暴走の先で…
数秒後くらいかな?
次に目を開けると、そこはさっきまでいた先頭車両ではなく、座席のある車両にいた
一瞬で後ろの車両に逃げられたわけじゃない。つまり……
「(ここは…分史世界!)」
そう理解して周りを見ると、ジュードとルドガー、そして少女とルルがいた
ビズリー社長達は分史世界に来れなかったみたいけど、大丈夫かな…!?
不安になっていると、ルドガー達が気づいたみたい
「い、今のは……?」
ジュードは周りを見ながら何が起こったのか聞く
どうしよう……分史世界の事は関係者以外に秘密だけど……
この中で説明できるのは私しかいない……あ、ルドガー!
彼ならユリウス室長から分史対策について何か聞いていてわかるかも……って言うよりも、もう新人エージェントとしてクラン社にいたりして!
って期待して彼を見たら、なんか困惑した表情をしていた
あれ……?まさか知らない?
ルドガーは私達の方を向くと、少女はジュードの後ろに隠れた
「えっと…?」
「エルはエル。エル・メル・マータ」
ジュードは自身の後ろに隠れている少女……エルに安心させようと優しい口調で話しかけた
「心配ないよ、エル」
「心配ある!その人も時計も変になったし!」
エルは先ほどのルドガーの姿や行動に怯えてしまったのか、後ろに隠れたままルドガーを指差して言った
しかし、ルドガー自身も何が起こったのかわからない様子……けど、エルを怯えさせてしまったのは事実
ジュードもエルと同じように思っているのかって、心配そうな目で見ると
「僕、不思議な事に縁があって……四大精霊とか、精霊の主とか、ね」
ルドガーの言いたいことがわかったのか、そう微笑んで言った
「(ジュードってば、ミラの事を思い出したのかな?けど、この世界で精霊がいる時点であらゆる可能性があると思うなぁ〜)」
なんて、元地球人からの意見として内心で思っていると「そう言えば、貴女は?」ってジュードに聞かれた
「あ、私の自己紹介がまだだったね。私はクランスピア社のエージェントのリル。よろしくね」
「よろしく」
そう3人と一匹に挨拶する
そして、まだジュードの後ろに隠れているエルの前にしゃがんで
「大丈夫だよ。さっきのあれは皆を守るために変身した姿だから、この人は怖くないよ」
「…本当?」
「うん」
エルにそう言って立ち上がると、今度はルドガーに向いた
「ここで言うのもアレだけど、ユリウスさんから前に貴方の話をちょっと聞いた事あるよ」
「兄さんから?」
「うん。お料理が上手で兄思いの良い奴って……ねぇ、クラン社に入りたいって聞いてたけど、入社試験受けるの?」
「あぁ、それ数ヶ月前に受けて落ちてしまったんだ」
「えっ」
私の質問に答えたルドガーは苦笑しながら言った
まずい…聞いちゃいけない事だったかも…
えっと、何か言って励まさないと
「あ……そうだったんだ!あそこは結構難しい所だから落とされる人はいっぱい居るよ!面接試験官って厳しい人だった?」
「厳しい……そうだったかもな。誰よりも」
「だったら、仕方ないよ!……ユリウスさんだったら大目に見てくれそうだけどね」
「いや、その試験官が兄さんだったんだ」
「えっ!?」
や・ば・い…!
更に傷を抉っちゃったよ!私!!
