来るときにはすぐにエスカレーターで上に行ったから気付かなかったが、この一階に食品売り場があったのか……
そう思いながら入り口より奥の方へ進むと、これはまた大きく広く食品を売っていて驚いたと同時に寒さを感じた
「……な、なぁ。なんか寒くないか?」
「当たり前やろ。生物扱ってるんやから」
「す、すごいな……傷み易い食材のために、こうして温度を調節するのか。ちなみにどうやって冷やしているんだ?冬でも閉じ込めているのか?」
「オヤジギャグで冷えとるんやない?」
「そうか………って、んなわけ無いだろ!?」
「なんや、気づいたか」
「いくら馬鹿なお前でもそれは通用しなくて当然か」と言うように、さっきよりも見下した感じで笑っている翔君
この野郎…!15歳のくせになんて生意気で可愛いげがなくてムカつく野郎なんだ!助けてもらっている分には感謝しているんだけど、あんまり付け上がった事言い出したら次は絞めてやろうか…!
今は怒りが爆発しそうになっているところをグッと堪えた
その時、先に進んでいたおばさんが、カートを押しながら俺達に近付いて聞いてくる
「ユーリィちゃん、翔君。今晩の夕食は刺身でええ?」
「ええですよ」
「(さしみ?)」
何の事だろう?って思っていると、翔君が「とりあえず頷け」みたいな感じにアイコンタクトしてきたから分からないけど俺も「いいですよ」って頷いた
「じゃあ…こっちのいっぱい入った方がええな」
透明なケースを二つ持って見比べたおばさんは、大きな方を買うようだ
さしみとはどんな物か覗いてみると……赤やオレンジ色、白などの色をした綺麗な薄いものだった
そして、おばさんがまた先に進んだ時を見計らって翔君に聞いてみる
「翔君。あれは一体どんな食品なんだ?」
「ハァ?お前昨日魚食ってたのに、わからんの?」
「魚……え!?あ、あれも魚なの!?」
「やっぱ君は馬鹿や…」
さっきはふざけて馬鹿って言ったのに本気かよ…って言いたげに呆れているけど、知らないものは知らないんだ!あんな風な形になっている魚なんて見たことない!
「だって、あんな薄く切られた生魚って見たことないし……だいたい普通の魚なから、ああして切らなくても、そのまま売ればいいんじゃないか?」
「ほんま馬鹿やな。そんなデカイ魚をそのまま並べられるわけないやろ」
「デカイ魚?その赤いのとオレンジのはデカイ魚なのか?」
「ちょっとこっちに来ぃ」
翔君に案内されて来たところは先程おばさんが持っていた“さしみ”とやらが沢山置かれていた場所
その近くの壁に魚の写真がが張られてて、何か説明書きが書かれていて読めなかったが体の大きさはわかった。えっと……あれは大きいもので1.7m!?隣のは60cm!?
「理解したかぁ?」
「あ、ああ……デカイ魚なのはわかったけど、そんなのが川にいたら大変じゃないか?それともこの世界の川はすごく深いのか?」
「ファ〜。もう頭痛くなりそうや……デカイ魚は大抵海にいるやろ」
「海?……海ってまさか!あの湖より大きくて塩が取れるって言われている!?」
耳を疑うような単語が出てきて、すごく驚いた!
それを聞いて俺が知っている情報を言って聞いてみると、翔君は「お、おん。その海やけど…」って俺の驚き方に異様さを感じながらも答えてくれた
そうか海ってこの世界にあって、あんな風なデカイ魚がいるんだ…!
「海って本当に存在していたんだ!単なる伝説上のものじゃないんだ!!」
「……ちょい待ちぃ。ひょっとしてお前の世界に海無いん?」
「ああ。川や湖はあるけど壁に囲まれた陸地の国だからな。海の存在は憲兵からタブー視されている禁書に記されているのを小さい時に読んで知ったんだが、信憑性の薄いものだから伝説だと思ってたんだ。だけど本当にあったんだ……!」
この世界は何処か俺の世界と似た自然があるから、きっと俺の世界にも…!なんて期待が高まっていると「海…無いんか…」って翔君はポツリと呟く
「な?これで俺は馬鹿ではないってわかっただろ?」
「ほーですねー」
「なにその適当な返事!?」
馬鹿じゃないってのが認められてないような気がするけど、俺は海の生物が食べられる楽しみであまり深くは突っ掛からなかった
「翔君〜。悪いけど、醤油持ってきてくれへん?」
その時、おばさんが何かを忘れていたらしく、翔君に持ってきてくれるように頼む。それを聞いた翔君は頷いて何処かに向かうのを見て俺もついて行った
「……お前は来んでもええやろ」
「まぁ気にするなよ!俺は気になるから来たんだ」
「なんやそれ。ウザいわ〜」
ついて来た事に対してブツブツ言う翔君だけど、俺は気になるし手伝いたいんだ!
