暴走の先で…
――――――――――
「……では、……で……」
「ん…?」
目を開けると、そこは先頭車両
しかしさっきとは違い、ノヴァとヴェランド頭取はいなかった
「戻ってこれた…」
安心して立ち上がってまた周りを見ると、分史世界から帰ってきた衝撃に気を失っているルドガー達。そしてGHSで誰かと話をするビズリー社長とその隣で資料をまとめるヴェルさんがいた
「大丈夫ですか?リル様」
「はい、大丈夫ですよ…」
ヴェルさんにそう答えながら、ある事に気がつく。ユリウス室長がいない…
「ユリウス室長は?」
「室長には……逃げられました」
この状態で逃げるってなれば、おそらく安全なところの分史世界だろう
「あ!ヴェルさん列車の状況はどうなっていますか!?」
そうだ、そんな事を考えている場合ではない!正史世界に帰ってこれたのはいいけど、まだ列車は暴走したまま
今度こそ本気で何とかしなければ!
そう思っていると、ビズリー社長が電話を止めて私に言った
「もうどうにもならない。ブレーキが破壊されている」
「そんな…!」
どうしよう!分史世界と同じくブレーキが壊されているなんて……
もうこのまま死を覚悟するしかないの?
そう堪えていた不安が爆発しそうになっていると、ビズリー社長がフ、と笑った
「何を恐れているんだ?」
「いや、だって、私達死ぬんですよ!?」
「ほぅ。なぜ死ぬのだ?」
「なぜって……もう何もできないからですよ!」
この状況で社長はいきなり何を言ってるんだろう……
まさか恐怖でおかしくなってしまったのか!?
そう思っていると、社長は私の右腕を指差して言った
「そこには何がある?」
「右腕にですか?それは…」
言いかけたところで気づいた!
そうだ、私には……
「この結晶の力で…?」
右腕にしていたオリジンの結晶を取り出して社長に聞くと「ようやく気づいたか」と、ちょっと呆れた様子で笑った
「わかりました!やってみます!」
私は意識を集中させ、結晶を両手で握った
「(お願い…!)」
加速する列車と一緒に、私の脈も速くなる
そんな感覚を感じながらも、恐怖を抱きながらも防御の術……バリアーのもっと強力な防御壁が出来るように唱えた
「(頭が…痛い…)」
今までやった事のない術のせいか、頭や全身に流れるように感じる詠唱の力がすさまじい……
けど、ここで止めてやり直したら間に合わない
「(これで……!)」
マナを蓄えて、一気に術を形成さる
「フォースフィールド!」
そう、あのアビスでティアがやったような大きなバリアーを作った
造り上げたフォースフィールドはここにいる全員を包み込む事が出来て、後はこの術が続くように頑張ろうと思っていると、目の前に大きな建物が見えてきた
「あれがアスコルド…?」
おそらくあれがアスコルドだろうと認識して数秒後
まさにあっと言う間だった
列車は凄まじい勢いで
工場に突っ込んで行った!!
列車内は激しい爆発音が鳴り響き、巨大な炎が渦巻き、爆風そして工場や列車の破片がまるで雪崩の様に襲ってくる!
「――――――っ!!」
「大丈夫か!?」
「は…はい…!!」
衝撃波が強すぎて術が壊れてしまうのではないか?って不安になったけど、諦めない
ビズリー社長の心配に私は大丈夫だと答えた
「(絶対…帰るんだから!)」
自身の体力や精神が削られるのがわかる…
「(もっと…もっと力を…!)」
更に結晶を強く握り締めて、念を送るように結晶に願った
「みんなを…助けて……!!」
そう叫ぶと
手の中からパキッ…と小さく何かが割れる音がしたのを聞いて
私の意識は遠のいた