戻れる方法模索



ここに来て一週間以上経ったかな?そんなある日、とある事を考えた


俺は元の世界からこの別世界に来た時に高い所から落ちている。つまり……



「……つまり、そこで思うことは何だと思う?」

「なんでお前が僕の部屋に居るんや」

「おい、人の話をちゃんと聞いていたのか?今聞いているのはそう言う事じゃないだろ。ちなみになんでここに来たかってば、その俺の思い付いた事は翔君にもわかるかな?って」

「わからん」

「……そうか」



なんだよ。なんだよー。ここまでもう一度説明させておきながら結局返答はわからないかよ。仕方ないから答えを言おう



「つまりな、それが鍵なんじゃないかって思ったんだ」

「それが鍵?どういう事や」

「高い所から落ちたのが、この世界に来たきっかけかもしれない…」

「なんや。飛び降りしたいんやったら、どっか別の所に行きぃ。ここでやられて死んだら僕らに面倒事がくる」

「待てよ、まだ話し終わってない。それに俺だって命が惜しいから命綱はちゃんとやるさ。だけど…」



そう言いながら俺は“命綱”と言った……立体起動装置を出した



「命綱にしたいこれが調子悪いんだよな」



そもそも立体起動がワイヤーを出してくれなかったから、こんな事になったかもしれない

今回はワイヤーを刺して固定して、この世界で言う“ばんじーじゃんぷ”とやらの方法で落ちてみたらどうなるか試そうか考えた

が、ワイヤーが出ない理由を調べてみたら奥で何かが詰まっているから出ない事が判明して、引っ張ってもびくともしないから翔君がロードの整備で使っている道具で立体起動にも使えないか交渉しにきたというわけだ



「すまないが、潤滑油か煤取りの棒とかないか?」

「ある」

「本当か!じゃあ少し分けて貸してくれないか?」

「嫌や」

「はぁ!?何で!?」

「IH前で大事な時やからお前なんかに貸す分が惜しいんや」

「いんたーはい?よく分からんが、ほんの少しだけでいいから!」

「ダメなもんはダメや」

「え〜!!」



IHってそんなに大事なものか。まぁ毎日ロードとやらに乗って夜まで練習するくらい大事な勝負事だろうけど、ここまで駄目だって言われるとなんか悔しい



「お願いったら、お願い〜〜!!」

「うっさいわ!服引っ張んな!!」

「いいって言うまで離さな〜い!!」



俺は翔君のTシャツを引っ張りながらお願いしてるけど、それでも拒否している。なんだよ、この冷血野郎!こんなに必死にお願いしてんのに!

いい加減彼の頑固さに怒りたくなった時に、ある事を思いついて冗談として言ってみた



「もしかして翔君…」

「なんや」

「俺に帰ってほしくないのか…!?」

「ファ?」

「だって、帰られるかもしれない方法の協力を拒否するのは、俺にここにいてほしい気持ちなんだな!つまり……俺に惚れ」



ここで言っている最中に翔君は俺に何かを投げつけてきて、それが頭に当たり痛みで続きが言えなかった



「痛ってぇ……何するんだ!」

「ほんま、さっきからギャーギャーうるさいわ……それ欲しかったんとちゃう?」

「えっ……あ」



よく見たらその投げつけてきた物は水よりもドロッとした液体の入った透明な容器と煤取りに使えそうな棒だった



「なんだ……最初からそうしろよ」



せめて言った冗談に対して「違う」とかの否定やツッコミが欲しかったけど、何も言わずに貸した翔君に少し冷たいなぁって思った俺はお礼ではなく、そう嫌みったらしく言ってみると今度は何も返事せずにそのまま勉強を続けている。無視かよ…


まあ、とりあえず貸してもらえたからありがたい。さっさとワイヤー部分直しますか……もう彼の事は気にしないでその場に座って作業した。詰まっている所に潤滑油を流して棒で奥を叩いてみると、詰まっていた原因が中でザクザクと音を立てて砕けている



