戻れる方法模索



夕陽は沈んで周りが暗い夜になった時に俺と翔君は外に出た

おばさん達には翔君の練習を見について行くと言う事で納得してもらい、立体起動を隠した大きな袋はロード整備の道具入れとして通ったから怪しまれずに出る事が出来て、バレないかドキドキしていた心がようやく一息ついて安心する

そしてに案内された場所は……遊具と呼ばれる変わった形の大きな置物が何個かと鉄と木で出来たブランコのある……“公園”と言う所だ

たしかにここは夜には誰もいなく、周りに木が沢山生えているから立体起動を使うには良さそうな場所だな



「ここか…じゃあ、さっそくワイヤーが出るか試すから見てろよ…調査兵の俺の姿を!」

「もう何でもええから、早ようしてや…」



そう翔君に言うと、彼はさっさとしろって言って全く興味を持っていない様子だ……フッいいだろう。きっと立体起動を使ったら驚いて見直すと思った俺はワイヤーの発射スイッチを押してみる

すると、シュッ!と勢いよくワイヤーが出て、狙っていた木に刺さった!



「…!」

「(やった!やっぱ不具合は巨人の血が奥で固まって詰まっていたのが原因だったみたいだな)」



次にガスを噴射させて体が浮いた瞬間に立体起動でワイヤーを辿って、刺している木に飛び移る

その時の翔君は立体起動の使い方を実際見て驚いていている様子だったから、俺は予想していた通りだって少し得意気になっていると……

飛び移って足をついた木の枝が細くてバキッ!っと音が響いたと思ったら、体はそのまますぐに地面に落ちてしまった!



「い゛っだぁーーー!!」

「ププププッ…それが調査兵としての姿?随分無様やなぁ〜」



幸いそんなに高い所から落ちたわけじゃないから尻を強打したくらいで他は何ともない

しかし、せっかく良い所を見せたかったのに反対に失態を晒してしまい、格好がつかなくなった



「う゛ぅ……巨大樹と勘違いしてしまって、どの枝でも折れないって思っていた……」

「?……せやけど、お前その巨大樹から落っこちてここに来たんとちゃう?」

「あ、そう言えばそうだった。だけどあれは…」

「なんや。つまりお前の体重が重かったんとちゃう?ププププッ!背は低いのに体重は以外とあるんやな…豚みたいや」

「ぶ、豚だと!?」



巨大樹から落ちたのは、その時の枝がたまたま腐っていて折れやすかったからだって言おうとしたら、俺の体重が重かったからでは?って勘違いされてしまった

挙げ句に豚呼ばわりして笑って馬鹿にする翔君に俺は怒る



「豚でもねぇし体重はそんなに重くもねぇよ!巨大樹から落ちたのは、その時の枝がたまたま…」

「わかったから、さっさと試したい事やらんかい豚兵士。ププッ!」

「豚兵士だと…てめぇ!!」



頭にきた俺は翔君に掴みかかろうとしたら、彼は異様な音を立てて体を曲げて俺の手をかわした



「(何!?俺から逃げられただと…!?)」




自慢じゃないが俺の対人戦の成績はそれなりに良く、相手に掴みかかる速さはすごいと言われている

そしてふざけ合いだけど、生意気な後輩何人かに掴みかかってそのまま背負い投げとかした事あるけど誰もかわした奴なんていなかった……俺は初めて避けられた驚きで、すっかり怒りが無くなって唖然としていると翔君は変わらず俺を馬鹿にして笑っている



「さっさとしぃ。そのまま元の世界に帰ってくれるんやったら助かるけど、失敗して結局帰られんってなったら、また来た道戻らなあかんから」

「わ…わかってる」



なんか変にモヤッとする気持ちが残っているような気がするけど、気を取り直して丈夫そうな木に飛び移ってワイヤーは刺したまま飛び降りてみた


その結果……

















―――――――――







「帰れないやないか」

「……そうだな」



あれから何回もやり方を少しずつ変えてやってみたけど、結果は……



…元の世界に帰れません!



「なんでだ…本当に何が原因なんだよ…!」

「日頃の行いが悪いんとちゃう?」

「ええ〜?そんな事が…」

「無いんと言い切れる?」

「そう言われれば……うん。とは言えないな」

「せやろ?天罰やとしたら心入れ替えて暮らしてれば、いずれ戻れるんやない?」

「そうだろうか…?」

「まず手始めに人間やめて豚になればええと思う」

「そうか…なら今日からさっそく……って、なるかいぃぃぃ!!」



危うく翔君の口車に乗せられて豚になる宣言をするところだった!ったく、もうなんて奴だ!まだ豚設定を続けているとは…!



