鱗粉の幻夜(鱗粉の幻夜)

突然肩を叩かれて驚いて振り向くと…………そこにはカクテルを持ったアルヴィンがいた


「(あ!アルヴィン!)…………えっと、何のご用ですか?」


心の中で名前を呼びながら、作戦である他人のフリをすると、アルヴィンは上機嫌に続けて話す


「いやぁね、お嬢さんがしかめっ面しながらこの悪趣味パッツン野郎と向き合っていたから、タチの悪いナンパされてるかと思って正義の味方のお兄さんが来たのです!……ひっく」

「あ?」

「(悪趣味パッツン野郎って……アルヴィン笑わせないでよ〜!)」



どうやら、アルヴィンは私達に何か伝えにやってきたけど、普通に話せば仲間だとバレるから、酔っ払いのフリして私にナンパする。という形で接触してきたんだと分かったけど……

思わずアルヴィンの言ったリドウに対する悪口に吹き出しそうになってしまった。まずいまずい!ここで笑ってもいいかもしれないけど、リドウの事だから後で面倒な事になるし、第一言われた本人であるリドウも一瞬怒りかけたのを見逃さなかった

アルヴィン………あんまりやりすぎると、リドウを宥めるの大変だからね?

そう思っていると、アルヴィンの酔っ払いの演技は続く


「なぁなぁお兄さん。この子困ってるみたいだし、俺が連れて行ってもいいよなぁ?」

「ははは………なかなか愉快な紳士だが、そんな酒の力を借りなければ女に話しかけられないような腰抜けに………」

「?」



話してる途中のリドウの手が私の腰に回ってきたと思ったら、そのままグイッと自分の方に引き寄せる。その突然の動きに私も「わっ」と声を出しながらリドウにくっつく姿勢になる



「俺の彼女は渡せないな。だからシラフになってから出直してこい」


自分達はこんなに仲良しですよ。アピールをすると、酔っ払い演技のアルヴィンは「ちっ」と舌打ちをする


「あ〜〜そうかい、そうかい………んじゃあシラフになってから勝負挑むんで」


そう話しながらアルヴィンはポケットから一枚の紙を出してペンを走らせる

そして、書き終わると私にその紙を渡してきた



「その時の為なように、これ。俺の連絡先な」

「あ、はぁ………」


渡された紙を受け取ると、アルヴィンはリドウに向かって「諦めねぇからな!」と分かりやすい捨て台詞を吐いてその場から去った


アルヴィンがいなくなってから、渡された神を見ると何やら数字が沢山並んでいた


「え。なんですかね。これ」

「あのチャランボラン男の連絡先だろ………処分するために一旦部屋に戻るぞ」

「は、はーい………」


まぁリドウもこれが連絡先の番号じゃないのは分かっているし、捨てるんじゃなくてこれを調べる為に部屋に戻る提案をしてると思うから、私達はパーティー会場から出て宿泊してる部屋に戻った









部屋に戻ってよくよくメモを見ると、ただ並べられている数字がなにかの法則に分けられて書いてるように見えた

この数字と数字の間の開け方………


「まるで年度と日付みたいですね」

「あぁ。リルも気付いたか。そして、その後に続く数字は経度と緯度だろ。そこに当たる場所と日付で調べる」


そう言うと、リドウもそう思っていたらしく頷く

やっぱり年と日付けだったのか………でもなんでこれを?しかも経度緯度付きで。そう思っていると、リドウはおもむろに自分のノートパソコンを出して何かを調べはじめた。そして……


「………これか」

「何ですか?」


横からパソコンの画面を見せてもらうと、そこにはあるニュース記事が

内容は××年××月××日の○○にて複数人が刺されて、犯人が最後に自らの命を断つ悲惨な事件の内容が書かれていた


「うわ………こ、これがアルヴィンが私達に伝えたい事……なんですかね?」

「他の数字を調べてみるか」


そう言って次々に数字に記された日付と場所で調べると…………最初にヒットした事件と似たような事が書いてるニュース記事が出るばかり

不気味な事にどの事件も最後は犯人が自らの命を………

それらが分かっても、結局アルヴィンが何が言いたいのか分からなくて頭を悩ませる


「この複数の事件が……ホテルの黒い噂と何か関係あるのかな……?」

「……リル、このチップを使ってお前のGHSで事件を起こした犯人達について調べてくれ」

「あ、はい!」


リドウに言われた通りに、エージェントが使う特殊なサーチエンジンに繋がるセキュリティ防御も貼った特殊なチップを私のGHSに入れて、パソコン画面に映る犯人の名前を検索してみた

そこには………

おそらく警察やエージェントで調べ上げたデータベースが沢山載せられていた。それをよく見ると犯人達はみんな男女や年齢がバラバラで一見何も共通点が無いように思われていたけど………


「あれ。この犯人達。みんな数日前にリニューアルする前のこのホテルに泊まっていますね……!」


そう言ったようにどの人もみんな1週間以内にリニューアルする前のホテル「パピィリオ」に宿泊していた情報が載っていた

これは一体……?



