方舟守護者から突きつけられた真実
昨日はあのままリドウの家に来て一晩過ごした
そして翌朝、目を覚ますと珍しくリドウがいて一緒に朝食を食べて会社に行ったけど…
なんだか朝からドキドキしてしまい朝食が喉を通らなかった。でも身体の疲れは取れていたから何も問題はない。そう思いながら昨日の分史世界について資料を書いていると、GHSからメールの着信音が鳴る
確認するとノヴァから「緊急事態!今すぐディールに来てちょっと手伝って!!」とメッセージが来てあった
…緊急事態?なんの事だろうって思っていると、次にルドガーから電話がきた
出てみると、私のいない間に道標を見つけて3つになったって言う報告だ。たしかルドガーと会ってそれを確認しろって指示を受けていたから、今から皆と合流しようと話すとディールに行くからそこで会おうって言われた
……ん?
「あの……もしかしてノヴァから何か連絡きた?」
「えっ?ひょっとしてリルもか?」
ここで私達はお互いにノヴァから緊急事態の連絡を受け取っていたのに気付いて、よっぽど必死なんだなって苦笑いしながら嫌な予感をしつつ、ディールに向けて準備をした
――――――――――
ディールの駅で皆と待ち合わせをして街に行くと、中央にある噴水の所でノヴァが困っている様子で待っていた
「待ってたよ、ルドガー!リル!」
「何があったの?」
「それが……差し押さえの相手が、すっっっごい怖い人なんだよ〜!水が五秒でお湯になる勢いで睨んでくるしっ!」
面白い表現だなって言いたかったけど、彼女の必死さからこれは本当に怖い相手なんだろう。そう思いながら黙って聞いていると、私達に何を頼みたいのかがわかった
「もしかして手伝いって……その人から返済してくれるように一緒に説得してほしいって事?」
「ごめん、正解!今度だけ助けてっ!」
「それでも自分で取立てるのが仕事だろ?」
「いくら仕事だって、できることとできないことがあるよ!上司に空を飛べって言われたらルドガーは飛ぶの?」
取り立ての仕事を素人の自分たちが手伝っていいのか?な意味も含まれてると思うけど、ルドガーは今まで通り自分だけで出来ないのか?と聞くとノヴァは今までにない位の無茶振りをされてる事を必死に訴える
「そこまで開き直ると清々しいな」
「まぁまぁアルヴィン。怖い相手に女性一人って不利だと思うよ?」
「でしょ!?リルもそう思うよね!ああ〜やっぱり女子同士話がわかる〜!」
ノヴァの言い分を聞いて苦笑いするアルヴィンだけど、ノヴァの気持ちも分からなくはない
今にも泣きそうなノヴァが私の言葉を聞いて、わかってくれてありがとー!って言う勢いで私に抱きつく。大変だなぁ取り立て側も
ノヴァの背中を撫でていると、エルがディールの町並みを見回して何かを考えていた
「エル?」
「どうかされましたか?」
「ここ……パパと一緒にきた時ある気する」
「えっ、じゃあ…」
「エルさんの家が、この近くに?」
「わかんない……」
今まで色んな所を歩いて来たから、いつかエルの家を探してエルの父親の安否が確認できたら…って考えていたけど、何故かなかなか見つからないのが疑問だった
たしかにこのパーティでディールに来たのは初めてで、遂に手掛かりを見つけたかと思ったけど、もう一度よく見て確かめたエルは、今よりもっと幼い時に見た記憶のため「わからない…」と曖昧そうな様子
「お家の目印になるもの、覚えてないですか?」
「めずらしいお花が咲いてたとかー」
「えっと……エルの家の前には大っきい池がある。パパが魚を釣ってゴハンにしてくれるの!エルは、ヒメマスの押し寿司が好き!」
「うまそうだな、おい」
「(お、お腹空いてきた…)」
家の近くにあったものを思い出して楽しそうに話すエルには申し訳ないと思いつつ、今すごく寿司とか魚料理が食べたくなった
ただでさえ朝食をあまり食べてこなかったから、この街の魚料理の美味しそうな香りが空腹に近い私のお腹に刺激を与えているのに…!押し寿司の話をされるなんて……!
「ヒメマスがいるって、池じゃなくて湖じゃないの?」
「それ!ミズウミ!」
「ん?でも、エレンピオスに湖あったっけ?」
「この近くのウプサーラ湖は、何十年も前に干上がっちゃったはずだけど」
「じゃあ勘違いね」
「う…」
「そんなにバッサリ言わなくても」
空腹をぐっと堪えて話を聞くと、ヒメマスの生息地は池ではなく湖だと言い当てるミラ
でも、この地方にある湖はもうないらしい…
じゃあ…エルの故郷はどこにあるんだろう?
