方舟守護者から突きつけられた真実
特殊なコアを持つ機械人形を倒してそのコアを使ってリフトを起動して下へ下へ行く
その際に「これ以上進んではならない」「無益な争いは望まない」「これ以上進むならお前達は消滅することになる」って度々オーディーンの声が聞こえてきた
なんで一々そんな事言うんだろう?単なる平和主義者?
もしかして私達が怖い?そうだとしたら、弱点がわかるとか嘘を言って戦意喪失を狙っているかも…そんな臆病者だったら戦闘にはならずにすんなりと道標を手に入れられそうだけどなぁ
あ、でも相手自身が道標だし、今までの道標を持つ時歪の因子はかなりの強敵だったからやっぱりただ者ではないかもしれない……そう考えていると、広い空間に来た
周りを見たら次に続くドアもリフトもない
「行き止まり」
私達はそう判断して別の通路は無いか探しに戻ろうとしたら「…やはり忠告は聞き入れてもらえぬか」って声が聞こえると……
すぐ目の前に、炎の様に赤くて長い槍を持つ黒い鎧を着た神みたいな風貌の巨人が現れた
「あなたが…オーディーン?」
「いかにも」
「ここって、なんなの?」
「お前たちの単位で九万五千二百十二年前、ひとつの文明が滅びた。最後に残った住人たちは、自分たちの体を生体データに換え、封印したのだ。遥か未来、データを見つけた何者かが復活させてくれることを信じて」
「それがこの場所…まさに時の方舟ってわけね」
「このトールには、ひとつの文明と、四十二万七千八十六名の生体データが保存されている」
「よ、四十二万人!?」
「他の世界では失われてしまった最後の希望だ。彼らが未来の人間に託したメッセージを聞いてはくれまいか」
オーディーンがそう言い終わると、空中に液晶画面みたいなのが数枚出てきて皆驚く
これが……データ?本当にSF映画みたいって思っていると、画面に映っていた人が次々と話はじめた
老若男女問わず皆未来への希望を信じてデータ化して、このメッセージを残したんだ…
「ここにあるのは方舟に残されたデータのほんの一部。私の願いは、彼らの想いを未来へつなぐことだけなのだ…頼む。クルスニクの末裔よ。残された希望を破壊しないでくれ」
「…ああ、俺だって壊したくない」
「ルドガー…」
たしかに私達も出来れば破壊したくない。私達が正史世界を守るようにオーディーンはこの人達の命を背負っている。オーディーンも私達と気持ちは変わらない……けど
「でも、壊さないと元の世界に帰れないんだけど」
そう、ミラの言う通り破壊しない限り私達は正史世界に帰られない
このまま見過ごす事が出来れば…やっていたかもしれない。けど、そうとはいかないから壊すことになる
おかしいな。分史世界に来たなら、それなりの覚悟をしていたつもりだけど…
争う気の無い多くの生命を背負う者から破壊しないでくれって言われると、躊躇してしまうなんて。やっぱり私はエージェントには向いていないのかな?そう思っているとオーディーンは私達に言う
「心配は無用だ。お前たちも、全員データ化し、私が責任をもって保護する」
「データか…?」
「さっきの液晶画面みたいにされるって事…だよね?」
「そう。多分、永久に」
オーディーンの言葉に首を傾げるエルに、私とミラがこの世界から出られなくなる事だと分かりやすく言うと、エルは「やだよ、そんなの!」と首を横に振った
「あなたの破壊しないでくれって言葉には少し考えてしまったけど、それと引き換えに私達があなたに縛られるのはおかしいと思わない?」
「ああ。そうなれば話は変わる」
「交渉決裂ね」
破壊しないでくれって言われて少し悩んでしまったけど、ミラの一言とオーディーンの私達をデータ化する発言で、言う通りにするわけにはいかないって決めた
私はそう言うと、ルドガーとミラも頷く。するとオーディーンは「…無駄な犠牲を出したくなかったが、致し方ない」と呟くと私達に戦いを挑もうとした
「自信満々ね」
「なぜ私が、自分をカナンの道標を認識できているのか……それは、こことは違う世界から来たお前達が教えてくれたからだ」
「分史世界の私達!?」
「彼等はこの世界をニセ物と呼び、破壊しようとした」
まさか!分史世界に行けるのは正史世界からだけだと思っていたら、分史世界同士でも可能だなんて……!
