無知なる者を誘う




地下訓練場に着くと、ビズリー社長が待っていて

社長は「時間が無いから実戦で覚えてもらう」って言って、私の時と同じく四足歩行の炎のような獣型の魔物を4体放ってきた

大丈夫かな…?って心配で見たけど


ルドガーは骸殻に変身して、槍で次々とあっさり倒した!


…あぅ、自分の時と比べてしまう

流石、戦闘経験のある人は違うなぁ〜

って、関心していたけど、立て続けに骸殻で練習用の魔物を倒した疲れで、ルドガーは「はぁ…はぁ…」って息を整えていた




「ル、ルドガーが変なのに…!」

「大丈夫だよ。あれは鎧みたいなのを着ているだけだから、ルドガーには変わりないよ」




私の隣で、まだ見慣れないルドガーの骸殻姿に少し怖がっているエルに説明していると、練習は終わったみたい




「こんなところだろう…ユリウスに比べれば、まだまだか」




って、最後はボソッと小声のように言ったけど、聞いてしまった

仕方ないじゃないですか!戦闘経験はあっても骸殻になるのはまだ慣れてないと思いますし…

なんて、自分が初めて戦いの練習した時を思い出して、ルドガーにその頃の自分の姿を重ねて彼の代わりにそう思ってしまった




「今のが骸殻……」

「なんでルドガーに、こんな力が?」




レイアとアルヴィンの疑問に社長は答える




「ルドガーがクルスニクの末裔だからだ……その時計」




ルドガーの持っていた金の懐中時計を指差しながら、続ける




「クルスニク一族に代々伝えられる“それ”が変身の鍵となる。今まで、お前の時計はユリウスが使っていたようだがな…」

「兄さん…」




ユリウスさんが何故それを…

ルドガーに骸殻を使われるのが、不都合なのかな?

けど、不都合なる事情って言ったら……やっぱりオリジンの審判絡みになるよね

そう、ユリウスさんについて考えていると、横にいたエルは「ルドガーのじゃなくて、パパのだし…」って不満そうに呟いた

ああ、そう言えば1つになってしまったもんね

結局あれは一体何だったんだろう?まだ会社でもその謎を解明できてないのかな?


色々考えながら、私はエルとルルと下に下りていって、ルドガーの近くに行って話を聞いた




「クルスニクって、意志の槍を持つ創世の賢者ですよね?」

「賢者クルスニク……リーゼ・マクシアでは、そう伝わっているらしいな」

「エレンピオスでは違うんですか?」

「賢者じゃないなら何?」




ジュードとレイアの疑問を聞いた私も、前作ではクルスニクって言ったら賢者って聞いていたから、前に社長にクルスニクは本当に賢者なのか?って聞いた事がある


そして、その答えは…今、ルドガー達の前でまた聞くことになった





「精霊どもの玩具」





まるで精霊に憎しみをぶつけるような気持ちが込められた瞳でビズリー社長はきっぱり言う




「骸殻は、その一族に与えられた――いや、かけられた呪いだ。同時に、人間に残された武器でもある」




そう言いながら、ルドガーの横に立つと




「お前なら使いこなせるはずだ」

「……」

「新たな分史世界が探知され次第連絡をいれる。それまでは休むがいい」




って、ルドガーに期待しているぞって言うように言い残すと




「リル、少し話があるから、社長室にまた来てもらいたい」




そうビズリー社長は、私に言って地下訓練場から出て行った

なんだろう?私何かしたっけ?

少し不安になりながら、皆と別れて私も後を追うように社長室に戻る















社長室にまた行くと、ビズリー社長は机の中から何かを取り出した




「すまない。これを渡すのを忘れていた」




そう言って渡してきたのは…


全体が白金で、秒針部分が深い青色の懐中時計だった

まるで、ルドガー達の持っているクルスニク一族の必需品みたいで…




「綺麗です…これを私に?」

「ああ…けど、それはただのプレゼントではない」

「?」

「オリジンの結晶は、内密にしてもらいたいからな」




オリジンの結晶はルドガー達に話してはいけない?

もう、分史世界も話すなって言っておきながら……

あ、いや、でも分史世界は“まだ話すな”だったから、いつか話すつもりだったんだなって今わかったけど…

やっぱオリジンの結晶は、本当に極秘中の極秘なんだな

で、この懐中時計って…




「もしかして、ルドガー達から私はどうやって分史世界に入ったり出来るの?って聞かれた時のために?」

「その通りだ。その時計を使っていると言ってくれ」

「わかりました…あの」

「心配するな。故郷に帰れるよう、私も手を尽くすつもりだ」

「はぁ…」




何か引っかかっているような気がしたけど、とりあえず社長の言葉に頷いた

この結晶は誰にも…


そう思ってリストバンドをずらして、オリジンの結晶を見る


……あれ?このくらいの大きさだっけ?

しばらく見ていないから、忘れているだけかもしれないけど

なんか前に見たときより、小さくなっているような…




「どうした?」

「あ、いえ…何も」

「では、これでルドガーを監視する仕事は無くなったが、引き続きルドガーやリドウと協力してユリウスの捜索を頼む」

「…はい」




いつまでも社長室に長居しているわけにはいかない

私は再度ビズリー社長にお礼を言って、社長室から出て行った



















1階ホールに行くと、ルドガー達はいた


どうやら、お言葉に甘えて一旦帰宅して休もうとしたら

ノヴァから借金の返済催促コールがきたみたい


……ちなみに、私はマクスバードに行く前の返済で、ルドガーの取立て人がノヴァだと知って驚いた

同じくルドガーと一緒にいた私に、ノヴァが驚いて「借金コンビ結成!」なんて笑われたっけ

全く、失礼だよね!

私もルドガーも、好きで借金作ったわけじゃないのに…

って、少しノヴァの言葉にムッとしたけど

こちらの状況がわからない上に、これがノヴァの仕事なら仕方ないな…


なんか一気にまた疲れがどっと出たように、ルドガーはため息をつくと




「休んでいる暇ないかもねって話していたんだ…」




って、エルに言われ、今ある返済ノルマをどうしようか考えたらしい…

それなら




「また手伝うから大丈夫だよ。次はクエストとかもさ…」

「ああ、悪いな」

「気にしないで」




とりあえず、またトリグラフに戻ってきたから、私はクラン社での仕事をしながらルドガーの借金返済を手伝う事にした


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