路地裏の黒い影
「こわくないよー。こっちおいでー」
ルドガーの今決められている一定の額の借金を返済して、情報を元に“ユリウスについて執拗に聞いて回る人”を探す為、まずはマクスバードに来たんだけど……
マクスバードの端に積まれているコンテナの山の中。その隙間にいる猫に話しかけている人がいた
よく見ると、帽子を被って黄色いジャケットに短パンを着た女の子だった
「あ、あの〜……」
私は何をしているか話し掛けると
女の子はいきなり声を掛けられて驚いたのか、すぐに立ち上がって私達の方に向く
「あ!怪しい者じゃないですよ!」
不審に思われたと不安になったのか、顔を赤くしながら慌ててそう言った女の子を見て私は驚いた
「(レイアだ!)」
そう、この子はあのレイア・ロランド
前の動きやすそうで可愛い服もよかったけど、その服も似合っているなぁ〜
にしても、前作の最後では看護婦の見習いをやめて、自分の幸せを考えた事をするって言っていたけど…
「……何してるの、レイア?」
「ジュード!?」
私達の中にジュードがいたのを知って驚くレイア。ジュードの知り合いだってわかったエルは「猫と遊んでるの?」ってレイアに聞いた
「じゃなくて、事情があってあの子を捕まえなきゃならないの」
「レイア、新聞記者になったんじゃなかったっけ?」
「だから、事情があるんだってば!」
「(新聞記者!?すごい…)」
なんか難しそうな仕事をお転婆なレイアがしているってわかった私は、失礼ながら驚いて聞く
そうしている内に、ルルがその猫に近付いてまるで「おいで」って呼ぶように鳴くと、猫がコンテナの間から出てきた
「ルルに友達できた!」
ルルの声に応えてくれたのを見て、嬉しそうにするエル
そのタイミングで、すぐにレイアは猫を捕まえると…
「ユリウス、ゲットー!」
と、猫を高々と両手で抱き上げて言った
「え!?ユリウス!?」
聞き間違えたと思って、私はすぐに聞き直す
「そ。この子の名前。ユリウス・ニャンスタンティン三世」
聞き間違えじゃなかった……たしかにユリウスって言った
偶然なのかな?猫にユリウスって名前付けるなんて…
にしても…
「ユリウス…」
「にゃ…にゃんす…てぃんがー?」
ジュードと私は猫の名前が長くて、正確に言えなかった
「ニャンスタンティン三世!ずっと捜してたんだよ〜」
「ユリウスを捜す人物って、レイアだったのか……」
名前の正確さよりも、ジュードの言うとおりだと思った
つまりこの噂は“猫のユリウスを探すレイア”って事か
なんか……レイアは何も悪くないけど、私達はハズレを引いたみたいにガクリと肩を落とす
「助かったよ。ウチのスポンサー様の猫でさ……ところであなた達はジュードの友達?」
私達の様子は気にしないで、猫を捕まえられてホッとするレイアは、私達に視線を移した
「俺はルドガー・ウィル・クルスニク」
「エルはエル。あと、ルル」
「ナァ〜」
「私はリルです」
「よろしくね、私はレイア・ロランド」
紹介が終わった時にエルは「レイアは猫を捕まえる人?」って聞く
「いやいや、違うよエル。レイアは新聞記者って言ったでしょ?」
「そう!真実を追求する誇りある仕事なんだから!」
私のフォローの後にレイアはそう自信満々に新聞記者について話すと、そうならば列車テロやユリウス室長について調べているのではないか?って思い聞いてみる
「ね、なにか列車テロの情報入ってない?」
「あの事件は謎だらけだよね。クランスピア社のエリート、ユリウス・ウィル・クルスニクが指名手配されて…」
ジュードの質問に答えていたレイアがユリウス室長の名前を出したと思ったら、何故か途中で言うのを止めて、何か考えだした
「ユリウス…クルスニク!?」
ここでようやくルドガーが、指名手配されているユリウス室長の身内だってわかって、かなり驚いてた
「また面倒に巻き込まれている?」
その言葉にジュードは頷くと、レイアはがくーと下を向いて「も〜ジュードのお人好しが…」ってうなだれる
ルドガーはやはり容疑がかかっている人間の身内だから、このまま皆を巻き込んでいいのか?と考えるように俯いた
それに気づいたジュードは「でもルドガーは――」とレイアにルドガーの事を説明して、せめて彼だけでも誤解されないように弁解しようとしたら
「分かってる。ジュードの友達だもんね……行こ!」
「行くって…どこに?」
「ドヴォール。腕利きの情報屋を知っているの。私の顔でつなぎつけてあげる」
彼女はうなだれている間に考えていたらしい
ジュードと幼馴染だけあって、自分の信頼している人と一緒に居るルドガーに対して誤解しなかったレイアはそう言ってウインクする
エルは「レイア、頼もしー!」って言うと、レイアは照れたように笑って出発しようとした……けど、その時私は気づいた
「ねぇ、レイア。さっきの猫は?」
「しまった!!逃げられたー!」
そう、話に夢中になってたから今気づいたけど……さっきまでいた猫がいなくなっていた!
