番外短編(君の心は誰のもの?)
※注意!
・夢主がリドウ以外のとある男性キャラと絡みます
・リドウ視点で書かれていて、リドウのキャラがちょっと崩壊
・この話は本来はルドガー達が行っている分史世界にリドウと夢主の2人が代わりに行っている設定
それでも大丈夫だ!と言う方のみどうぞ
〜もし、リルが分史アスコルドに行っていたら〜
「ここは列車テロが無かったから、アスコルドはちゃんと運営しているんですね」
「ああ……」
ユリウスを追って俺はリルと分史世界に来たが、ここではアスコルド行きの列車が普通に動いているため“列車テロがなかった世界”と判断
そうして、ここに時歪の因子があるかもしれないって予想した俺達はアスコルドの中に侵入したが今のところそれらしい物は見当たらない
何処だ?まさかこの建物自体が時歪の因子か?なんて見つからなくて、くだらない考えをしていると目の前に大きなエレベーターが見えた
これを使って移動しようとしたら、どうやらカードキーが必要みたいで俺達じゃ動かすことができない。…こうなったら、そこら辺にいる奴らを捕まえて無理矢理奪おうかと考えていると、俺達に近づく一人の人間を見つけ、そっちを向く
俺達に近づいてくるのは、だいたい俺と同じ身長で銀の髪に赤いメッシュに鋭い目付きの……見た目からいくと俺より年上の男だ
「失礼、ここで何をしているのですか?」
男はそう丁寧な口調で話しかけてきたが、目付きはかなり警戒しているように思える
ここは怪しまれない様にするか、一気に始末してカードキーとか使えそうな物を物色するか、どうしようか考えていると
いきなり、リルが男に近づく
「あ、あの……」
「はい?」
「私達は……クランスピア社の者で、ここの見学に来たんですけど……」
驚いた。リルが怪しまれない様に要点は話さず、自分達の事を話すなんて……俺と同じ事を考えていたのか
さっきまで「工場内で栽培されている植物ってどうなんだろうな〜?」って、呑気な事を言っていたが以外としっかりしているんだな。しかも、上司の俺よりも早く的確な行動で
意外な一面を見たなって彼女の事を見直していると、話はまとまったみたいで男が俺達をアスコルド内を案内するとエレベーターを動かした
「ご存知かと思われますが、私はこのアスコルドの動力となる大精霊アスカを捕獲し、運営しているジランドール・ユル・スヴェントと申します」
「(ジランドール?たしか……)」
その名前に聞き覚えがあった
たしか、エレンピオスで有名な貴族で、十数年前に旅客船ジルニトラと共にリーゼ・マクシアに漂流してアルクノアとなった男
そして、一緒にいた生き残りで今ルドガー君と行動をしている商人のアルヴィンと名乗った男から、その真相と……この男ジランドールが死亡したのをこの前聞いたな
じゃあ、こいつが時歪の因子か?そう思ったが反応はないから違う
「(だったら、いつまでも居られちゃ行動がしにくいな……)」
こいつが運営者って事は、カードキーの他に何か使えそうな物を持っている確信がついて始末しようと武器を取ろうとした
が……
「アスカを捕まえた時はどんな感じでしたか?」
「はじめは大きな魔物かと思いましたが、近づくと眩い光を放っていたので、これはただの魔物ではないぞって思い捕まえて調べたらアスカだったのです」
「すごいラッキーですね!あと……」
さっきから、リルが男に近くて始末できねぇ!!
「(やっぱ、こいつ馬鹿だな。そいつを生かしておいても何もメリットは無い)」
リルは基本的に殺しはしたくないって言っていたが、この世界の人間をつれ回して時歪の因子を壊す時に邪魔をされるっていうリスクを考えないのか?
