ひとときの夜間領域
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リドウに連れて来られた場所は
ホテルの近くにあった飲食店
いや、飲食店って呼び方は相応しくないな…
もう高級料理店みたいな場所
時間を考えて夕飯を食べようと思っていたから丁度良かったって言ってもいいのかな?
リドウは淡々と受け付けを済ませると店員が席に案内してくれたけど……
「(こ、これって私は場違いじゃ…)」
案内されている時に他の客を見ると、ドレスやスーツを着た人がほとんど…
すごく不安になった
「(えっと、こういう所はマナーが厳しいのかな?)」
あのナイフとフォークの複雑なマナーがあるのかと不安が増すばかり…
そう思っていると、店員が窓側のテーブル席を案内してくれた
とりあえず座ってメニューを開くと…
うっひゃあ……超高級じゃないけど、高い値段の物ばかり!
この中で安いのを探していると、なんとリドウが勝手に決めて店員に言ってしまった
「えっ!あ、いや、あの!ちょっと…!ど、どれを頼んだんですか!?」
「気にすんな。俺が支払うから」
「えぇ!?」
何だと!?また奢りだと!?しかも前より高そうな所でぇ!!?
金に関してケチかと思ったら、そうでも無いかな?って思ったけど
……もしかして私の借金から費用が出ているからか?って思うと複雑になった
そして、ふと今の自分の状態を確認すると…
「(あ、テーブル席だからリドウと向き合う状態になるんだ!)」
前はカウンター席で隣になったから何か違和感あるなって思ったらこれか!
隣同士も緊張するけど向かい合うのも違う意味で緊張する…それに気付いてリドウを恐る恐る見ると…
リドウはただ私を見ていた
一瞬だけ目が合った事にちょっと驚いて視線を下に落とす。すると…
「何してんだ?こういうのが見たかったんじゃねぇのか?」
「えっ?」
そう言われてリドウを見ると、彼は窓を指していた
言われてみれば窓側なのに外を見ていなかったな……って思い出してその方向を見ると
窓からイル・ファンや空が綺麗に見えた
建物内だからあんまり見れないかな?って思っていたけど、綺麗に輝く街の中心とすぐ下にはあの中央で輝く睡蓮のような花ものも確認できた
右横を見るとオルダ宮も見える
ここはクラン社より低い所だけど、こんな風に街全体が見えるなんて…!
「すげぇか?俺は前に一回ファンの子とここに来たから見慣れたけどな」
自慢なのかそう言ったリドウはなんか得意気の顔して言った
なんで、ここに連れてきたかと思ったらファンの子と来た事あるのかよ
リドウはやっぱチャラい。さっきのナンパ青年よりチャラいって思ったけど、こうしてスマートに素敵な所を案されればたいていの女性は落とせるな……なんて悔しいながら考えてしまった
にしても……
「(オルダ宮のてっぺんの樹ってどうなっているんだ?ゲーム中じゃあまりわからなかったな……まさかラ○ュタのようになってんのかな?)」
そう思ってあの有名なジ○リ映画を思い出した
「(だったら、また違った幻想的でいいかもね〜…)」
「リル?」
「え、あ、はい!?」
リドウに話し掛けられて、慌てて妄想ワールドを閉じる
「何を考えてんだ?」
よほど、何かの表情が顔に出ていたのかリドウはクスクス笑いながら聞いてきた
「えっと、あのオルダ宮を見て元の世界にあったある映画を思い出したんです…」
そうして、ラ○ュタについてちょっと話した
話し終わると、料理が運ばれてきた
ちょっと厚みのあるステーキと付け合せ野菜が美術品のように綺麗に並べられていた
おぉ!こんなのテレビでしか見たこと無い!って料理にも感動していると、リドウが聞いてきた
「じゃあ、あの……船でやったのは?」
「はい?」
「イバルに支えられながら奇声を発していたあの行動も何かの影響か?」
何ぃ!?タ○タニックごっこの事かぁ!
しっかり覚えられていた驚きより、気持ち良く歌ってた歌を奇声だなんて…
まぁ変な歌を歌ってるみたいな感じに思われていただろうとは思っていたけど、歌じゃなくて奇声……イバルや他に聞いていた人がいたとしたら同じ事を思っていたのかな?ってちょっとショックで不安になった
「あれはですね…」
私はなんとか立ち直ってリドウに話した
えっと、登場人物は貧乏な男性と婚約者がいる令嬢の悲恋話だったよな…
小さい頃に見たけど、何せ年が年だから細かいストーリーの流れはうやむやで思い出せない。でもあの私がやった船の上での事と沈没するシーンはなんとか覚えている
その事を話すと
「ありがちな悲恋話でつまんねぇな…」
って、辛口評価
おいおいおい。見たこと無いからってそんな一言かよ?
私の元の世界でそんな発言すれば、その映画のファンに叩かれるぞ。土下座じゃ済まされないぞ
って、思っていると
「ところでリルはイバルと付き合ってんのか?」
「っ!!?」
なんて質問されて危なく食べている物を吹き出しそうになった!
いきなり思いもよらない質問された驚きもあるけど、何よりリドウからそんな事を聞かれるなんて…ってのが大きかった
「ええぇっ!イ、イバ、イバ…イ、イバルと!?」
この日一番に私はテンパったかもしれない…
リドウはそんな私を見ていつもは笑うのに、今はなぜか真剣そうな顔で「どうなんだ?」って聞く
それを見てこれは落ち着かないとヤバいな…って思って、軽く深呼吸した
「私…イバルとは付き合ってないですよ?」
なんとか話すと、リドウは「そうか…」って一言
「あの…なんでそんな事を聞いてきたんですか?」
「部下同士の恋愛事情は上司がある程度知ってた方がいいだろ?」
「そんなもん…ですか?」
よくわからないけど、そうした方がトラブルになった時にいいのかな?って思ったけど、そこまで干渉していいものか?って疑問も出た
本当にリドウは…この人は何を考えているんだろう?
笑ったと思いきや不機嫌になるし…ただの気分屋にしてはなんかありそうだ…
そう思いつつまたリドウと会話しながら食事をした
―――――――
ホテルに帰ってきたのはもう夜の9時が過ぎていた
「あ、リドウ副室長!これが地図で……」
ホールに行くとイバルがいて、私とリドウが一緒に居た事に驚いていた
「あぁそうか……ん?どうした?」
「いえ……リルさんと一緒にいたんですか?」
イバルは地図が書かれた資料をリドウに渡しながら、私達を交互に見て聞いてきた
「あぁ、俺達ちょっとデートしてきたもんな?」
「デ、デートォ!?」
そう言って私の肩に手を置いて…なんかドヤ顔っぽい表情になった
イバルはデートと聞くと更に驚く
…そんなに私とリドウが一緒にいるのが変なのかな?
って言うか、このリドウのドヤ顔は何なの?純粋なイバルをからかっているのかな?
「デートって言っても、ただ食事をしてきただけよ」
「ただの食事?十分デートになってただろ」
「ん〜…そうなりますかね?」
実際今までデートどころか、男性と付き合った事が無いからどんな事がデートなのかよくわからない
リドウは「明日は早いから遅れるなよ」って言うと部屋に戻って行った
「じゃあ、私もう寝るね」
「はい、おやすみなさい…」
なんだかイバルはちょっと唖然としている様子に見えたけど、長い移動ばかりのせいかもう体がダルい…
早く寝ようって部屋に戻った