「そんなので元の世界に戻れるとしても、俺がやるわけねぇだろ!この馬鹿野郎が!!」

「すぐに暴力するんは頭の悪い奴がする事やで〜」



再び掴みかかろうとしても、また翔君はひょいっとかわしながら俺を馬鹿にする

クソ……何だよこいつは!再びかわされると、それに対しても怒りが募ってきそう

そう思っていると、翔君は停めてあったロードを持って「ほな、行くでぇ」って久屋家に帰ろうと促してきた

……そうだな。元の世界に戻れないからには、いつまでもここにいても埒が明かない

さっさと行く翔君の後ろを小走りでついて行ってやっぱりまだ久屋家にお邪魔になってまた別の方法を探そうって思い、二人並んで帰ると翔君は突然ある事を言い出す



「そういやぁ。前から思っていたんやけど、その喋り方何なん?」

「えっ?喋り方って…?」



別に翔君達みたいに方言は使っていないのに、何故喋り方について言ってきたのか?って思っていると続けて言う



「堅っ苦しい言い方しとるけど、ほんまはもっと頭のネジが吹っ飛んだような喋り方なんちゃう?」

「っ!?……き、気付いていたの……か?」

「気付くも何も、時々素っぽい言い方が混じってたで」



驚いた…翔君の言う通り、俺のこの「〜ではないか?」とかの喋り方は生まれつきのものではなく、後から始めたものだ



「……これはさ。後輩とか部下を引っ張る立場になった時に出来た喋り方なの。せめて態度だけでも毅然として凛とした上の人って思われたくて」



バレてしまったなら仕方ないと思って、俺はすごく仲の良い人にしかしない喋り方……素の喋り方で翔君にそう話す



「なんや。そんな下らん理由で?キモッ!キミィは元々頭の悪い奴やから、喋り方変えた所で根本的なもんは変わらんで!」

「…まぁ、たしかにそうだけどさ」

「ファ〜〜…まだわからんの?ここは君が居た世界ちゃうから、そこまでする必要無いんやない?」

「っ!」



そうか……そう言えば、ここは知っている人はいないだけじゃなくて、俺にとっての当たり前の文化は無い

だから翔君の言う通りやる必要は無いのに今、気付いた

つい、俺が“遠ざけているものから見られないように目立たないように”ってやる癖がついていたから、ここまでしてしまったんだ…って、そこまで頭が回らなかった自分は本当に馬鹿だと思った



「そうだよね……たしかにする必要は無いね!」

「せやから馬鹿丸出の喋り方でええんとちゃう?堅っ苦しいのは性格と合ってなくて、かなりキモかったで」

「キ、キモかった…?」

「おん。キモすぎておかしかったわ!そうなれば君の部下と後輩が可哀相やな」

「ええっ!そこまで言う!?」

「上に立つもんがなってへんと下の奴らも上手く動かん。どんな風に何をやってきたかはわからんけど、君の下にいる奴らには同情するわ」

「な・ん・だ・と・て・め・ぇ〜?俺も前から思っていたんだけど、テメェはガキのくせに生意気だな!!」



せっかく良い感じに俺に良い事言ってくれた翔君にお礼を言おうと思っていたのに、俺を馬鹿呼ばわりしたり部下達を可哀相って言い出したのを聞いて、何を言ってんだ!って怒ろうとした



「ちなみに、その男っぽい言い方も後付けで出来たん?」

「いや、これは元からだけど……」

「だろうと思ったわ。そっちの方は性格が出ていて、いかにも自分はガサツですって言うてるもんやからな。ププププッ!」



その言葉で今度こそ翔君を掴んでやろうとロードごと道の壁に押し付けてやろうとタックルしたら、また避けられてしまって俺一人が壁にぶつかる



「いっだあああ!!?」

「プププッ!何一人で馬鹿やっとるの。ユーリィちゃんほんまキモいわ〜!僕やっぱ一緒に居たくないから先に行くで」



なんて馬鹿にして笑った翔君はロードに乗って先に行ってしまう!



「ああっ!?待てよこの野郎っ!!」



俺は立体起動を外して持って慌てて追いかける

くっそ〜〜!結局、俺が思っていた事と違って失敗見せたりして結局いつものように馬鹿にされた

いつか見返してやるからな……!なんて俺よりも年下の子にムキになっている時点で負けていると思うけど…なんとかカッコいい一面は見せたいな



……って、あれ?そう言えば翔君からの呼び名と二人称が「ユーリィちゃん」と「君」に変わっていたような?それはつまり仲良くなった証拠としてかな?そうだとしたらそれは少し嬉しいような



でも、まだ彼についてはわからない俺は、とりあえず元の世界に帰れる別の方法を模索しながら帰るまでに翔君に俺のカッコいいとこ見せたいって思って、今は翔君を追いかけて久屋家に帰るのに力を入れた