まだまだエージェントとしての器量が足りないな
そうリルにイライラしていると、エレベーターは止まりドアが開く
降りてからは、工場内で栽培されている植物の説明しながら歩くが…
「(俺達の目的はこの世界を壊す事だろ!呑気に見学しに来たんじゃねぇから!)」
いまだに男とリルは隣同士で近い距離で話している
「(クソッ!なんだよあいつは!俺がいながら他の男と楽しそうにしやがって……近い!近い!!)」
そう思うと、頭に血が上ってきそうだ……
仕事に関してイライラしていたが、今度はプライベートな面でもイライラしてきたようだ
俺は何とかリルに男から離れてもらおうと、間に行って大きく咳払いをすると
「どうしたんですか、リドウさん?今盛り上がっているんで邪魔しないで下さい」
「はぁ……!?」
きょとんとした顔をしたリルは、俺のやった事を理解しなかったどころか邪魔するなと一言で済まして、また男と話しはじめる
おいおい、嘘だろ……?
俺はお前の彼氏だろ?彼氏を放っておいて、冷たくあしらうって……
これまさか目移りか?
いやいやいやいやいや!あり得ないな!あんな変な髪型でセンス無さそうな中年のおっさんにお洒落でカッコいい俺が負けるなんて、無いな!
それにリルも俺に惚れているはずだから、これは何かの作戦だと……
「ところで……ご結婚されてますか?」
「いいえ、それどころか彼女もいません」
「そうなんですか?すごく素敵な方だから、てっきりいるのかと」
「ははははっ、貴女の様な可愛らしいお嬢さんにそう言われると照れますな」
……は?なんでプライベートな話……しかも、そんな男と女が急接近するよう話題をしているんだ?
まさか、リルはこの男が……?
無い無い無い無い無い!!無いな!!!絶対ない!!!!
こいつがおっさん好きって話聞いたことないし、何よりも俺がいるからそんな事は……
「照れるって事は……私を女として見てくださっていますの?」
「え?」
「え゛?」
「もし……ジランドールさんが迷惑でなければ私……」
「お嬢さん…」
「は…………はああああああ!!?」
いつもこんな風に馬鹿デカい声で騒ぐリルは、頬を薄紅色に染めて男を見てそう言ったのに対して、俺は彼女代わりって言うわけではないが大人気なく大声を上げてしまう
いや……上げない方がおかしいだろう!!?
「ちょっと待てリル!流石にそれは冗談でも俺は許せないぞ!!」
「え?どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたもねぇだろ!!俺の前でいい度胸だな!?」
「え……だって、仕方ないじゃないですか」
そう言ったリルは次の瞬間信じられないような行動をする
「私は……この方の事しか考えられなくなってしまったの」
リルは赤い頬のまま、はにかむような幸せそうな笑みをして男と……腕を組んだ
「ふ…………ふざけんのも…大概にしろおおおおおお!!!」
ついに我慢できなくなった俺はそれを見てぶちギレた!
よくも目の前で他の男に乗り換えやがったな!!絶対に許さねぇ!!
武器を構えて男を殺そうとしたが、いきなり強い衝撃で俺の武器は弾き飛ばされた
「なっ!?」
「見苦しいですね……男の嫉妬ほど醜いものは無いな」
なんと男が大型の銃を持っていて俺にそう言うと、前髪をかき上げて口調が荒くなった!
つまり、この銃で俺の武器を飛ばしたんだな……
畜生!この男本性を現したな!ここは分史世界だが、こいつがアルクノアの首領だったのをすっかり忘れていた俺がうかつだった!
そう後悔していたら、突然頭に衝撃が走ってそのまま倒れてしまう。くっ……銃で殴ってきたな!
「(まずい…このままだと……リルが……!)」
逃げるように促したかったが、その前に男がリルに近づく
「負け犬は大人しくそこで見ていろ」
そう勝ち誇ったような笑みを浮かべると、男はリルの顎を掴み自分の顔に近づけさせた……まさか
「だ……リル……に、にげ……」
ちゃんと言えなかったが、聞こえているはずであろう声はリルには届いておらず、むしろ……
「ああ……!ジランドールさん……!私をもらってください!!」
なんて、歓喜の声を上げて待ち焦がれていた
おい……
「ふっ、俺の女になるって事はそれなりの覚悟があるんだな?」
「はい……!もう地獄だろうと何処までもお供致します〜!!」
おい……!
「いい覚悟だ、気に入ったぜ嬢ちゃん」
「あの……リルとお呼び下さい」
「リル、お前は俺の物だ」
「はいぃ……!」
おい…!!!
