目指せ一番!










「ふぅ……」




クマの激しいローリング攻撃をかわしながら、なんとか仕留める事ができて、一息つく




「大騒ぎだったね」

「だね〜…」

「こいつを……食べるの?」

「そ、そうよ。本には美味しいって書いてあったわ」




なるほど、このクマの手って食べるために獲るんだ

たしか、日本にいた世界三大美女もクマの手を食べて美を保ったって聞いたなぁ

ミラはさっさとクマの手を獲ると、ルドガーに「あなたが知ってる料理のコツ。教えなさい」って詰め寄った

あれ?ミラ料理できるはずなのに、なんでルドガーに?そう思っていると、近くにいたエルがしょんぼりしながら呟く




「エルの会いたいクマと違った……」

「ナァ〜」

「まあまあ。食べるためにクマに会いにきたんだから、想像と違ってよかったんじゃない?」




私がそう言うと、エルは少し納得してくれたみたい




「えっと、皆……いい?」

「ええ、これで最高のスープが作れるわ」

「レシピは完成したの?」

「大体は。あとは最終調整だけ。とびっきりの秘密兵器があるの」

「秘密兵器?」



それって何?って聞くと




「馬鹿ね。言わないから秘密兵器なんでしょ?」

「あはは。それもそうだね」




そう得意げな表情をしながら答えるミラに私はなんか納得した




「今度は何を使うんだ…?」

「なに、その不安そうな目。そんな顔したって教えてあげないわよ?…教えちゃったら、私が一番になれないし」




私達は息を整えながら大変だったなぁって思っている中、ミラは徹底的に秘密兵器を教えなかったけど、このクマの手を用いてレシピは完成だと意気揚々とした様子だ

最高のスープを作るって…なんでだろう?




「はりきってるね、ミラさん」

「別に、それほどでもないけど……エルをあっと言わせてみせるわ」

「エルを?」




そこに私の疑問に答えようとルドガーが来た




「前にミラのスープを食べた後に、エルから料理の腕前の一番は自分の父親。二番は俺。三番はミラって言われたのが納得いってないみたいなんだ」

「なるほど〜それでか!」




ルドガーの説明で、なんで無理にクマに挑んだのかここでわかった。負けず嫌いですぐに張り合おうとするミラだからね〜




「ねー、何の話?」

「ルドガーが、私にはかなわないって話よ」

「えー、ホントにー?」

「ホントホント。ねー?ルル」

「ナァ〜♪」




ルルはまるで全て理解しているようにミラの問いに楽しそうに答えた

エルは自分の何気なく言った事でミラが頑張っているとは知らずに、首を傾げる

まぁ、目的も済ませたし、日が暮れないうちに街に帰ろうと来た道を戻った




































――――――――――――





街の宿に帰ると他の皆はもう帰ってきていて、ちょっとクマ狩りに…って魔物退治をしたように言って夕飯を済ませる。その後、自分が使っている部屋に戻って寝たんだけど……どうも寝付けない上に喉が渇いてきた

宿の売店で何か売っていないか見に起きて一階に降りると、何処からか美味しそうな匂いがしたような…

こんな時間に誰が?って思って、食堂を覗いたけど誰もいなく、じゃあ厨房か?って思ってそっちを見ると




「ミラ…?」




そこには沢山の食材を並べて考えながら調理しているミラがいた




「リル!貴女、なんで…」

「喉が渇いたから飲み物を買いに来たんだけど、美味しそうな匂いがして来ちゃった」




てへって言うように笑うと、「リルなら仕方ないか」って軽く息を吐いたミラが私に話す




「見ての通り、実際に作ってみてるけど、何か一味欲しいのよ」

「そうだったんだ。味見していい?」




試しに一口もらうと、食べたことの無い肉の旨味が美味しいスープだった




「美味しい!これでも十分美味しいよ!」

「そう?けど、この程度で満足してちゃエルをあっと言わせられないわ」

「……ルドガーから聞いたけど、三番ってのは嫌?」

「納得いかない!」

「ははは…」

「そう言えば、貴女は料理の腕上がった?」

「ええっ!?」




いきなり、私の料理の腕の話になってドキッとする

…料理してるにはしてるけど、本当に簡単なものしか繰返し作っているだけな状態




「その様子じゃあ、ぼちぼちってとこかしら?」

「は…はいぃ…情けないながら」




正直に白状すると、ミラは大きくため息を吐いて「ま、そうだろうと思っていたわ」って仕方ないなと言うような目で見る

うぅ…出来なさすぎで、スミマセン




「ちょうど、材料も色々あるし、野菜スープの応用編を教えるわ」

「い、いいの?」

「ええ。弱音吐くんじゃないわよ?」

「はっはい!ミラ先生!」




こうして夜のお料理教室が始まって、私はいつもよりも気合いを込めて調理した


































「…うん。なかなか良いじゃないの」

「おおっ…本当に?」




注意いっぱいされたり時に呆れられながらも、スープパスタとかカレーとか色々作ってミラに試食してもらうと、不味いの文字はなかった

それを聞いて嬉しく思った私も作ったのを食べてみると、本当に今までよりも美味しく食べられて自分で感動してしまいそうだ




「すごい!ミラのおかげだよ!」

「そうでもないわよ。応用編って言ってもこれくらいは基本のような…」

「それでも嬉しいよ!ここまで腕が上げてくれて、ありがとう!」

「……もう。大げさね」




私は子どもみたいにキャッキャッ騒いで喜んでいると、ある事を思い付く




「あ、ねぇ、さっきのクマの手についてだけど、軽く醤油に付けるってのはどうかな?」

「醤油?……なるほど。それもいい考えね」




小さい時に田舎に住んでいる祖父母の家に遊びに行った時に、猪の料理が出てきて驚いたのを思い出す

初めは怖かったけど、食べると意外に美味しくてなんで食べれるのか聞いたら、たしか醤油と酒と砂糖少しで味付けしたって言っていたな。それなら今ここにあるクマの手にも使えるんじゃないか?って提案したら、ミラが驚きながら採用してくれた




「すごいわね。急にどうしたの?そんな発案が出来るなんて本当に腕が上がったのかしら」

「ん〜単なる偶然似たような料理を思い出しただけだよ」

「思い出した?……もしかして故郷についても?」

「あ…」




そうだった…ミラにも私は記憶喪失設定を言っていたんだ

どうしよう。騙したくないってのは皆に対する共通した気持ち。けど、ミラには…皆の中でミラには話してもいいかな?って思ってしまう

お互いに自分の世界とは異なる世界に来てしまった同士だからかな?




「うん…あのさ、ミラ……」

「じゃあ、そのクマの手を醤油につけてみるわ。アイディアありがとう」

「う、ううん…」




言うタイミングを失って、ミラのお礼に返事しか出来なかった

…今、ここで言ったらミラに「私をからかているの?」って怒られそうだし、言わなくてよかった…かな

うん。話は落ち着いてからにしよう

今はとりあえず、楽しそうに料理するミラの手伝いをしようか。私もエルがミラのスープ本当に美味しいって言ってもらえる日を目指して


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