「分史世界同士でも破壊ができるの…!?」
「自分たちの世界を正史世界と信じてそうしているんだわ…」
ミラの言葉もあってオーディーンの話を重く受ける。そんな事があるなんて…分史世界について驚く事実を知って息を飲むと、ある疑問が浮かんだ
「その別の世界の私達は…どうなったの?」
「全員倒してデータ化した……このように!!」
「やっ……何!?」
私の質問に答えながらオーディーンは手を振りかざすと、エルの周りに光が出現したかと思ったら、それが箱の形になってエルを閉じ込めてしまい宙へと浮いた!
「きゃああー!!」
「!」
「エル!」
「苦痛は一時だ。すぐに意識はデータ変換され、体は分解される」
「分解!?」
分解…データ化っていうなら、それなりの過程はしたんだろうなって思っていたけど、肉体を捨てて意識のみ閉じ込めたって言うなら…!
オーディーンとかトールとか、なにやらテイルズのファンタジアを思い出していたけど、これはシンフォニアの無機生命体みたいなものじゃん!それは生きているとは言えない!
復活を望んでいるって言っても、データ化する以前の身体に戻れる保障はない!だから…
「だから、あたし達はあんたを倒して帰るって言ってるでしょ!?エルを離せ!!」
「…すべて以前と同じだ。お前たちは激情に駆られ、隙だらけとなる!」
私達が怒りに力を任せて攻撃をしかけても、オーディーンは以前と同じだと余裕ぶっていた。その自信…真っ二つに折ってやる!!
「行くわよ!リル!!」
「わかった!」
私はミラの精霊術と合わせて鞭でオーディーンの右腕を縛って自由を奪おうとした……だけど、オーディーンは僅か数秒でかわして逆に私の鞭を左手で掴んだ
「えっ!?」
「そうだ。お前は私の右腕を封じて攻撃させない作戦だった…だが」
その瞬間、オーディーンの左手から火炎が出てきて鞭を伝って私の方へ勢いよく襲ってきた!
「(まずい!)」
すぐに鞭を離して後ろへ逃げると、火炎は鞭を焼き広範囲に広がる!
危なかった…あのまま持っていたら大火傷じゃ済まされなかったな
しかし、火炎の次にオーディーンは雷を降らせ、槍を振り回し、自分には近づけないようにした
「きゃあ!」
「このままだと、攻撃すら当たらない…!」
「私がなんとかするから、隙が出来たらそこに攻撃して!」
「うんっ!」
「わかった!」
ここはミラの精霊術に任せて、エリーゼとレイアの回復術で体力を整えて隙を窺うしかない……ルドガーは剣を構え直した時、後ろからエルの苦しそうな声が聞こえる
早くこのデカいのをなんとかしないと、エルが…!焦りそうになった時にある事を思い出す。結晶の力…今度こそ使えるかも!
そう思った私はエルの近くに行って、側だけの懐中時計を向けて意識を集中させる
「(エルの取り巻く光……消えて!!)」
しかし、何も起こらない
「(うそ…!?前の時と同じだなんて…!)」
海瀑幻魔の時にもこんな事があったけど、あれは呪霊術の影響でたまたま発動しなかっただけって考えていたのに…!!一体何故…!?
