別世界の精霊の主
「―――様……私は、見事役目を果たしました。どうか精霊界への帰還をお許しください……」
霊山の頂上に着くと、ミュゼは一番高いところの崖っぷちにいて空に向かって何か言っている
「……姉さんは、ああして毎晩誰かに語りかけているの」
「誰か?」
「ミラ達のパパかも?」
「わからない。絶対に教えてくれないから」
ミラ達の親ならそれも精霊、つまり精霊界にいるからミュゼはああして空に向かって話しかけるんだと思ったエル。そもそも精霊に親がいるって言う考えは子供らしい考えだけど、間違っていないかも
ミラとミュゼは眼鏡をかけた爺さんマクスウェルから創られた大精霊だから、関係性は人間で言う親子って言っても良いような気がする
実際、前作でミュゼが空に向かって話しかけるのは、あのマクスウェルと話すためだからこの世界でも同じだと考えられる
「私が隙をつくる。長くはもたないわよ」
ミラはそう言ってミュゼに近づき、恐る恐る話しかけた
「姉さん……」
「っ!…社から先には来るなと言ったはずよ!」
ミラの声を聞いたミュゼはミラの方を向いて、そう怒りながら厳しく言う
「でも、気になって。姉さんが何をしてるのか……」
「関係ない!」
「なんで?昔は、なんでも話してくれたのに!?」
「お前なんかに話すことはない!とっとと帰りなさい!」
ミラが上手く出来るか岩陰に隠れて見ていて、ようやくミラに対するミュゼの言動がわかった
「ひどい…これがこの世界のミュゼだなんて…」
「ミラかわいそうだよね…」
はじめて見た時には気付かなかったけど、こんなにも八つ当たりに近いような怒りをぶつけるなんて…
エルと小声で話していると、突き放されたミラは拳を握り締め、悲しみを交えた怒りの目でミュゼを睨む
そして
「どうしてよ……どうして姉さんはっ!」
自分の気持ちをわかってくれないミュゼに怒りを爆発させ、すぐにミラは火の精霊術を放った!
精霊術は見事に直撃して、大きな炎はミュゼを覆う
「今よ、ルドガー!」
ミラの合図を聞いてルドガーを先頭に私達はミュゼに攻撃をしようとした
しかし、
覆っていた炎はミュゼがすぐに振り払ってしまい、私達が攻撃する前に気付かれてしまった!
「お前……私を裏切ったなっ!」
ミュゼはミラに人間を立ち入らせた事を裏切りだと怒りを最大に込めた言葉を吐くと、開かないはずの目が開いて赤い光を放ち、肌は黒く禍々しいオーラを放つ!
時歪の因子と化したその姿に、ミラは驚いて後退りをしながら声にならない短い悲鳴を上げる
「姉さん、本当に……化物!」
「もう一度言ってみろ、人間が!」
こんな事になるなんて…!突然の変貌した姿を見て恐怖しているミラに、ミュゼは仕返しと言わんばかりに精霊術をミラに向かって放つ!
怯んでしまったミラは、その場から動くことが出来ずに頭を伏せた
その時、エルがミラを助けようと走り出し、それを見てユリウスさんが止めようとしたけど左腕を押さえてその場にうずくまった
まずい!あのままだと、ミラとエルが殺されてしまう!
私は遠くに離れているミラとエルに届くように、急いでバリアーを唱える
そして…ミラ達が光に包まれたと同時に、ミュゼの精霊術が当り爆発した!
間に合ったか…!?一瞬嫌な事を想像しちゃったけど爆発の煙が消えると、そこにはミラとエルがちゃんといて私の力で守る事が出来た!って安心する
「大丈夫…!?」
「あなた…それは…!」
「それは…無の精霊術!?」
ミラは遠くから私の力……オリジンの結晶を使った力に驚いているとミュゼも驚き、すぐに私やルドガー達の後ろに瞬間移動をして髪で私達を吹っ飛ばす
「うわっ!」
ミュゼはそのまま皆に攻撃するかと思ったら、私の方を向いていきなり胸ぐらを掴んで揺さ振ってきた!