「おい、なんでここでやるんや」

「いいじゃないか。また立体起動隠しながらこの部屋から俺が使っている部屋に戻るのは面倒だ」

「せやったら、持って来なければよかったんと……」

「んんっ!?」



翔君の話を半分聞きながら作業を続けて、一度逆さにしてみると、ワイヤーが出てくる穴から赤黒い欠片がドサッと落ちてきた



「ピギィッ!?な、なんやそれ…!」

「あちゃ〜……これ蒸発しきれなかった巨人の血だ」

「ち……血ぃ!?」



普通、切り離された巨人の体の一部や血、そしてうなじを切られた巨人の死体は骨を残して全て蒸発して無くなるはずだけど、まれにこうして蒸発しきれないで残ることもある


しかし…こんな風に沢山付いてて残っていたなんて……最近、スナップブレードの手入ればかりしていて装置の方は疎かにしていたなって反省していると……



「キモーーー!キモ!キモ!キモ!キモーー!!」

「ど、どうしたんだ急に!?」

「どうしたもこうしたもないわ!自分の部屋でそんなキモいもんをぶちまけられて平然としてる奴なんておらんわ!!」

「すまない!今片付けるから…!」



そうだ。翔君は巨人を知らない人間だから、いきなりこんな事されたら怖いし困るよな

俺はすぐに固まって小さい欠片になった巨人の血を手で集めてごみ箱に捨てると、もう一つの装置はごみ箱の上でやって、これでようやく不具合の原因を取り除いた……つもり



「よし、これでいいはずだ」

「ほうか。なら、それ返してさっさと戻…」

「で!次は…」

「まだ何か用あるんかい」



さっさと部屋から追い出したい翔君だけど、俺の用はまだ終わってない。不具合を直した後にやる事と言えば一つしかない



「この立体起動がちゃんと動くか試したいから、使って良さそうな場所を教えてくれないか?」

「はぁ〜?なんで僕がそんな事せなあかんの?自分で探しぃ」

「あ、そう……じゃあ、ここでさせてもらいますか」



本当にこいつは俺が元の世界に帰ってほしいのか帰ってほしくないのか分からない態度だ


また彼の態度にイラッとした俺はすぐに立体起動装置を装着して、ワイヤーを発射させようとスナップブレードに繋がっているスイッチを押そうとした



「ちょ、ちょお待て!ここでやるなって言うたやないか!!」



その時、それを見た翔君が慌てて止めようと俺に近づくと……



「ピギッ!?」

「え?…うおあああ!?」



なんと、いきなり倒れてきて俺に覆い被さってきた!



「おい!なんだ!?なんだいきなり!本当にどうした!?」

「近い距離で大声で喚くな!……あれを踏んでしもうたんや」



運良く布団の上に倒れた俺は痛みは無く、すぐに何があったか聞くと、翔君は床に転がっていた潤滑油の容器を指差す

なるほど、俺を止めようと近づいてあれを踏んで転んでしまったのか……そう納得したけど、考えてみればこの状況は二度目なのに気付く



「最初あった時もこうして倒れてきたよな?やっぱ俺の事好きなのか?」



なんて笑いながら冗談言うと「ちゃうわ!んなわけないやろ!」って少し本気にしたのか怒りながら言って俺の頭を軽くベシッと叩く

ようやくツッコんでくれたな。痛いけどそれが何だか嬉しくて笑っていると翔君はなんで俺が笑っているのか意味がわからなくて「キモッ」って本当に気持ち悪いものを見るような目で見て、すぐに立ち上がる



「なぁ翔君。さっきの立体起動が使えそうな場所に案内してくれって話は結局良いの?駄目なの?」

「駄目や。って言うたら、またここでやるんやろ?仕方ないから、人気の無さそうな所に連れてくわ」

「本当か!?流石翔君!賢い子だな〜」



俺はそう誉めながら頭を撫でてやろうとしたら、当然ながら手が届かなくて逆に翔君から「無理すんなやチビ女。ププッ」って笑われた

うわ〜!やっぱ可愛くないなぁ〜俺の妹と年が変わらない子でこんなに生意気な奴は初めてだ

まあ、でも。協力してくれるって言うからいいっかって開き直った俺は、早速翔君と人気の無さそうな所まで外出した