「なんで…なんで何も起こらないの!?」
思わずそう声を荒げても、何も変わらない。一体何が原因でこうなっているのか、考えても思いつかない…エルを助けられない自分が情けなくて悔しくて泣きそうになっていると「今よ!」ってミラの声が聞こえた
そうだ。ミラが隙を作って私とルドガーが攻撃をするんだった!このチャンスは次があるかわからないもの。今はエルを直接助けられなくても、あいつをさっさと倒せばいい
私は短剣を握って、オーディーンの光の攻撃とミラの精霊術がぶつかって消えた隙間に走る
「無駄だ…この行動も私はわかる」
間合いを縮める私にオーディーンは新たに精霊術を交えた攻撃をしようとする。私は…正直どうにかなるわけじゃないけど、短剣で対抗しようと前に突き出す
そして
「あ、あんたの術なんか消してやる!!」
負け惜しみにそう叫ぶと……パキッ!と何かが砕ける音がして、その後にオーディーンは雷光を発動させようとした
が、確かに力を溜めていたはずのオーディーンだったけど、かざした手からは何も起きなかった!
「ば、馬鹿な…!何故だ!?」
オーディーンは予想外の事が起きて動揺して、次にまた別の精霊術を交えた攻撃をしようとけど発動せず。これは…最大のチャンスだ!
「ルドガー!トドメをお願い!」
「うおおお!!」
ルドガーはハーフ型の骸殻に変身して、マター・デストラクトを放つと見事に命中した!
そして、オーディーンはその場に崩れる
「なぜだ…なぜ以前と違う結末に……」
もう体力は無いのに無理に立ち上がろうとするオーディーンは、信じられない…と私達を見ながらそう言うと、エルを囲んでいた光が消え、彼女は床に倒れる
「エル!」
「ああ……ルド…ガー……」
「ナ゛ァ〜」
「ルル……」
ルドガーもルルもエルに近づいて心配そうに見ると、エルは途切れ途切れだけど彼らの名前を呼んで自分は助かったんだと安心している…よかった
「データが違う……!」
再び立ち上がったオーディーンはエルと私を交互に見て何かを確信して、槍を構え直す
「原因は、その少女とその女かっ!」
「っ!?」
そう叫びながら槍を大きく振り下ろそうとした!
まだ攻撃できる体力があったなんて!オーディーンは技は封じられているから、ただの物理攻撃しかできないけどあんな一撃に当たったら皆巻き込まれる!
「させるか!!」
その時、すぐにまた骸殻に変身したルドガーが槍をオーディーンに向けて突き刺す
間一髪、攻撃される前に出来たからオーディーンの動きは止まり、ルドガーが槍を抜くと時歪の因子が刺さっていた
「これが真のクルスニクの……すまない……トールの人々よ……」
無念そうにそう言ったオーディーンは消え、時歪の因子が砕け散るとルドガーは急いでエルのところに戻る
そして、周りの空間も砕けて暗闇に消えていった
―――――――――――
気がつくと、ウプサーラ湖の外にいて分史と同じく雨と雷の悪天候の中にいた
「皆…大丈夫?」
「はい、なんとか」
周りを見て仲間たちの無事を確認すると、皆の中心に倒れていたエルを抱き起こすルドガーを見つけた
「大丈夫?どこか具合悪い?」
データ化とか言って身体を分解しようとしたんだから普通の苦痛じゃないはず。後遺症があるかと思って聞くと「ああ。エルは大丈夫だ」ってルドガーがエルの代わりに答える
エルは…ちゃんと目を開けていて意識ははっきりしていた。それを見て本当に安心した
「エル、赤ちゃんじゃないよ……」
いつまでも抱えられているのが恥ずかしくなったのか、もう大丈夫って自分で立ち上がろうとしたエルだけど、雷が落ちると「きゃあっ!」って短い悲鳴を上げて怖がる
その時、ルドガーはエルを守るように自分の方に抱き寄せ、両手でエルの耳を覆った
「ルドガー?」
「こうすれば怖くないだろ」
「だから…もともと怖くないんだってば」
