別世界の精霊の主
目が覚めて布団の中で少し動くと、全身の筋肉痛のような鈍い痛みとダルさを感じた
あれ?よく寝たような気がするのに
掛け布団に顔を埋めるように繰るんだ時、ある事に気づく
これ………いつもの布団じゃない!
驚いて飛び起きて周りを見て、一瞬何があったのか混乱した
落ち着いて整理て思い出してみよう!たしか…
「(ここは………リドウの家!)」
昨日色々仕事をして、無理に連れてこられて晩御飯を食べてお風呂に入って…それから…
………………
「(あ、あたしは……遂にやってしまったのかーーーー!!?)」
頭を抱えながらお風呂入った後に起こった事を思い出して1人赤面した
いや、赤面を超えて顔面から火を吹く……いや、顔面がファイアーボール化しそう!
風呂での失態からこんな事になるなんて……
あ!リドウは?
そう言えば事の発端である、あの狼野郎はどこに行ったのか……ベッドの隣を見ると
そこには誰もいなく、部屋中どこを見ても気配が無い
え………?
なんか嫌な方に想像しそうになりながら、リビングへ行くと、テーブルに朝食と鍵とメモが置いてあった
メモを取ってみると“急に仕事が入ったから先に行く。食い終わった後の食器はそのままでいいから遅れるなよ?あと鍵はしていけ”って書いている
そうだったのか…
嫌な予感が外れて安心したけど、なんか……あんな事をした翌日は2人で朝を迎えたかったなぁ〜なんて
恋人同士なのに、悲しくなる……いや、昨日はたしかに抵抗したけど、急すぎて心の準備と緊張とで万全じゃなかったから、そんなに嫌ってわけじゃなかった…ような…
あぁ!いけない!また思い出してしまった!
一旦熱くなった心を落ち着かせて冷静になる
まぁ、何であれ社会人として恋人として上司である彼の仕事をわかっているから、あんまりわがままは言えない
今はこんな風でも…
「(いつか………ね)」
淡い思いを抱いていたら、GHSが鳴っているのに気づく
もしかしてリドウ?そう期待して出ると、ヴェルさんからだった
「ヴェルです。おはようございます」
「あ、おはようございます…」
期待はずれって言えばヴェルさんに失礼だけど、リドウかな?って思っていた心を打ち砕く淡々とした口調を聞くと、自分はなんて子供みたいな甘い考えをしていたんだろうってため息が止まらなくなりそうだった
「早朝から失礼いたします。実は昨日、ルドガー様達にも分史世界の破壊を依頼したのですが、どうやら何者かの妨害のせいでまだ帰還していません」
「妨害?」
「別の場所に飛ばされた。もしくは別空間に飛ばされたのかもしれません」
「そんな……ルドガー達は大丈夫なの!?」
「そこでリル副室長にルドガー様が飛ばされた座標へ行って加勢してもらいたいのですが……」
「安否はわからないんですか。それでも私が行けば…………ん?」
ルドガー達の心配で聞き流してしまうところだったけど、私は聞きなれない呼ばれ方に気付く
「あの、ヴェルさん…もう一回私を呼んでみてください」
「はい?どうかされましたかリル副室長?」
「ふ……副室長!?副室長って…」
「ええ、貴女は分史対策室副室長に昇格されましたから、そう呼びましたけど…」
「は、初耳ですよ!?」
なにそれ!昇格とかって、よくドラマでは上司や部下が見ている中発表されて、おめでとうございます!ってなって…
朝からまた急展開すぎるヴェルさんの発言で上手く言えないけど、とにかく本人知らないところでこうして電話伝えに聞くものではない。しかもヴェルさんの話しぶりだと、もう私が副室長になって数時間経っている様な様子
…まさか、ヴェルさんは真面目に話しておきながら冗談を言っているのかな?
それとも、会社ぐるみのドッキリ?
色々考えながら私はなんで副室長になったのか聞いてみると…
「リドウ様の室長昇格の時に副室長をどうするか?となった時にリドウ室長の推薦でリル様が選ばれました」
「リドウさんの推薦で私を?」
リドウが元々の副室長だったから室長昇格は当たり前だけど、私が副室長?
そんな、おいおい私よりもっと戦闘能力ある人や経験者いるだろ〜?
……もしかして、リドウは自分のそばに私を置きたいって思ったのかな?また甘い考えが浮かんだけど次のヴェルさんの言葉で気持ちが変わった
「…もしかしてご存知なかったのですか?」
「はい、今ここで初めて聞きました……あはは」
「もう4日前に決まった事でしたが…リドウ室長からは何も聞いていませんでしたか?」
「え?4日前に…決まった…!?」
4日前と言ったら……私はルドガー達と共にルドガーの借金返済の手伝いをしていた時で、リドウとは会っていなかったけど……
「(一昨日から昨日まで一緒にいたのに、話さなかったって事は……いきなり副室長になって戸惑っている私を見るために隠していたなぁ〜〜!!)」
何で教えてくれなかったのか理由を考えたら、そんな答えにたどり着く
確信はないけど、あの男ならやりかねないって思える。そう思うとなんだかあのムカつく顔を思い出してふつふつと怒りが込み上げてきた
あいつは何を考えているんだ…!
「そう…ですか、じゃあそのリドウさんは今クランスピア社にいるのですか?」
「はい、ですが只今医療の方で急患の手術を行っていらっしゃいますので、しばらく外には出られないかと」
「はぁ…」
たしかに朝早くに出て行ったけど急患か…
医療としてはご立派ですけど、その頑張りの中に私に副室長昇格を伝える気力は含まれていたんじゃないか?って思ったけど、やり場の無い怒りのためこれ以上大きくすると、頭の血管が切れそうになるから冷静になろうって深呼吸した
「あの…大丈夫ですか?」
「ふぅーー……はい、なんとか」
「それでは、座標を送信いたしますのでよろしくお願いします」
そう言って電話を切ると、メールで座標が送られてきた
それを確認して準備しようとしたら、テーブルの朝ごはんに目が留まる
一瞬、食べないでそのままにしてやろうって思ったけど、食材が勿体無いとか後でくどくど言われそう……って言うより、私に作ってくれた優しさは嘘ではないよな
なんかこの朝食で機嫌を取られているんじゃないか?って思うと少し悔しくなったけど、スクランブルエッグとトーストを食べてぬるくなったスープを飲んでみると
「ぬぅ……美味しい」
朝からこんなに美味しくてちゃんとしたのを食べるのは久しぶりだなって喜びが先に出てしまい、結局はメモの通りにして家を出た