まさか、試験官が実の兄で、その人から落とされていたなんて……
「いやっあのっ……ご、ごめんなさい!貴方達の事情を知らないで勝手に話して……!」
もう、どうしようもならないから、すぐに頭を下げて謝った
あぅ…初対面だから、悪い印象を与えないようにって話しかけて撃沈…
「いや、大丈夫だよ。俺の実力が足りなかったのが原因だしな」
私の言った事に気にしてないって言ってくれて、なんかまだ申し訳ない感でいっぱいだけど、安心した
その時
「また来た!」
私とルドガーが最初に出会った時みたいに、迫ってくるアルクノアをエルが見つけ、私達は武器を構えて立ち向かおうとしたら…
アルクノアは何もせず、その場に倒れた
何が起こった?そう思っていると、倒れたアルクノアの後ろから鉄棒を持ったピンクのスーツの女性が来た
「ヴェラント頭取、こっちです」
「お見事、ノヴァ君。警備の者にも見習わせたいよ」
そこにいたのはあのヴェランド銀行の頭取と、その社員のノヴァだった
「(なるほど。この世界ではビズリー社長とヴェルさんの代わりに彼らが……そしてジュードはいないからノヴァが攻撃……)」
彼らの言動は正史世界のビズリー社長達と同じだって気付いた私はそう判断した
そうなれば、彼らのどちらかが時歪の因子かもしれない……
けれど、私に近づいても、彼らに何も反応は無いから違うみたい
「この台詞……」
ジュード達はこの彼らを見て、先程のビズリー社長達と同じだと違和感に思ったみたい
……分史世界って分からなければ、驚くよね
「ルドガー!それに、リル!こんなところで!」
ノヴァが私を知っている様子から、この世界は正史世界とほぼ同じ歴史を歩いていたと判断した
私達を知ってる様子のノヴァにエルは「友達?」と聞いてきて、私が頷くとノヴァが話してくれた
「ルドガーとは同級生だよ。リルとは借金を背負った者とその取り立て人って関係!」
「ちょっ!ノヴァ!普通に友達って言ってよ!」
「あ。ごめん、ごめん」
いくら分史世界とは言え、そんな事実を言わなくても…!
あ、でも分史世界だから嘘だよって言っても……いやいや、もし正史世界でジュード達がノヴァに出会ったら同じ事だし……
って、色々考えていたら、エルが私に近づいてきた
「あなた…借金してたの?」
「う、うん…前にちょっとね。でも今は無いよ」
「色々大変だったんだねぇ〜…」
そう言ったエルは私に「頑張りました!」って拍手してくれた…慰めてくれているのかな?
その時、列車に大きな衝撃がきて加速し始めた!
「とにかく、列車を止めよう」
何が起こっているのかわからないルドガーは混乱を抑えながら、また先頭車両に行こうとした
ここは分史世界とは言え、正史世界と同じく列車テロが起きている
早く戻らないと、ここでのテロで死ぬ事になって正史世界での列車が……!
どこだ?時歪の因子は…!
「ねぇノヴァ。この列車を襲った犯人を見た?」
「え、えぇ。白いコートのテロリストが乗客を無差別に…」
白いコート?たしかアルクノア達の服装は鉄の防具に服装は黒と青だけ…そんなテロなんて…
「(もしかして…)」
私はある予想をした
そして、その予想が合っていたら、時歪の因子の可能性が高い!
ルドガーとジュードは、私と似たような予想をしたのか顔を見合わせてきた
時歪の因子っては思わないけど、その白いコートの人って言われて誰なのか予想できたみたい
私はそれに頷くと先頭車両に向かう。そしてその後をエルが追いかけてきた
「エルも行く!」
「駄目だよ。危ない」
ついて行こうとしたエルにジュードは止めた
「エルも、この列車でカナンの地に行かなきゃダメなの」
「カナンの地、って……伝説の?」
「知ってるの?どこにあるかも!」
「うーん、古文書で読んだだけだから…」
「コモンジョかー……」
エルにとってよくわからない単語だったが、要はわからないって言われて残念そうに下を向く
私達はエルは出会った時から両親と一緒じゃないのに気づいて、1人にしても危ないと考え連れて行く事にした
「分かった。でも、戦いになったら――」
その言葉を聞いたエルは、近くの席に走って行っき、そこから「逃げるのは得意!」って得意そうな笑顔を覗かせて私達に言った
「まぁ、何かあったら私が守るけど」
「助かるよ」
「エル、本当に大丈夫だけどなぁ」
エルの守りは私がやるって言ったら、ルドガーとジュードはお願いって頼ってきたけど、エル本人は自分の事は自分でやるつもりだったみたいだから、不服そうな表情をした
そうだよなぁ〜小さい子って年をとる度に、何もしてなくても前よりは強くなったって勘違いしちゃうんだよなぁ〜
私はエルに「本当に危なくなったらだよ」って言っておいた
……本当でなくても、最初からじっと見守っているのは内緒だけど
そして、先頭にルドガーとジュード、その後ろに私とエル、ルルって隊列で先頭車両に向かった