鱗粉の幻夜(鱗粉の幻夜)
「…………じゃあ本当に何も覚えてないんだな?」
「はい。オークション会場に来てからそれ以降は」
布団に包まれてるおかしな状況から開放されたと思いきや、自分は何故かドレスを脱いでて下着姿で恥ずかしさから、そのままリドウにタックルしに走って一悶着して………
落ち着いた私は持ってきていた着替え用のワンピースを着て、リドウから説明を求められて今自分が知っていることを全部話し終わったところ
言ったようにオークション会場に行って商品を見ていたところまでは覚えていて…………それ以降の記憶がない
気付いたら、視界と身体が布団に覆われていた
だから、リドウから説明を求められても、私の方が誰か説明してくれ状態
「で、その記憶のない間の私は……」
「あぁ。リルがオークション会場で気分が悪くなったのか、いきなり俺に倒れかかってきたから部屋に戻って診察をしていた。そして起き上がってきたと思いきや、俺を熱烈にベッドに誘い出してきて………正直混乱したよ」
「ええっ!?私がリドウを夜のお誘いに!?」
そんな大変な状況で私はなんで………でも本当に記憶にないから、そんな話をされても私もどうしたら………
なんて思っていると、リドウが笑いながら話してくれた
「無理もないぜ。その記憶が無い間は別の精神がリルの身体を乗っ取っていたからな」
「え、ええ…!?」
別の精神が私に入り込んでいた?なんでそんな事が分かったのか話を聞くと、私が予約とかで使ったあの変な偽名を本名だと思って使った事とか色んな雰囲気に普段の私ではない違和感を覚えたから、突き止めてみると私の中に入り込んでいた“何か”が私の身体のままリドウに襲いかかったそうで、それで布団やらで拘束したとか
「な、なるほど………それで私があの状態に……理解しましたけど、それじゃあ私の中に入っていた”何か“は何処に?」
「それが布団の隙間から逃げてしまってな」
「ええー!!それヤバいじゃないですか!早く追いかけましょう!」
「そうしたいが、お前の身体に異常ないか確認してからな。さっきみたいに急にぶっ倒れられたら俺が困るからな」
「は、はーい………」
うぅ……たしかにリドウの言う通りだ
倒れられたら困るってのは今の状況だと恋人だから心配というより、正体不明の何かとの戦いに備えて万全にしろ。って事なんだなぁと、ちょっとしょんぼりした
「(でも、私が何をしたって言うんだろ………)」
そもそも、そんな正体不明の何かって一体いつ私に入り込んだんだろう?
私はただオークション会場で商品や競りの様子をずっと眺めていたはず…………
ん、待てよ。何か忘れてる…………
オークションの様子だけじゃなく、別のものも見てたような………
「あっ」
「どうした」
「そうでした。記憶を無くす前に絵を見ていたんです」
「絵?………あぁ。あの左側の壁に掛けられていたやつか?たしかにお前あの絵をずっと見ていたな」
「はい。あまりに美しい青の色使いだったので魅入ってしまっていたら…………突然、絵の中から青い光が出てきて……まるで蝶のように勢いよく飛んできて驚いて目を瞑って…………それからは覚えてないです」
「絵の中の光?それは本当か?」
「う〜ん。信じられないと思いますけど、たしかに見たんです」
思い返せば、たしかにオークションに参加している他の客達はあの絵の様子に気付いていなかった
だから、私だけが見ていた幻覚かもしれないと思うけど、でもリドウが見たっていう青い霧のような煙のようなやつと関係していると思う
だけど、リドウは険しい顔をして首を横に振る
「でもな。リル。あの絵は………」
そう言いかけたところで、私のGHSの電話が鳴る
着信先の名前は…………ルドガーだった
「ルドガー?どうしたんだろ…………はい、リルです」
「リル!リドウと今すぐホテルの裏庭に来てくれ!」
「えっ!?裏庭?いきなり何で……」
「助けてくれ!俺と兄さんじゃあ、もう抑えては………ぐあああっ!!」
「ちょっとルドガー!?大丈夫!?ねぇ!!」
突然のルドガーからの呼び出しに只ならない様子だと察知すると、電話越しのルドガーが何者かからの奇襲を受けたような声と衝撃音がして電話は切れた
「リドウ!ルドガーが…!」
「あぁ。わかっている。あの正体不明のやつがいる可能性がある………急ぐぞ!」
「はい!」
会話を近くで聞いていたリドウもルドガーとユリウスさんが何処に居るか理解して、すぐに現場に向かおうと部屋を出て行き、私もその後を追う
ホテルの裏庭に行くと植物のアーチの中をと迷路のような庭が広がっていた
ルドガー達は何処にいるのだろう?と静かに身を潜めながら探していると、鬱蒼とした森の中から何かがぶつかる音が
そこに行ってみると……
「ああっ!」
ルドガーは四肢を、ユリウスさんは口元と上半身を黒いもので木に拘束されていた姿が!しかもひどい傷だらけで………
こんな事、だれが……!?
