動揺隠せぬ監視者
「えっと……改めて、よろしくね」
静まり返った家の中で、私はまたみんなに挨拶をすると、ルドガーとジュードは私に聞いてきた
「なぁ…クランスピア社は一体何を…」
「え?」
「あなた達は何を企んでいるの?」
……ビズリー社長の言動の不信は払えないか
無理も無いね。けど……
「ごめん。私はエージェントでも位は高くないから、重要な事は教えてくれなかったんだ。私もあの列車の爆発の後しばらく気を失っていたみたいで、気づいたら何が何やら……」
「そうか…」
私の様子から本当に何も知らないって理解したルドガーは、俯いて沈黙した
確かに社長の真意はわからない。けど
「大丈夫だよ。私は信じている」
「え?何を?」
「ルドガーも勿論、ユリウスさんはテロに関係していないって。多分、社長には何か考えがあってやってると思うから…」
「あぁ…」
ルドガーは私の言葉に頷いてくれたけど、やっぱり事態を飲み込めていないよう
今はこれくらいしか言えないのが、私はすごく申し訳なかった
「とりあえず、ヘリオボーグとマクスバード。どっちから先に行く?」
ここで、ジュードの発言で少し前へ進めた
「そうだな…」
「あ、でも…」
「ん?」
ルドガーが何処に行こうか考えていた時、エルが不安気に話し掛ける
「お金……返さないと、先に行けないね」
「あ……」
「あぁー借金か……」
忘れてた〜って、また新たに浮上した問題に私達は頭を抱えた
「次に進むための返済額は?」
「10000ガルド」
「今ある額は?」
「今は…5600ガルドだ」
「なるほど…」
ここまでルドガーの金銭情報を聞いた私は、これはクエストをやってお金を稼ぐしかないか………と思った時、私はある事を思い出した
「あ、そうだ。私も手伝うよ!お金になりそうなの家にあるし」
「本当?」
「えっ!?そんなの悪いな……」
私の言葉を聞いたエルは、目を輝かせて期待して、ルドガーは驚いて人任せにするのは申し訳ない。と断ろうとした
「家にある物って言っても魔物から取れた素材だよ。それがいくつかいっぱいあるの」
「あぁ、それなら色々使えそうだね」
魔物から取れる素材はそのまま売ってもお金になるし、クエストにも役に立つのを知っていたジュードはルドガーに「リルにお願いしようよ」って促した
「なら……頼んでもいいか?」
「任せて!」
そんな感じに得意になってると、エルが嬉しそうに話しかけてきた
「おぉー!リル頼もしい!」
「そう?もっと褒めてもいいよ?」
「いよっ!流石、借金の先輩!」
「いや、借金の先輩って呼び名は余計だよ!」
「ハハハッ!」
エルの発言にツッコミを入れつつ、ようやく笑えるようになって、少し周りに漂っていた緊張がほぐれた
エルありがとう!君のおかげだよ
「じゃあ、一旦自宅に行くから、そこの公園で待ち合わせしよう」
「わかった」
私はそうしてルドガーの家から出て、急いで自宅に行った
―――――――――――
「お〜。あった、あった」
クローゼットの隅に置いていた段ボール箱を引っ張り出して開ける
かつて自分の借金や他に何かで役立てるために取って置いていた物だ
中には魔物の牙や羽根、珍しい植物等が入っている
その中から良いのを選んで持って行く
これさえあれば、少しは足しになるだろうって考えていると
床に置かれていたゲーム雑誌を見つけた
「(あれ?無くしたって思ったらこんな所に。でも、置いた記憶無いな…)」
そう、それは鞄に入っていたはずだったのに、いつの間にか無くなっていた物
なんで急に見つかったんだろうって思いながら何気なく、パラパラとページを捲って中身をざっと見る
その時
「あれっ!?」
思わず声に出してしまう程驚いた!何故なら…
エクシリア2の特集には、ルドガーとエルが大きく載っていたからだ!
そうか!列車でルドガーと初めて会った時、どこかで見たことあるような気がしたってのは……この事だ!
でも、まず一番先に驚くものがある
「ここ(このゲーム)の主人公ってルドガーだったんだ!!」
はい、私は本当に何も知識無いままトリップしたので、誰がこの物語の主人公か全くわからなかったです
驚きながら次のページを見ると
「あ、ビズリー社長やリドウ、ユリウスさん……更にはヴェルさんやノヴァまで新キャラとして紹介されてる!」
また更に驚いた!すみません。ずっとクランスピア社の人達はゲーム本編で目立たないモブキャラだと思ってました。本当にすみません
心で土下座をするように深々と謝る
にしても、これもっと早く探して見つけていたら、少しは楽に生活できたのではないか?って思っていると
今は使っていない元の世界から持ってきてた携帯にメールが来た
「あれ?そんなはずは……」
前にこっちから元の世界にいる友人や家族に連絡が取れないかチャレンジしたけど、全然出来なかったのに…
おかしい、と思いつつメールを開いてみると
「その雑誌は君が自力でこの世界を知るまで隠させてもらったよ。その調子で自分で見て考えて判断して―――」
って内容で、アドレスが出る欄には「???」って表示されていた
誰!?
なんでそれを知っているの…?
まさか、タチの悪すぎるストーカーが隠しカメラで盗撮!?
って、思ってどこかで見られていないか周りを見るけど、勿論普段と変わらない
まさか………霊から!?
こんな不可思議な事って言えばそれしかない!
急に寒気が走るような感覚に襲われて、もう家を出ようとした
私、霊について来られる様な事したっけ?こっちに来る時にも霊みたいな変なのに遭遇したし……
……ん?待てよ、もしかして
「あ、あの光る人型……?」
トリップする前に見たあの幽霊………というか、光る人型は夢と現実に現れて何か言ってたのを思い出した
メールを再び見て文章から、あの光る人型と同じような口調って気付いた…
私は一か八か、メールの送り主に返信した
“あなたは、私をここに連れてきた人ですか?どこにいるんですか?”と
しばらくして、メールに返事が来た
「そうだよ。けど、何処にいるかは言えない。今は新しい能力をあげるから頑張ってね」
その文を読み終えたと同時に、携帯の画面から光の玉みたいなのが出て、結晶をしている右腕に近づいて消えた
まるで、結晶に吸い込まれたように
「えっ!な、ななな何!?何が起きたの!?」
またメールして聞こうと、受信されたメールから返信しようとしたら
なんと、受信ボックスにはもう「???」の文字が無い!
「うそ!さっきまでメールしたのに…」
送信済みの履歴にもないから……夢?でも今の光はたしかにこの目で見た
結晶を握ると、少しだけ熱く感じる
「(私の選択が良い未来に繋がるように……か)」
たしか、最後の文にはそう書いてあった
私の選択…良い未来…
良い未来って…何だろう?
私にとっての良い未来は…元の世界に戻る事?
たしかにそれが最大の目的だったけど…
今はリドウと言う恋人がいる。元の世界に戻るとなれば彼と…永遠にさようならになる
そう考えると、元の世界に戻るのが自分にとっていい未来とは言えないって思った
じゃあ、リドウとこれから…幸せになる事?
でも、もしかしたら些細な事で喧嘩して別れるかもしれない。絶対にいい道とは言えない
ん〜〜〜〜………すごく悩むなぁ〜〜〜〜!!
………とりあえず、今はやるべき事をやろう
いずれ、色々していたら答えが見つかるだろうって考えて
素材を持って自宅を出た