海瀑に潜む魔物
ミラに料理教えてもらって、あれから少しは上達したかな?
そう思えた時に、仕事の方で私はある決心をした
「(ユリウスさんに…会いに行こう)」
ユリウスさんが捕まってから数日経っても彼の話が聞こえてこない事に気がつき、本当に尋問して白黒はっきりさせているのか?って疑問に思ったからリドウに聞いたけど「まぁ、それなりにしている」ってしか返事してくれない
これは……何か隠している?
ルドガーとの約束でもあるし個人的にも恩のある元上司だから、冤罪にしようとしているなら証拠をつかんで阻止しなくては!
なんて、意気込んで地下に行こうとしたけど……
「申し訳ございません、リル副室長。これより先はユリウス元室長を捕らえていますので、お入りになる事は出来ません」
「そんな…」
なんと、地下の牢がある所に来ると見張りのエージェントに止められてしまった
「なんで?私も関係者なのに?」
「ここから先はビズリー社長かリドウ室長しか許可されていません」
「副室長も入れてよー」
「すみません……今リドウ室長がお入りになられたので、戻ってきた時にご相談してみては…?」
「……そうします」
命令で見張りをしているとは言え、入れてくれないエージェントの前でちょっとだだっ子をすると困った様な顔をされ、そう言った
……うん。やめよう。これ以上やったらこのエージェントもっと困るだろうから
にしても、なんで室長以上までしか駄目なんだろう?
大人しく待っていようとしたその時、突然今いるフロア全体に警報音が鳴り響いた!
「なんだ!!?」
「ひっ……!?」
あまりに予想外だったから、思わず短い悲鳴をあげて驚いてしまう
そうこうしていると、見張りのエージェント達は牢の方へ走って行ってしまった
これは……緊急事態!?
ユリウスさんとリドウに何かあったのだろうか…?
見張りがいない入り口で、今は誰も私を止める者はいない
それに警報音を聞きつけて心配で来ましたって言えば納得してもらえるだろう
そう思って私も見張りと同じように奥の牢まで行った
長い通路を走って行くと、鉄格子が開けられている牢の前に倒れているリドウがいる!
「大丈夫ですか!?リドウ室長!」
「あのっ…リドウさ……!?」
倒れているって事はどこか怪我をしたんじゃないか!?って心配になって見張りと同様に近くに行ってリドウを起こして見ると…
「どう……したんですか?」
私は思わず唖然とした。何故ならリドウの目元が赤く腫れ上がっていたから
パッと見、何があったのか理解できなかったけど、よく見ると赤い腫れは……まるで足跡みたい
まさか…
「……見ればわかるだろ?ユリウスにやられた」
「ユリウスさんに?」
つまり、ユリウスさんに踏まれたって事か…
うわぁリドウには悪いけど、笑える…!その顔最高に面白い!
自分磨きに妥協しないリドウの顔に足跡があるなんて間抜けすぎる!痕が付く位って事はすごく痛そうだけど
リドウを見れば見るほど笑いが込み上げてきて堪えるのが大変だったが、リドウは私の様子に気付いて「なんだ?何か言いたいことでもあるのか?」って睨んできたから、すぐに平常心を保ってリドウに聞いた
「……えっと、そのユリウスさんは?」
「だから、見ればわかるだろ?」
「……え?」
「…察しの悪い奴だな!逃げたんだよ!」
「え……ええええええええ!!!??」
確かに牢は開けられていてリドウの顔にユリウスさんにやられた足跡があるから、これはユリウスさんが逃げたって事がわかる
やばい。ついリドウの顔ばかり見ててその事に気付かなかった。ああ、怒っているリドウの顔も足跡のせいでおかしい…!
って、それどころじゃなくて、ユリウスさんが逃げたって事は…何か企みがある?それか冤罪にされそうだったから逃げるしか選択はなかったのかな?
どっちにしろ、ここで逃げたらまた指名手配されて、次は逃亡罪も追加してしまう
ユリウスさんについて色々考えていると、イバルが走ってきて
「た、大変です!ユリウスが!道標を奪って………!!ぶふっっ!!!」
逃げたユリウスさんが上でカナンの道標を奪ってクラン社から逃亡したってのを教えに来たみたいだけど、顔面に足跡ついたリドウを見て吹き出して笑った
ああ、イバル……!私も我慢してたのにぃ……!!
つられて笑ってしまった私はイバルと2人仲良くリドウから拳骨を貰ってしまいました
――――――――――
ユリウスさん逃亡はルドガー達にも伝えて、協力して捜索する命が出された
そして、私はイラート海停でリドウとイバルと3人でルドガー達を待つ
ここ辺りで目撃情報が途絶えたみたいだけど、どこに行ったんだろう?
