




「はい、今日はありがとうございます」

「いやいや、ユリウスよりは気が利いていただろ?」




その質問には「はぁ…」としか答えられなかったから、聞いてみた




「あの…もしかしてユリウス室長を意識してますか?」




ずっと思っていた…

なんか、リドウはユリウス室長が私にした事以上の事をする。

で、会話に室長の名前が出てくるし…


それを聞いたリドウはこう答えた




「まぁな………嫉妬ってやつだな、多分」

「えっ?」




嫉妬?そう聞こえた私はリドウに誰に対してなのかを聞こうとしたら


いきなり、私を抱き寄せてきた!




「!!?」




あまりに不意だったから、理解が遅れたけど

私の目の前にはリドウの胸があって…

リドウは両手を私の背に回して…


なななな何だこの状況!?




「ユリウスには負けたくねぇからな……」




その言葉に「ユリウス室長との争いに私を巻き込むな!」って本調子なら言えるのに、そんな事より抱き合っている…って事実だけが支配していた




「デートしてくれてありがとな」




そう言うと、あっさり離れて背を向けたまま右手を振って帰って行った


長かったような短かったような…

けど、たしかにさっきまで抱き合ってた温もりが体にあった


何故、こんな事を……


ムカつく事を言われたわけではないのに、変にモヤモヤする…

追いかけて「何すんだよ!痴漢!」って飛び蹴りをしようかと思ったが

疲れたのか、眠くなったので大人しく住んでいる所に帰る


……明日、何故あんな事をしたのか聞こうかな


あの分史世界での悩みは消えたのに

あの人に関われば関わるほど、謎が出来ると新たに思った


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