暴走の先で…





先頭車両に着くと、なんだか只ならない雰囲気が漂っていた


慎重に階段を上っていくと、そこには




「ユリウス…室長」




正史世界と同じく、ユリウス室長がいた

しかし、なんだか様子がおかしい

それにいち早く気づいただろうルルが「ナ゛ァーーー!!」って威嚇した

ルルが飼い主に威嚇するなんて……そう思っていると、ユリウス室長は私達の方へ振り向く


その時、ユリウス室長が一瞬黒く光ったような……




「(こ、これは…!)」




私は彼がどう動くか様子を見ていると、ルドガーが近付いて何か言おうとした




「来るな。全部俺に任せろ……」




その時、トンネルに入って周りが暗くなる

……ルドガーを止めたユリウス室長がいつもと違うって感じられるのは、この暗さのせいではない

ルドガーもいつもの兄とは違うと思いながらも、ユリウス室長に聞いた




「なぁ、兄さん。何が起こってるのか教えてくれ」

「知る必要はない」




しかし、そう言われてもルドガーは引かなかった

どうしても教えてほしい。そう思って更に近づいたルドガーに……





「必要ないと……言っただろう!」





ユリウス室長は急に黒い光に包まれて、あの黒い肌に赤い目の恐ろしい姿………時歪の因子になってルドガーに襲い掛かってきた!


やっぱり彼がこの世界の時歪の因子か!


突然の事で動けないでいるルドガーに、ジュードが横から入って庇ったけど、時歪の因子のユリウス室長の力は強く、私達は階段下のホールに落とされた!

私は尻餅を付くようにホールに落ちて、痛みが走ったがそれよりも周りを気にして見ると


ルドガーがユリウス室長にやられる!

私は鞭で室長の右腕を縛って注意をこちらに向けた




「室長!弟いじめを他人の前でなさるなんて、見苦しいですよ!……ルドガー、今よ!反撃しないと私達は皆殺しにされてしまう!」

「わ、わかった…!」




室長から離れられたルドガーは体勢を立て直して武器を構える

そして、右腕を縛っていたからいいだろうって思っていたら大間違いだった

彼は左腕も使える。左手に持った武器で私に斬りかかろうと走ってきた




「うおおお!」

「まずい!エル!逃げて!」




鞭が解けないから反撃できない!私の後ろに隠れていたエルにそう言って、私だけ攻撃を受けようと覚悟していると…




「させないよ!」




タイミングよく、ジュードが私の前にサッ!と来てガードしてくれたお陰で、私もエルも無事だった

ジュードのガードを受けたユリウス室長は、後ろにバック回転する。その時鞭が解けて、私も彼も再び武器を構え直した

そして、またこちらに走ってくる室長に




「止めてくれ!兄さん!」




ルドガーが素早い攻撃技である鳴時雨を腹部に命中させ、そのまま室長は飛ばさせて床に倒れた

私達は呼吸を整えながら、動かない室長の様子を見ていた




「ひっ。何これ!?」




そうしていると、後ろから追いついたノヴァとヴェランド頭取が来て、周りで死んでいる人達と倒れているユリウス室長を見て短く悲痛を上げた

その間に、もう室長は動かないだろうと判断したジュードが先頭車両の運転室の様子を見に行くのを見送ったあとに……




「こいつは……?うちの社員を!」




ノヴァの後ろから現れたヴェランド頭取が、その死んでいる人達を見て自分の部下だと確認すると、ユリウス室長に怒りを露にした




「おい!さっさと殺せ!」




ヴェランド頭取はルドガーにそう言った

けど、ルドガーは躊躇ってなかなか剣を刺そうとしない




「(そうだよな……分史世界ってわからないから……いや、わかってても家族は刺せないよね)」




ルドガーの考えている事がわかる私は、内心でそう思ったけど時歪の因子を放っておけないから、どうしようか考えた




「…兄さんを殺せるわけがない!」




考えている内にルドガーはそう決断した

……こうなったら、私が室長のトドメを刺して時歪の因子を破壊しないと

けど、いきなりそうしたら、ルドガーに誤解されて止められて…

色々面倒になりそうだったから、やれるタイミングを窺った




「庇うのか?この化け物を!?」




ヴェランド頭取が信じられないと頭を抱えていると、倒れていたユリウス室長が「優しいな、お前は……」って言いながら弱々しく微笑み、立ち上がってきた

あ、この表情と口調は正史の彼っぽい

同じくそう思ったルドガーは、やっぱりいつもの兄だって安心した






ところが






「だから!」




次の瞬間、ユリウス室長が右手に持っていた剣を投げた!


剣はルドガーの横を通りすぎると……



ノヴァとヴェランド頭取の腹部を貫通して、剣と床が血で染る



そして……



2人は床に倒れて動かなくなった




「あ、ああ……」




いきなり人が殺されたのを見たエルは、ショックを受けてしまった

いけない!時歪の因子を破壊するタイミングを見計らってて、エルの心配を疎かにしていた!


私はすぐにエルを抱きしめて「大丈夫だから、大丈夫だから」って必死に励ました

そして、室長は一気にルドガーの元へ走って、左手に持っていた剣をルドガーの首筋に当てる




「来るなと言ったんだ」




ルドガーは突然友人を兄に殺されたショックと、兄への期待が壊れてしまい、気が動転して反撃が出来なかった!




「やあああ〜〜〜〜!」




ついにこの状況に耐え切れなくなったエルは、大声で悲鳴を上げた!




「(今だ!今しか……チャンスは無い!)」




そう思って、私はエルから離れてユリウス室長にトドメを刺そうと走った





その時





エルの胸元にある時計が光り出して、ルドガーを再び骸殻に変身させた!




「うおおおおお!」




ルドガーの骸殻で同じく変異した武器の槍でユリウス室長を刺すと、槍の先に時歪の因子が禍々しくカチカチ…と音を立てて刺さっていた


室長は…時歪の因子を抜かれたため、黒い霧状になって消えたけど…




「こ、これは…」




兄が消えた事と、槍の先で怪しく輝く物体が何なのか……と、ルドガーは更に混乱した様子で呆然と時歪の因子を見ていた




「ダメだ!ブレーキが壊されて――」




上の運転室からジュードが戻ってくる

そして、ジュードもエルも、槍の先にあった怪しい物体に気づいて「な、なにこれっ!?」って聞いた瞬間



パキンッと割れて、周りの……世界が砕けた




「うわあああ〜〜〜〜!」




私達の目の前は真っ暗になった





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