動揺隠せぬ監視者





気が付くと、目の前が真っ白…




いや、真っ白な天井が見えた




起き上がろうとしたら、体がズシッ……と重く重力に引っ張られてる感じがする

だから起きるのを諦め、寝ながら目だけで周りを確認する

………ここは覚えがあるな



薬品に医療器具が置いてる棚や人体図が貼っている壁

そう、そこはクランスピア社の医務室だった



それを確認した時、医務室のドアが開いて私に近づく人が…





「なんだ、死んでなかったか」





赤いスーツに黒く長い髪をなびかせて、オレンジの綺麗な瞳にからかうように笑う意地悪そうな表情をした人


私の上司であり…

まだ自覚は少ないけど、一応付き合っている男性

リドウがいた




「死んでて欲しかったんですか?」




電話では、無事に帰ってこないと許さないって言ったのに……

私はちょっと拗ねた顔をして、リドウが立つ反対方向に体を向かせた




「冗談だ。3日間、目を覚まさなかったから、かなり心配した」




私の拗ねた顔を見て、リドウは肩をすくめてクスリと笑うと、私の頭を撫でながら冗談だって返す

まぁ、冗談なのはわかっていたけど、生きてて良かったとか、もう少し嬉しそうに言ってほしかったなぁ……



…………ん!?3日間?




「え……私、3日も寝たきりだったんですか!?」




私はすぐにリドウの方を向いてそう尋ねると彼は頷く

3日も寝てたなんて………てっきり、あれから数時間くらいしか経ってないだろうと思っていたから、かなり驚いた


そしてその時、私は他にいた人達が見当たらないのに気付く




「あ、あの!ビズリー社長達は…?」




またリドウに聞くと、なんだか言いにくそうな表情になって俯いた




「その事なんだが……」

「まさか…!?」




彼の様子から想像できるのは………私だけが生き残った………!?

そんな!あの時、術で守っていたのに!

けど、私は途中で気を失ったから、それで術が消えてしまったんじゃ……?


最悪のシナリオを想像して、情けないながら泣き喚きそうになった




「社長達を守れなかった…!?」




もう、はっきり答えを聞こうとしたけど、リドウは答えてくれない




「お願いです!教えて下さい!私は…」




勢いで上半身を起き上がらせて、リドウの腹部分のスーツに掴み掛かると

リドウは私の掴む手を解いて、私の目線に合わせるように屈んで……優しく私を抱き締めた




「お前は何も悪くない」




それって、やっぱり…!

私は泣きそうになったから、リドウの肩に顔を埋めて彼の背中に腕を回して抱き返した




「リルが生きてくれてて、本当に安心した」

「リドウさん!その気持ちは嬉しいけど私、社長達を……!」




そう言い掛けた時、医務室のドアがまた開いた


そこに来たのは





「おっと、すまないな。奇跡の生還で感動の再会中を邪魔してしまって」





なんと、そこにいたのはビズリー社長とヴェルさんだった!




「うぇへぇっ!?」




自分で言うのもアレだけど、私は今までに無い奇声に似た拍子抜けした声をあげて驚いてしまった




「えっ!?えっ!?ええっ!あの……なん…!」

「どうした?」

「あ、いや、その……皆さんご無事で良かったです」

「?、あぁ……君のお陰でな」




私がなんでテンパったのか、わからないビズリー社長はそんな様子を置いといて、私にお礼を言った




「ありがとう、君が頑張ってくれたお陰で私達は助かった。感謝しきれない」

「……はい」

「まだ、具合は悪いか?」

「はい。いくらか大丈夫です」

「そうか……でも3日も寝ていたんだ。無理はするな」




そう言ったビズリー社長とヴェルさんは、リドウと何かを話して何故か新聞を渡して医務室を出て行き、また私とリドウの2人になったところで……




「……ちょっと、リドウさん?」

「ん?なんだ?」

「社長達が無事なら早く言って下さいよ!私てっきり死んだかと……この嘘つき!」

「はぁ?俺がいつ社長達は死んだって言った?」

「いや、言ってなかったけど、雰囲気で…」

「それはお前が勝手に解釈したから、俺は悪くないだろ?」




うぐ……

たしかに、そうだけど……


あぁ!また得意そうに勝ち誇ったような表情してムカつく!

たしかに口では言ってないけど、あんな思わせ振りをされれば誰だって死んだって解釈するよ!


あ、今思えば……


社長とヴェルさんにリドウと抱き合ってるところを見られてしまった……!!

あぁー!自分はなんて事を!

公私混同しないために、社内ではあくまで上司と部下としているつもりだったのに……!


って、そうだ!社長が無事ならルドガー達は……?




「あ、あの………ルドガー達は?一緒にいた男2人と女の子1人に、猫1匹は無事?」




そう聞くと、リドウはまたちょっと深刻そうな表情をした




「あ!またその手には乗らないですよ!?」




きっとまた社長の時と同じく、本当は大丈夫なのに騙そうとしている!

フッ…同じ技は効かないわーー!!

さぁ、もう観念して本当の事を話せ!


って、今度は私が得意そうな顔をしたけど……




「彼らは……命に別状は無かったが大怪我をしていた。で、街中の病院に連れて行こうとしたら、込んでいてドヴォールに運んで俺が治療した」




っ!?、あれ?なんか具体的…




「え?それって……本当ですか?」

「あぁ」




そうだったのか……

みんな守ったつもりだったけど、あの人達が怪我を……


自分を責めて悔やみそうになったけど、みんな無事でリドウが治療してくれたって言うから安心しよう

って思ったけど、ある疑問が思い浮かんだ




「あの……ちなみに、ルドガー達に高額請求なんて……」

「した。2000万ガルドを。な」

「えぇっ!?何その、ぶっ倒れそうになる位の超高額!!」




嫌な予感って思って聞いたら、やっぱり………けど、なんて金額だ!

この世界でその額は死ぬまでに返せるかわからない位だと思う。彼の守銭奴なのはわかっていたけど、ここまでだなんて…

小さな女の子の治療代も含まれているなら、少しは安く出来ないか交渉しようとしたら




「って、言っても、みーんな社長からの命令だからな」




リドウは驚きの一言を言った




「え……?なんでですか?」




ビズリー社長の命令?

言い訳にしては、社長の命令なんて名義を使って……本人にバレたらどうするんだろ?

仮に事実だとしたら……なんでそうなるか、分からない……


そう思っていると、リドウはヴェルさんから渡された新聞を私にも読むように寄越した


そこには驚く内容が…!!


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