やっぱり父親のことを思い出すとかも含まれているけど、純粋に雷が怖いって気持ちもあるだろうと気付いたルドガーがそうして雷からエルを守ろうとした
エルは少し不服そうだけど、怖いって気持ちが勝っているのか、あんまり否定しないで静かにしている
「ルドガーとエルって家族みたいですね」
「うん。お父さんと子ども…は若すぎるから、お兄さんと妹だね」
「それだと歳離れすぎじゃない?」
「そうか!……あ、でも海産物が名前になってる家族にもそのくらい歳が離れている姉弟がいたような」
「何それ?」
思わずサ○エさんを思い出す私に、レイアは頭にハテナを浮かべる
「けど、どっちにしろ、うらやましー」
ティポがそう言ったのを聞いてルドガーが「エリーゼも、家族みたいな仲間がいるじゃないか」って言うと、エリーゼの頬は赤く染まった
「レイア達はそうですけど……アルヴィンとかジュードは、友達……ですよ?」
ああーそっか。同性の仲間はお姉さんとか家族として見れるけど、男の仲間達はちゃんと異性として見ているんだね。家族になったらそれ以上の進展は無いし…って思ったけど、
そうなれば相手は誰!?ジュードなら頷くけど、まさかアルヴィン……は、はは犯罪だ!!
あ、でもジュードでも大変そうだな。ミラ=マクスウェルを気にかけているけどレイアからも好かれていて…そうなれば、ローエン!?ガイアス!?まさかまさか〜〜〜!
なんて、勝手に妄想を爆発させていると
「ん?どういう事だ?」
って、ルドガーはエリーゼの言葉の意味を理解していなくて、首を傾げていた
「この場合は家族として括っちゃ駄目だよ」
「え?なんでだ?」
「ルドガーって、女心がわかってないよねー」
「ねー」
「ねー」
「ええっ?だから、なんで…!?」
これすら聞いても何もわからないルドガーに、私だけではなくエルやティポまでも呆れてしまった
ルドガーがちょっと焦って私に聞いてきて思わず笑っていると
「ちょ、なにそれ!?」
って、ミラの驚いた声を聞いて、その見ている先を見ると…
なんと、そこにはルルが二匹いた!
「えーーー!?」
「なんで!?」
「ルルが二匹!」
実は双子だったのか?なんて思ったけど、飼い主であるルドガーも驚いているから、双子ではない…
「ナァ〜」
「ナ゛ァ〜」
私達が驚いている中、ルル達はそれぞれ鳴き声をあげると……変な鳴き声のルルの体が透けはじめた
「き、消える!ひょっとして、この子は…分史世界のルル!?」
「っ!?」
そうか。じゃあこの変な鳴き声のルルは分史世界でたまたま私達に出会って、ここに来てしまったんだ……
つまり、正史のルルは最初から分史世界には来ていなかった。私が見た光景が正しかったんだ
正史のルルと一体化するように完全に消えた変な鳴き声のルルを見て、これもクルスニクの鍵の影響……って思っていると、あの子はたしかエルの近くにいたのを思い出した
「(ミラの時もあったから、これは………まさか、エルが?)」
そう疑問に思いながらエルとミラを見ると
ミラの様子がおかしかった
なんかショックを受けたような驚いている顔をしている…
「(………まさか!)」
考えたくないけど、もしかしたら…っていう可能性が浮かんだ
「(さっきの現象は正史世界では同じものが存在できないって事!?………だとしたら、行方不明になっているミラ=マクスウェルがなかなか姿を現さないのは………!)」
この世界にもう一人の……今私達と一緒にいるミラがいるから?
そしてミラは私と同じ事を思っているから、こんな風に茫然としているかも…
けど
「(ミラ=マクスウェルは精霊で、ここにいるミラは人間だから、きっと何か別の理由で現れないんだ)」
私はそう考えて、今はミラにその事について話さないって決めた
まだ、そう決まったわけじゃない……そう信じる