「い……いい加減にしろ!!こんな分史世界あってたまるかあああ!!!今すぐ消滅させてやる!!うおおおおおおおお!!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ぃ……さ……」
「ぅ……」
「リド……さ……」
「ん……?」
「リドウさん、起きてください」
「っ!?」
勢いよく上体を起こすと、そこは俺の寝室
そして俺の隣には心配そうに俺を見るリルの姿が
「大丈夫ですか?うなされてましたよ……」
「うなされていた?」
つまり、今までのは……
「夢……だったのか」
そう理解すると昨日からリルが泊まっていた事を思い出し、さっきまでの変な緊張感は無くなる
ほっと胸を撫で下ろして額に手をやると、汗で前髪がくっついていた
こんな状態なら普通は前髪をかき上げるが、夢のあの男を思い出して胸くそ悪くなったから、そのまま洗面所に行って洗顔した
「(ったく、なんていう夢を見たんだ……)」
夢ってのは自分の願望がよく出るものだと思ったが、なんてものを見てしまったんだ……
自分自身にそうイラついたが所詮あれは夢だって思い返して冷静になる
子どもじゃあるまいし、いつまで夢を気にしているわけにはいかない。一通りの支度を済ませてリビングに行くと
「あの、朝御飯作ってみました……」
自信無さ気にそう言ったリルは、テーブルに朝食を置く
焦げたパンに卵が崩れたベーコンエッグ…かろうじてサラダは綺麗に盛られている
俺は早速それを頂くと、口の中に苦さが広がった
「どうですか?」
「……焼きすぎだ」
「あぁ、やっぱり焦げてましたか〜」
失敗しちゃったなぁって、リルは食べながら渇いた笑いをして、苦いのを堪えている顔をする
「……けど、前よりは美味くなっている」
「本当ですか?」
「ああ」
……彼女を見て忘れようとした夢を思い出して情けないが、らしくもない事を言ってしまった。しかし褒められたリルはすぐに嬉しそうに笑う
「なぁ、リル」
「はい?」
俺は思わず、サラダを取ろうとしたリルの手を握ると彼女は驚いて俺を見る
「どうしたんですか?」
「……いや」
夢とは違い俺の方をしっかり見て何があったのか心配そうに見る目で、俺は何をしてんだって我に返ってゆっくり彼女の手を離した
すぐに食事を再開しようとしたら、リルはクスッて笑い出す
「何の夢を見たのか知らないですけど、いずれ忘れられますよ」
「……は?」
言葉通り俺があんな変な夢を見た事は知らないはずなのに、リルはうなされていた俺の様子から悪い夢を見ていただろうと察して、そう言っただろう
なんだか今日のリルは……いつもより輝いて見えるのは気のせいか?
「じゃあ、リルが何か楽しい事をして忘れさせてほしいかもな」
「え?私が何か?ん〜……はと麦、玄米、月見草〜そう決めていた♪」
「………」
おそらく彼女の世界にあるギャグな替え歌だと思うが、元ネタの歌や誰のネタかわからないためノーリアクションしていると次のネタをしようとした
「じゃ、じゃあ次は…」
「ああ、もういい。なんだか馬鹿っぽくなってきたからな」
「ええ〜!だって、リドウさんが何かすれば忘れるって言うから頑張って……」
「もう忘れた。お前のつまらないネタでモチベーション下がった」
「はぁ〜!?人にさせておいてそれですかぁ!?」
「心配して損した」ってぷんぷん怒るリルに「さっさと食って行くぞ」って言うと、少しやけ食いして喉に詰まらせたの見て俺は吹き出してしまう
「水っ……!」
その俺に怒るよりも先に慌てて水を飲みに水道に行く姿を見ながら、そんな微笑ましい彼女を誰にも渡したくないと秘かに思った
〜おまけ〜
「あ、テレビで最近の女性の恋愛傾向についてインタビューしてますよ」
「そうか」
「へぇ〜……ランキングでは今、若い子が選ぶ男性は結構年上なのか〜たしかに、渋めのおじさまってカッコいいよな〜〜」
「っ!!?」
「どうしたんですか?」
「い、いや……」
「(もしかしてさっきの言葉でヤキモチ焼いたかな?)」
「(まさか……いや、そんなはずはない!)」
END