「ねぇ、リドウ。これって一体……」

「さぁな。これだけの情報からだと、裏のカジノで売買されてるのは違法薬物でそれに関わって事件を起こしたか、あるいは見られちゃいけない取り引きを見てしまった奴が真犯人から脅しを受けて殺人をして最後は消されたか……」

「ひぃ…!」



あまりにもリドウが怖い事言うものだから思わず短い悲鳴を上げると、リドウは私の方を見て頭をポンポンしはじめた


「あくまで俺の予想だ。違法薬物なら出された飲食物を口にしなければ済む話だし、真犯人から脅しを受けて人殺しして最後は脅しを受けてた奴を消すなんて、そんな回りくどい事はせずに見てしまった相手だけを消せば終わる話だから真に受けるな。ちょっと考えれば分かるだろ?」


怖がる私がそんなに面白いのか、まるでからかった後に謝るようにちょっと茶々を入れながら慰めるリドウ………なんか子供扱いみたいで不服に感じる


「わかってますよ!ただ、そういう系の怖い話が出てくるんだと……」

「まぁ裏で仕事してる人間のやり方は綺麗なものじゃないからな……」


そう話してると、ドアを叩く音が

はーい。と声を掛けながらドアスコープ覗くと、青いネクタイをしたボーイさんが綺麗な青いカクテルを持ちながら「青い胡蝶の湖をお持ちしました」と言う声がした


それで開けると、カクテルが2本置かれた銀色のオボンを差し出しながら私に話しかけた


「806号室に宿泊の2名様のご予約でお間違いないですね」

「はい」

「確認の為にご予約の際にお渡ししたカードの確認をしてもよろしいですか?」


そう言われ、私の後ろからカードを持ってきたリドウがボーイさんに渡すと、それを確認した後にカードを何かの小型の機械に挟んで返してきた

そのカードは不思議な形の円に穴が空けられており、まるで昔の電車の切符切りみたいだなぁと思っていると


「では、真夜中の蝶の夢をお楽しみください」


と、ボーイさんは去って行き、それを見送った私達は部屋のドアを閉めて受け取ったカクテルのオボンと穴が空けられたカードをテーブルの上に置いた


「これでカジノ会場へ行くための準備は完了だな」

「はい。あとは……その会場に………」


遂にここから本来の目的である潜入捜査が始まる!そう思うと消えていた緊張感がまた湧き上がってきて身体が固まる


「……さっきの話を聞いて怖くなったか?だったらいい子に部屋でお留守番してもいいんだぞ」

「いいえ!………大丈夫です」


正直不安だし恐怖心もあるけど………これは私とリドウに任された任務。受けた時からリドウばかりの負担にさせないって決めていた

だって、私はもうリドウとはただの上司部下じゃなくて、パートナーに近いものだと思っているから、リドウにもそう思ってほしくて………だからこの任務を受けたから最後までやる


「要は周りに警戒しながらカジノ会場やオークション見ていればいいんですよね?大丈夫です。絶対にリドウから離れないですし!」


そう言ってリドウの隣に立って腕を絡ませると、最終確認してきた


「行ったからには後戻りは出来ないからな」

「わかってますよ。と言うか今さらですか?今まで沢山のダンジョンや困難を乗り越えてきた私に」


そう……今まで沢山の色んな事を乗り越えた。それは分史世界とかオリジンの審判とか一般的ではない答えもあるけど、それと同時に異世界の住み方とか文化とか1から学んだり、戦闘のやり方だって………

そして、最後は自分で選んだ道を進んでいるけど……後悔はしていない

無鉄砲に思われるかもしれないけど、怖くてもやらなきゃいけない事があれば引いたりはしない!

だから、貴方の隣は私なんだから。と言う様に目でリドウに訴えた

すると


「あー………そうだったな。これはリルにとっては愚問だったな」


それが伝わったのか、リドウは何か考えてたのか「くくっ」と笑うと私が絡ませていた腕を見ながら言った


「じゃあ、ここからが本番だからな。行くぞ」

「はいっ!」



なんやかんやあったけど………少しは同等なパートナーとして認めてくれたかな?まぁその答え合わせは任務が終わったあとに聞こう



…………さぁ。ここからが本来の任務。潜入捜査の開始よ!

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