エルはルドガーとはエレンピオスのあの列車テロの時に出会ったのは私も知っているけど、まさかリーゼ・マクシア出身?
いや、エルはもっと幼い時からテレビアニメが好きって聞いてたからエレンピオス人か…そうなればエレンピオスに故郷がある事になるけど、ここには私達がまだ踏み入れていない秘境でもあるのかな?
そう思っていたら、ノヴァが何か思い出したらしく私達に話す
「思い出した!その湖の底ですっごい昔の遺跡がみつかったとか。黒匣とかと全然違う文化で世紀の大発見ー!ってニュースになってた」
「そんな遺跡が。詳しいことわかりますか?」
「さぁ?よく調べる前に崩れちゃったとかなんとか」
「そうですか……」
黒匣以外の技術と聞いて興味が湧いたジュードだったけど、遺跡が崩れてしまったなら掘り起こして見つけるのは数年先の話になるな…って考えていると、ルドガーのGHSが鳴る
「分史対策室です。道標存在確率“高”の分史世界を探知しました。捜索をお願いします」
ヴェルさんからの電話で話を聞こうとしたら、ルドガーの横からノヴァが割って入ってくる
「あ、やっぱりヴェルじゃん。はろー」
「ノヴァ、なんでそこに!?」
まさか私達の中にノヴァがいると思わなかったヴェルさんはすごく驚いて、私達がいる事を忘れて2人は話し出す
「ルドガーたちに、ちょっとお願いがあってさ。で、分史世界って何?」
「私の仕事よ。あなたには関係ない」
「相変わらず、愛想ないー。そんなだから、一カ月でフラれるのよ」
「ちょっ、ノヴァ!言っていいことと悪いことが――」
なんだか長い言い争いになりそうだと思ったルドガーは、すぐにGHSを切る
切って正解かもしれないけど、なんだか聞いてはいけない事を聞いてしまったから後々怖いな…って思いながら今直面した問題をどうしようか考えた
「分史……いや、ヴェルさんからも仕事きたけど、二手にわかれる?」
ノヴァも聞いてるから“分史世界での仕事”とは言わずに“ヴェルさんからの仕事”と言って、二手に分かれてそれぞれ仕事と手伝いをしようって提案になったけど、どうやって分けようか話し合う
「そうだな。ノヴァの手伝いならエリーゼあたりで十分だろ」
「あたりって」
「ちょー失礼ー!」
エリーゼとティポはアルヴィンに自分達の力量を軽く見られて怒っているみたいだけど…
「ん〜。ノヴァの差し押さえ相手がおっかない人なら女性よりは男性が手伝った方がいいんじゃない?」
「それもそうか」
「わかった」
ジュードとアルヴィンは私の言葉に頷く
「女性を脅すような輩には、軍隊仕込みの真の恐怖を教えてさしあげましょう」
「実は、俺もそういうの大得意」
「わわわ…」
ジュードは平和的にやってくれそうだけど、ローエンとアルヴィンのやる気からは嫌な予感しかしない
軍の指揮者と、いかにもそっち系が得意な人が揃ってしまうなんて…そのおっかない相手に「言う事聞いてさっさと逃げた方が身のためだ」って言ってしまいそうになる
「みんな、やさしー」
そんなローエンとアルヴィンに関しては知らないノヴァは手伝ってくれると聞いて本当に喜んでいる
「はぁ…付き合ってられないわ」
「ミラさんも、ルドガーたちのフォローをお願いします」
「…そっちのが、まだマシね」
「よし、行きますか!」
「はいはい」
なんだか今までの言動に呆れた様子で見ていたミラに、一緒に頑張ろうって行くように促すと「意気込みすぎて転ぶんじゃないわよ?」って笑いながらまるで子どもに注意するような事を私に言う
むぅ…私はミラとあまり年は変わらないのに〜
ちょっとそこに関しては納得いかなかったけど、とりあえず分史世界に行きますか!ってルドガーを中心に皆まとまろうとしたその時
「(ん?今何か…)」
足元に白い影が見えたと思ってそっちを見ると、街の端にいる真っ白な猫に向かって走っていくルルが見えた
「(ルルは友達のとこか)」
あの白い猫はルルの友達だろうと思った私はルルを呼び止める事なくそのまま行かせる
ルルはこの道中だけでなく最近は分史世界まで一緒に来てくれるから、たまには息抜きが必要だと思って
ノヴァ達が行ったのを確認して、皆の準備が揃ったところで分史世界に侵入した