火花は抑えて
「えっと、後は綺麗な羽を納品すればいいんだよね?」
翌日、ルドガーの借金返済のために彼らとクエストを受けていた
難しくなさそうな魔物の討伐とか、素材の納品を中心に
「そろそろお昼だし、休憩しない?」
「そうですね」
「賛成〜」
ジュードの提案に、ローエンとアルヴィンをはじめ、皆が賛成する
そう言えば……今日あちこち歩き回ったな。今更ながら疲れが出てきて、腹が鳴りそうだった
「じゃあ、俺の家で食べるか?」
「いいね!ルドガーの料理食べたい!」
エルとジュードから「ルドガーの料理はプロの料理人並みにかなり上手い!」とノヴァと同じ事を言っていたから、これは本物の実力……!!
私は是非食べてみたいと思っていたから、良いタイミングだ!
今からすごく楽しみにしながら、皆とルドガーの家に向かう
その時――――
曲がり角の所で、誰かとぶつかってしまい
私の身体に衝撃と熱いものがかかった!
「熱っ!?」
「あ、すみません!」
慌てて熱くなった左腕を見ると…
白いYシャツに茶色の大きな染みが、広がっている
染みの濃さと香りから考えるとコーヒーだ
そう思い、ぶつかった相手にもコーヒーがかかって無いか見ようと顔を上げたら
もう、その場にはそれらしき人は居なかった
「あ、ちょっと…!」
「女の人、行っちゃった」
レイアとエルは、遠くの方を見てそう言う
私は突然の事で気が動転してて相手を見ていなかったけど、皆は見ていたらしい
どんな人だったか聞くと、紙コップを持った髪の短い女性だとか…
「大丈夫か?火傷はしていないか?」
「火傷?」
今はコーヒーは冷たくなっているけど、腕がじんじん痛痒いような……そう思ってYシャツの袖を捲って見ると、腕が少し赤くなっていた
「い、痛そう〜!」
「見せてください」
ティポが心配そうに覗き込み、エリーゼが回復術を唱えると、痛痒いのと腕の赤みが無くなった
「ありがとう、エリーゼ!」
お礼を言うと、エリーゼは照れながら「治るのが早くて良かったです」って私の回復を喜んだ
「腕は回復しましたが、せっかくのお召し物が台無しですね……」
ローエンは自分のハンカチで、私の汚れたYシャツの左腕を拭きながらそう言った
「あ、ローエン大丈夫だよ!ここはトリグラフだし、家に行って洗濯して別のを着てくるから!」
「大丈夫なの?ちゃんとルドガーの家に来れる?」
「うん、なるべく急ぐから大丈夫よ!」
エルに心配されたけど、何とか間に合うようにすると言うと「わかった。けど俺も食材買ったり調理もあって時間がかかるから、慌てずに来いよ」ってルドガーから言われ了解した私は、走らず早足で自宅に向かった
「よかったー!早めだから染みが綺麗に落ちた!」
最初に染み抜き専用洗剤で手洗いして後は洗濯機にお任せしたら、コーヒーで汚れた所は真っ白になった
それを干して、クローゼットから別のYシャツを取り出して着る
よし、これで大丈夫だ!ルドガーの家に行こう!
自分の住んでいるマンションから数分歩いた先道を左に曲がると、チャージブル大通りに出る
ここから公園を目指せば早く着くだろう。そう考えて歩いていると
クラン社前の街灯近くで見たことある人がいる
昼だけど、ここは結構人がいるから今更ながら気にならないはず…
何が気になるんだろう?そう思っていたら、その人に近くなった時に気づいた
あの顔は……あぁ、いつぞやに見たリドウのファンの女だ
関わると面倒だ。さっさと行こうと通りすぎようとしたら…
「…にしても、運が良かったわね。あいつ白い服を着てて」
…白い服で運が良い?
通りすぎようとした足を止めて、リドウのファンの女の方を見ると、もう1人女性がいるのを見つけた
あの女性の服の色…
そう言えば、数分前に曲がり角でぶつかった人と同じような…
「危なく私自身にもコーヒーかかりそうになったけど、上手くいったわ!」
あ、はい。確信しました。私にぶつかって来たのはこの人ですね
皆が見たっていう短い髪だし。にしても…
「(あの口振り様じゃあ……わざとだな)」
上手くいったとか言ってる上に、リドウのファンの女と笑いながら話しているからね
つまり、あのコーヒー女もリドウのファンで、私に嫌がらせするために2人で企てた計画だったんだって事か!!
また怒りで膓が煮えくり返りそうになったけど、今度こそエージェントとして一般人とトラブルを起こしてはいけない
ぐっっっと我慢して、その場からすぐに立ち去ろうとした時
「あら、また気に入らない女に嫌がらせ?相変わらず暇で陰湿ね」
そこに来たのは、また別の女性2人組みだった