揺れる心
「(さぁ…いるか!?)」
さっそく来た地下は正史世界と同じく薄暗く少し静かだ。私はいつも以上に前を警戒しながら地下のフロアを進む
いつ現れる…?
何が起こる…?
そう思いながら周りを見ていたけど
「(そう言えばリドウはどこに行ったんだろう?)」
さっきまで隣に一緒にいたリドウがいつの間にかいなくなっているのに気付く
自分の用事を済ませるためにここから単独行動にはいってくれたのなら、好都合だけど…
そう思いながら後ろを向くと
そこには、左手に持ったメスで私に斬りかかろうとするリドウの姿が!
「う、うわあああ!!」
驚いて悲鳴を上げつつも、間一髪脇に避けて攻撃を避ける事が出来た
「(ヤバい!これはまずい!!)」
何が何なのかわからないけど、これは冗談とか誤解とかそんな問題じゃないような気がしたから、急いで逃げようとエレベーターに戻ろうとする
しかしその時、メスがこっちに向かって数本飛んできて、気づいた時にはメスが私の服を巻き込んで壁に刺さっている
つまり、私は張り付け状態で逃げられない!
「やだ!なんで…!?」
メスが抜けないか必死に全身を動かしたけど、びくともしない
そうしている内にリドウが私の所に来て、下から上まで舐め回すように見ると私の顎を触りながら聞いてきた
「お前、何者なんだ?」
「何者って……」
この世界に私はいないだろうとは思っていたけど、この聞き方……
まさか、ここの正式な社員じゃないのがバレた?
そう思ってリドウになんとか誤魔化そうとした
「なんでお前は……俺の名前を知っているんだ?」
「え?」
けど、予想していなかった言葉を言われて頭が混乱する
知っているも何も…リドウはクランスピア社の有名エージェントだから知らない人間なんていないはず。そう思っていると更にリドウは続けて言った
「お前は…他の世界から来たエージェント」
「!!」
「その表情からだと正解みたいだな」
まずい、正史世界から来たのがバレた!でもなんで?
「なんでわかったかって?そりゃあ、俺の名前を知っていたのもあるが、他にもある」
「?」
「俺がこのクランスピア社の社長だ」
「あ、貴方が…!?」
まさか!この世界のリドウが私の探していた乗っ取り社長だったなんて…!
じゃあつまり、このリドウは名を語らないままビズリー社長たちを殺して現社長になったんだ
そう考えれば、私が誰も知らないリドウの名前を言って現社長に社長はどこにいますか?って聞けば誤魔化しようのない“正史世界の人間の証拠”を見せてしまった事になる
最悪だ……もっと慎重に様子を見てから行動すればよかった。こんな風に知らない間に敵に隙を見せてしまうなんて
なんて後悔してると、絶望的な表情であろう私を見て楽しそうに笑う彼は右手のグローブを触わった後に新たにメスを構え出す
「残念だったなお嬢さん。ただお疲れ様ですって言っていたら命拾いしていたのにな」
メスがじわじわ私の首に近づくのを見て恐怖で体が動かない
今日は同行者はいないから誰も助けに来ないけど、思わず助けて!って叫びそうになる
「(嫌だ!!)」
代わりに心の中でそう言うと急に全身に力が湧いてきて、さっきはびくともしなかった手足を動かして無理矢理壁に張り付けにされた状態から脱却できた
「!?」
リドウは信じられないって目で見て驚いたが、これは自分でも驚く
私はいつからこんな馬鹿力があったんだろう?って全身を見ると、メスで固定されていたのから無理矢理離れたため袖や裾のあちこちが破けてぼろぼろ……そして、右ポケットから光が見える
もしかして、結晶の力?
まだ消えない光を見て反撃が出来るんじゃないかって希望を持つ。いまだに何が起こっているのか様子を見ているリドウに私は急いで武器を構えた
「こ、来ないでください…!」
私は考えた。リドウが乗っ取り社長である事実は知ったけど時歪の因子の反応はない
てっきりそうだと思っていたけど時歪の因子じゃないなら、ここでリドウと戦う必要はない…と、言うより出来れば戦いたくないのが本音
私はリドウにこれ以上私に近づくとどうなるか保証はしない!と言わんばかりに睨んで、なんとか隙をついて逃げて時歪の因子を探そうとした
「面白いな……なら、俺も本気で行くぞ!」
そうリドウがニヤリと笑った瞬間
黒い光に包まれて全身が漆黒に染まる!
あれは…!!
「(時歪の因子!?私が近づいたけど反応がなかったはず……!)」
骸殻に変身するのかと思っていたから、予想外すぎてかなり驚いた
たしかに近い距離にいたはずなのになんで…?
いや、今は考えている暇はない。探していた時歪の因子を見つけたんだから逃げないで壊さないと!私は武器を握り直してリドウに立ち向かった