彼に何を探しているのか聞くと“しょうゆ”って言う黒い液体らしい
黒い液体?コーヒーとかの飲み物以外にも黒い液体の食品ってあるのか〜って思っていたら……
「お!あれか?……見つけたよ〜!」
何やら色んな色の液体の入ったボトルが何本も置かれていて、その中から黒い液体の入ったボトルを見つけてすぐに翔君の元へ持って行く
「これが“しょうゆ”か?」
「それ……コーラやないか!アホ!!」
「えっ!ええ!?これがコーラ?」
翔君から頭にチョップをもらい“しょうゆ”じゃないって言われたんだけど……
コーラって普通ガラス瓶に入っていると思ったら、こんな風な柔らかい素材のボトルに入っているんだって関心していると、翔君は「もうええから、先に戻りぃ」ってさっさと行ってしまう
ええ〜〜!?いや、ここで一人にされても、どうやって戻ったらいいんだ…? 周りを見ておばさん達は何処にいるか探そうとした時に、ある男が近付いてくる
「あの…君、御堂筋の知り合いか?」
「え?」
その男は翔君よりは背が低いけど、俺より高い…175pくらいで、前髪をオールバック気味に上げていた
だ、誰だこいつは?そもそも、み…“みそうすぎ”?とは誰の事を指してんのかな?色々疑問に思う中、男は続けて話す
「あ、すまんなぁ。遠くから君と御堂筋が話しているのを見かけたもんで…」
どうやらその“みそうすぎ”とは翔君を指していると見た
じゃあそうなれば、この人と翔君はどんな関係なんだ…?そう思っていると、翔君が“しょうゆ”を持って俺達の方に来た
「……何しとるんや。石垣君」
「よっ!御堂筋。偶然見かけて…」
「“君”つけろって言うてるやろ…!」
「す、すまん。御堂筋…君…」
な、なんだ……翔君はいきなり男(いしがきくんって言うのかな?)の頬をむぎゅっと強く掴んで自分の呼び名を君付けで訂正させただと…?
そんな姿を見て立場的に翔君は石垣君より上って事なのかな?たしかに翔君はムカつく発言が多いけど、大人しい印象だから人の上に立って強く出るなんてって意外だなって思った
「まぁ、とりあえず。偶然見かけて話そう思うて来たんやけど……この子は知り合いか?」
頬を解放された石垣君は気を取り直して、そう翔君に聞いて俺を見た
う〜ん。知り合いっちゃ知り合いだけどこれには深〜いわけが。ねっ?って言う様に翔君を見ると「まぁ、そんなとこや……」って答える
「あっ!もしかして…彼女だったりするん?」
「ちゃうわ!」
「違う!!」
知り合いって聞いておきながら、やっぱり彼女なのか?って思って聞き直した石垣君に即答で否定した俺達。この世界に来た時にはおばさんにもそう聞かれたんだけど…そう見えるのかな?悪いけど無いわ〜〜!
内心でも否定し続けていると、翔君は怒りながらまた石垣君の頬を強く掴む
「僕にはそんなんくだらん物なんか必要無いんやってのわかっとるやろ?」
「しゅ、しゅまん…」
「あと、これの事を他のザク共に話したら、明日からの練習のメニュー増やすで?」
最後に脅されたように言われた石垣君は必死に頷くと数秒後に離してもらえた
二度もやられて大変だな…少しやり過ぎじゃないか?って翔君を見ると「さっさと戻るで」って行ってしまう。って、おいおい良いのか?
「あ、じゃあこれで…また会えれば」
「はい。俺こそ呼び止めてすまんかった。またな」
翔君にやられた事は無かったかの様に爽やかな笑顔を向けてくれた石垣君。なんか申し訳ない気持ちで軽く礼をして翔君の元に駆け寄って話す
「なかなか良い人じゃないか〜もっと大事に接しないと可哀想だって思わないか?」
「なんやお前。僕や石垣君について何がわかんの?」
「詳しくはわからないけど……友達じゃないのか?」
「友達?プップププッ…キモッ!友達とかキモいわ!」
「え?」
突然いつもの様に口に手を当てて笑い始めたと思ったら、目は馬鹿にしたように細めていなく、大きくて丸い目のまま…まるで本気で気持ち悪いものを見ているかのような様子だった
「さっき聞いとったやろ?僕には恋人って言うくだらん物はいらんって。友達もそうや。尚更いらん」
「えっ……じゃあ友達じゃないとしたら、一体どんな関係?」
「お前には関係ないやろ」
話す必要はないって言うように教えてくれない彼に「えーいいじゃん。教えてくれよ〜」って言おうとしたら、おばさん達と合流して会計へ行く事になり結局その事に関してはわからないまま話は終わる
その間に翔君は本当に謎が多いなって思いながら、友達とかいらないってのは本心なのか疑問に思った
「(石垣君が良い人だから嫉妬してんのかな?もしあれが本心だったら、まるで……)」
この時俺は、とある昔の事を少し思い出してしまったけど、まだそう決まったわけじゃないから決めつけは良くないっていらない思考を振り払う
「(翔君と話せば……わかるかな?)」
なんだか変に気になった俺は確かめれるなら、そうしたいって思った