「お前は何者なの!?なぜ無の精霊術が使えるの!?」
「うっ………ぐ………それは………」
言おうとしたけど、ルドガー達やユリウスさんにはこの結晶は秘密だったから言えない
「まさか…オリジン!?」
「えっ……!!」
「お前がオリジンなら、私を精霊界に帰しなさいよ!」
「…?」
「早くマクスウェル様の元に帰りたいのよ!こんな汚ならしい人間界にいたくない!!」
この言葉でやっぱりミュゼは爺さんマクスウェルに話しかけていたかって確信した
けど、力を使ったのは迂闊だった…
オリジンの力って言われてドキッとしたけど、何やら勘違いっぽい事を言っているからこれは誤魔化せるなって思ったのと同時に、まさかミュゼが私をオリジンと間違えるなんて考えていなかったからミラを助ける事に集中していて自分の防御を甘くしてしまった事に後悔していた
うぅ……そう言えば、最近首を掴まれたり胸ぐらを掴まれたりしているな
リドウと比べれば確実にこのミュゼの方が怖いし、精霊の力だからすごく苦しい!
けど今はとりあえず、ミュゼは私をオリジンだと思っていて精霊界へ帰るための方法を探っているから、殺そうとはしないのが救い
でも、早く離れないと流石にヤバい…!
「リル!」
「やめて!!リルはただの人間だよ!」
「うるさい!人間共め!!」
その時、エルの心配する声が聞こえたと同時にレイアが私からミュゼを離そうと間に入ってくる!
びくともしないミュゼは邪魔だと言わんばかりに回転して髪でレイアを叩き払い攻撃し続けようとしたが、アルヴィンとルドガーがすぐに横から斬りかかったからミュゼはその場から瞬間移動して離れたためレイアは起き上がってサポートに回る事が出来た
今のうちに私も体制を立て直さないと!
「死ね!消え去れ!!」
大精霊って言えば前にヴォルトと戦った事を思い出す。ヴォルトも物理攻撃はあまり効かなかったけど精霊術を交えた攻撃は効いた。その時と同じようにやりたかったけど、素早く瞬間移動ができるミュゼにはなかなか当たらない
「まずい!精霊術が当たらないなんて……」
試しに色々唱えても、今私に出来る術は直線な動きしか出来ないからミュゼに軽々とかわされる
「ガードを崩しても瞬間移動されると意味が無いな…!」
「くっ…!」
「うわあああ!」
「ルドガー!レイア!」
アルヴィンがガードを壊そうと特殊攻撃をしてもすぐに瞬間移動され、後ろにいたレイアとルドガーがミュゼに攻撃されてしまった
「お前は絶対許さない!」
「やめて!姉さん!」
「メガネのおじさん離して!ミラが危ない!」
「駄目だ!殺される!」
またミラを攻撃しようとするミュゼ。それを見たエルが急いで助けに行こうとするが、ユリウスさんに止められている
どうしよう…なんとかミュゼに瞬間移動されずに攻撃できる方法は…
「新しい力をあげるよ…」
その時、いつしか見た謎のメッセージを思い出す
そして、時計……いや、その中に隠している結晶が光り出し体中に力が湧くような感覚になった
何だか元から使える精霊術に無の力が流れ込んでいるみたい
「(これは……もしかしたら、強力な精霊術が使えるかもしれない!)」
今までの詠唱に光が混ざるように想像して唱えると、2つの力が重なるように感じた
これで好きなように動かせたら…!そう思ってミュゼを見て
「ミュゼの動き……止まって!」
そう叫ぶと、ミュゼの下から氷が地面から生えるように上ってくるとミュゼのドレスに絡みつくように凍りついて、やがてその場から動けなくなった!
「なっ!?これは…!」
驚いているミュゼだけど、ここで火属性の精霊術を唱えられたら失敗する……
今しかない!ここで強力な一発を…!
「フリジットコフィン!!」
頭に浮かんだ術を言うと、氷の棺の様な板が左右に現れて押し潰すようにミュゼに襲いかかる!
「あああああああ!!!」
断末魔のような叫び声を上げるミュゼ
やがて、氷の板が崩れるとミュゼは地面に倒れた