慌てて周りを探すと…
駅の入り口周辺に猫に話しかける人がいた
「ふむふむ、束縛される生活に嫌気がさし、自由を求めて旅に出たと…気持ちはわかるが、浮世の風は冷たいぞ」
そこには見覚えのある後ろ姿に、さっきの猫がいて何やら会話が成立していた
その人物は…
「あれ?イバル…?」
「なんとか三世としゃべってる!」
「うわっ!そのコ捕まえて!」
猫を見つけた途端、慌ててイバルに大声で言うレイア
その突然の声に「え!?」っと驚いたイバルは、持っていた長い物を落としてしまい、猫は目の前に落ちた長い物に驚いて逃げてしまった
「あ〜あ……」
「……見たかルドガー!猫もまっしぐらに逃げだす新装備だ!ありがたく受け取るがいい」
「あぁ…」
猫に逃げられたのを誤魔化すイバルはそう言ってルドガーに長い物を渡す
それはハンマーだった
「くっ、使い方はわかっているんだろうな!」
イマイチな表情をしているルドガーにイバルは剣を構えて
「来い!練習として、俺が相手になる!」
と、挑発的に練習してやる!と言い出したが…
「こうか?――ハッ!」
「ぐわっ!?」
斬りかかろうとしたイバルに、ルドガーは思いっきり横からハンマーで殴った!
うわっ容赦ない…!
「それとも、こう振るのか!?」
「ぐっ!…そ、それでいい…だから…!」
「もっとか!?」
「グハッ!!」
ルドガーは更に下から持ち上げるようにアッパーしたり、上から勢い良く振り落としてイバルをノックアウトさせた
「ルドガーの圧勝ー!」
「あはは…」
エルは拍手してルドガーの勝利を喜んだが、私とジュードとレイアは苦笑してイバルを見る
イバルはふらふらしながら立つとルドガーに一言
「き、基本はわかったようだが、ひとつ言っておく……街中で遠慮なく振り回すな!」
そう言われたルドガーはまるで“してやったぜ”みたいな憎たらしい笑いをしていた
あ〜あ、イバルお疲れ。相手が悪かったねと思っていると
「それと……リルさんにはこれを…」
イバルは私にも武器を渡してきた。それは…
「短剣?」
渡されたのは、綺麗な装飾品のついた果物ナイフと同じくらいの大きさの短剣だった
「社長から、リルさんの今持っている武器は一発で仕留められないから短剣を。と……」
なるほど…時歪の因子や魔物じゃない相手になった時に鞭で長期戦はキツいな
たしかに短剣は使えるって思ったけど…
「えー!ルドガーみたいにかっこよくて、ドカッ!と一撃がデカいハンマーがいい〜〜!!」
「いや、そんなの俺に言われましても…」
「じゃあ、バズーカがいい!!」
「はぁ!?いや、だから……」
「仕方ないなぁ〜じゃあ短剣受け取るから、この戦い方の練習もイバル!よろしく!」
「えっ!?あ、いや、ちょっ、待っ……うわっ!!」
私はわざとイバルの体に当たるか当たらないかの、すれすれな所に短剣を軽く突き出す
「だから、待って下さいって!」
「あははっ!ごめんごめん…」
久しぶりにイバルと話が出来たって思うと嬉しくて、思わずふざけてしまったけど、ルドガーにやられたダメージから考えて可哀想だから「冗談だよ」って言ってやめようとしたら…
いきなり短剣を持っていた右手首を掴まれた!
「痛っ…!?」
ルドガーかジュードに止められたか?って思って振り向くと…
「何してんだよ」
なんと、そこにいたのは、リドウだった!