「ルドガー!ユリウスさん!大丈夫!?」
「リル………来てくれてよかった」
そう言ったルドガーはなんとか無事だと私に話しかけてきた
「今、この拘束しているのを解くね!」
私はナイフでそれを切ろうと掴むけど、何やら変な感触が。それに………ナイフの刃が通らない
「あれ?あれ?……なんだコレ」
「おいおい、どうなってんだユリウス。変な大人の玩具を爆発させたか?」
「……」
「ちょっと。今はそんな事言う暇ないですよね」
まるでスライムのようなゴムみたいな柔らかくて切れない何かに拘束されているユリウスさんが面白いのか、リドウはそんな冗談を良いながら調べる
うぅ……口元を謎のもので塞がれているユリウスさんは目で「後で覚えていろよ」という様に睨みつけている……!だから私はリドウにあんまり変なこと言わないようにって声を掛けると
「ウフフフ………」
と、何処からか女の人の声がした
「だ、誰!?」
辺りを探していると、茂みの奥から………
黒いロングドレスと肩掛けストールを身に纏い、アプリコットの輝く長い髪を下ろしたスタイルの良い女の人が現れた
年は私と同じくらいだけど、私より色気があるように思える…………じゃなくて!
「あなたは誰!?ルドガー達をこんな風にしたのはあなたなの!?」
「ふふふ………そうよ。貴方をおびき寄せるために」
「え?」
「な、何ぃ………!?」
女の人の言葉を聞いた私とルドガーは、その言葉を聞いて驚くと同時に
女の人は何かを唱えて怪しく光る魔法陣を私の足元に出したのに気付き、私は素早くその場から走って逃げると、魔法陣から黒くてドロドロしたものが大量に吹き出す!
なんだ……?なんか精霊術とは違うような………とにかく、あの黒いドロドロはおそらくルドガー達を拘束しているものだ!捕まってしまったら、何をされるやら………
「とにかく、私まで捕まるわけにはいかない!」
だから私は女の人の攻撃に当たらないように木と木の間を通ったり茂みに飛び込んだりとか、一直線な動きをしないように意識しながら女の人の周りを走り、反撃のチャンスを伺った
そこに
「OK、リル。そのまま動き回ってろ!」
そう言ったリドウが武器のメスを構えて投げようとした
その時
「待ってくれ!その人を傷つけるな!!」
突然のルドガーの叫びに驚き、私もリドウも手を止めてしまう
「ルドガー?一体何を…………」
「捕まえた」
ルドガーに何があったのか聞こうとした隙を狙われて、私は魔法陣から出てきた黒いドロドロに捕まってしまい、ルドガー達と同様に木に拘束されてしまう
「リル!」
「………ったく」
捕まってしまった私にルドガーは悪い事をしてしまったと悔やみ、リドウは戦力が減ったと舌打ちをする
うぅ………すみません
私を捕まえられて喜ぶ女の人は、嬉しそうに近付いてきた
「やったわ。あなたを一目見た時から特別な魂を持っているなぁって思っていたの」
「と、特別な魂…?」
「そう。まるで偉大な精霊に選ばれたような」
「っ?」
その言葉を聞いて思わず、この世界に召喚されたばかりの私自身の事を思い出した
あの時の私はオリジンに呼ばれてトリップしてきて……
普通の人間だけど、オリジンに選ばれた証の結晶を持って分史対策エージェントとして働いた
だけど今は分史世界やオリジンから授かった結晶と能力はもう消えている
そのはずだけど…………普通の人には感じない魂が、まだオリジンの力を帯びてるとでも言うのかな?
………いくら考えても答えは出てこない
いや、まずはこのピンチをなんとかしなくちゃ
女の人が私の目の前にくると、彼女は私の頬に手を添えてうっとりしはじめた
「(まずい!まずい!こんな綺麗な人に好きにさせられるって聞くと、変な想像を……………ん?)」
リドウが見てる前で綺麗なお姉さんとイケナイ事になるのでは!?とエロ同人みたいな想像していると
ある事に気付いた
女の人の腕に…………サンオイルスターの絆創膏が貼られている
え?こんなお姉さんな人でも子供向けキャラクターの絆創膏なんて使うんだ
「(こういうの使うのって私の周りにはエルしかいないからな………………ん。エル?)」
そういえば思い返せばルドガーとユリウスさんの近くにエルがいなかった。もしかしたら宿泊してる部屋で寝てるかもしれないけど
ある事に気が付いてしまう…………
この女の人もエルと同じくアプリコット色の髪とブルーグリーンの瞳…………なんだろう。こうやって見ると、まるでこの女の人がエルが大人になった姿のようだなって思ってしまう
……………
まさか!!
「あなた…………エル!?」