それよりも、さっき足跡見て笑って拳骨食らった私とイバル。そしてずっと不機嫌そうにしてでっかいサングラスをかけて足跡を隠しているリドウって……なんだか気まずすぎる!
ルドガー早く来ないかな?…そう思っていると、船の方からルドガー達が来たのが見えた
「やっと来たか」
私も思った事をリドウが言いながら、ルドガー達を見ると、その時
「ミラさ……お前も来たのか。紛らわしい!」
イバルがルドガー達と一緒にいたミラを見るなり、そんな事を言ってきた
「ちょっとイバル!紛らわしいも何も無いでしょ?そんな事言ったらニ・アケリアでのリドウさんの言葉を怒る権利はないよ!それに…」
「リル、いいわよ………全く、どいつもこいつも、巻き込んでおいておいて勝手なこと言うわね!」
先輩である私と別のミラである彼女が怒ると、さっきまでの威勢が消えてイバルは素直に謝る
「し、失礼しました……むぅ、ミラ様とは厳しさの質が違うな…」
「僕もそう思う」
「ミラ様は……戻ってないんだな?」
「……うん。ミュゼが捜しているらしいけど」
「そうか……」
ジュードとミラ=マクスウェルの行方について話している声がすると、ミラが悲しそうな不機嫌な様子で背を向ける
「ごめんね。イバルも悪気があったわけじゃないから」
「わかっているわ……それに気にしていないし」
本当は少し気にしている…そんな様子がわかるけど、それに関しては何も言わずに私はもう一度代わって謝る
そうしていると、エルが私に近づいて聞いてきた
「ねー、なんでリドウ、変なメガネしてるの?」
「変なメガネ?……あ、あれはね。足跡を隠しているの」
「足跡?なんで顔に付いてるの?」
そこにジュードと話し終わったイバルも、エルの質問に答える
「ユリウスに逃げられた時、踏んづけられたんだとさ」
「ぷぷっ!見てみたーい!」
「笑えるぞ」
「うん。吹き出してしまったよね!」
たしかにあれは酷いもので、思い出しただけでも笑える
こんな事なら、瞬時にカメラで写してエルにこっそり見せたかったなぁ
なんて、3人で笑っていると「捜索を始めるぞ!」って、リドウの怒りが含まれた声が聞こえてきた
「は、はいっ!」
「了解であります、室長!」
うわ〜…今話してたのが聞こえたかもな
これ以上不機嫌になって八つ当たりでもされたら、たまったもんじゃない
慌てて返事して、いつもより真面目にリドウの指示を聞く
「この付近で、奴の目撃情報が途切れた。手分けして探すんだ」
「僕たちは、街道の西を探してみよう」
「じゃあ、私たちは、ハ・ミルの方ですね」
「懐かしーなー!」
たしかに、ここから近い所はハ・ミルだ
前作で住んでいたエリーゼとティポは、なんだか嬉しそうな表情をしてウキウキしている
あそこは…パレンジとナップルの村だったよね。本場の甘いパレンジとか食べたいなぁって思っていたら、私に指示がきた
「リル、お前はルドガー君の方に同行しろ」
「ルドガーの方にですか?」
不機嫌なリドウから離れ、パレンジ村……じゃなかった。ハ・ミルに行けるって嬉しい特典だけど一応理由を聞く
「あぁ、ルドガー君とあの偽マクスウェルの見張りはお前に任せているよな」
「なっ!だから、ミラを偽者だなんて……」
どんな理由かと思ったら、たしかにそうだけどミラの事をまだそんな風に…
幸いミラやルドガー達には聞かれていなかったけど、私は八つ当たりされるのを覚悟してリドウに怒ると、彼は「あー悪かった、悪かった」って軽く流す
全く…そんな考えを全て変えろって言うのは無理だろうけど、せめて口には出さないで欲しい
「ユリウスは生かして捕らえろよ。借りは返さなきゃならないからな」
あ、今のリドウの怒りの矛先はユリウスさんですか
踏まれた側からだと、痛いのとか屈辱的だって思うのはわかるけど…相手がリドウだから、なんだか今までの因果応報っても思えてしまう
「(ユリウスさん……なんならリドウがパンダになるくらい、もっと踏んでもよかったんじゃないすかね?)」
逃げた事に対しては、何か隠しているかもなって疑ってしまうけど、リドウを踏んだのは「いいぞ、もっとやれ!」って応援したくなるな
…さーて、リドウが何か言わない内に、さっさと行きますか