「うぐ……まさかこんなに大変だったなんて……」
おばさんから使わなくなった自転車を借りた俺は早速乗ってみる
そしたら………難しくて全然進めなかった!
乗ってる人を見れば簡単に出来そうだなぁって思っていたけど、実際は進む時にぐっとペダルを早く回したりバランス取ったりしないといけなくて何度か転ぶ
この時にもし翔君のロードを借りてこんな風になったら半殺しにされてるだろうなぁ〜ハハハ…
そんな俺は三日間の練習で何とか乗れるようになって、達成感と感動で嬉しくてそのまま近くまで自転車で走ってみる
「すごいなぁ〜!馬みたいにぐらぐらしなくて風になったみたいだ!」
まるで立体起動を使って移動する時みたいに真っ直ぐで、風を直に受けるから自分も風になった気分になれる
馬は自転車と違って足を使わないで乗ってるだけでいいけど、何せ生き物だからぐらぐら揺れるし股擦れとかたまにして痛い事もあるんだよなぁ
ま、でも可愛い相棒でもあるから許しちゃうけどね
「(そう言えば調査兵団の皆もだけど、俺の馬はどうしているんだろう?)」
突然いなくなってしまったから、誰かが一旦引いて連れて帰らなければならない
俺の馬はそんなに性格悪くないと思うけど、誰かに迷惑かけてないだろうか?って心配しながら走ってると、車道を挟んだ向こう側の道路で紫と白の妙な格好の集団が自転車に乗ってるのを見つける
「(なんだ?あれは……)」
よく見ると人数は六人で自転車はロードだった!もしかしてあれは……!
「(ひょっとして翔君かな?)」
俺はそうかもしれないって思って、あの集団に追い付いて合流しようとした
全速力で走れば追い付いくだろうって思いっきり漕いでいるんだけど……追い付けない。それどころか、集団はどんどん加速して距離が大きくなる
やっぱスピード勝負するための自転車は違うなぁって感心しながら諦めずに追いかけると、集団が赤信号で止まっていた。よし、これで一気に追い付けるぞ!そう希望を持った俺は集団がまだ止まっているのを見ながらスピードを速める!
その時、大きな衝撃が全身に来て、自転車から体が飛び出してしまい……ものすごい音を立てながら俺と自転車は地面に転んだ
一瞬、何が起こったのかわからなかったけど、痛みに耐えながら地面から起き上がってみると、俺が乗っていた自転車はカラカラと後ろの車輪が軽く回っている状態で地面に倒れていた
その側に普通自転車とかロードとは違う大きな二輪車が横に倒れている……つまり、俺は余所見をしながら走っていた時にこの二輪車にぶつかって転んでしまったんだと理解した
ヤ、ヤバい……おばさんから借りた自転車もだけど、この二輪車も倒してしまったなんて!どこか壊れていないか確認しようとした時に、近くの店から出てきた人達が「あーー!!」って大声を上げたのに驚いてそっちを向くと……
黒い色の生地に金色とピンクのド派手な模様の書かれたダボダボの上下の服に、履き古した変な柄のサンダルに金髪や赤髪や前髪だけ白くして、ピアスを顔中に付けた男達三人がいた!
うわっ……こいつはテレビで見た不良とかヤンキーという奴か?いかにも悪ぶってますオーラの三人は俺に近付いて話しかける
「おいおいお嬢ちゃん。これ君がやったんかぁ?壊れたらどないしてくれんや!」
「や……そ、それは確認してから……」
いきなり大声で怒鳴るように言われて少しビビったけど、酒場にいるただのゴロツキみたいだなと判断した俺はすぐに文句言うなら壊れてるか確認してから言えって言い返す
そしたら、金髪の男がすぐに鍵を二輪車に刺して回しはじめた
……ああ、そうか。これはバイクと言う車と同じ道路を走らなければならない二輪車か。そう変な所で納得していると、金髪がすぐに振り向いてきてまた俺に言う
「おいっ!エンジンかからんけど!?」
「え、エンジン?」
悪いけどバイクはどんな状態が良いのか悪いのかわからないだけではなく、エンジンとやらがどんな風になるのかも俺にとっては不明
だから、とりあえずこいつらに壊した事は謝る
「すまない。壊してしまったのは確かにこちらの責任だ」
「ああ?なんやその言い方……俺らをナメとんのか?」
「いや、ちゃんと謝ってるんだが…」
「どこの中学のガキか知らんけど、一度絞めねぇとわからんようだな!」
ダメだ。こいつら完全に怒りがMAX状態で話を聞いてくれない。本来なら俺をガキ呼ばわりしたのにキレるところだけど、今回はそこを利用して返り討ちにしてやろう
「どこぞのガキにムキになって力で解決する。か……どっちの罪が重くなるのかは明白だな」
「な…なんやてっ!?」
「ガキが調子こいてんじゃねーぞ!」
「どっちが悪くなるなんて、そんなん関係あらへんわ!!」
更に怒りで頭に血が上った不良達の中から後ろにいた前髪だけ白くしている男が、ところ構わず殴ろうと拳を後ろに引いて、素早く俺の顔を目掛けてきた!
だが…俺には既にわかっていたから、その殴ろうとした腕を掴んで静止させる
「「「!?」」」
不良達はそれに驚いて固まった
そして殴ろうとした男は力を込めて拳を進めようとしたけど、ビクともしなくて「な、何やお前!!」って怖がっているような様子のひっくり返った震え声で怒鳴った
「そうか……暴力しても関係無いんだな。だったら……!!」
俺は掴んだ腕をそのまま自分に引寄せ、男の顔が目の前に来たときに空いている方の手で拳を作り、男の顎を狙って上に殴り上げる!
見事顎に俺の拳が命中した男は「うぐぅっ!!」って叫びにならない声を出して地面に倒れ込んだ
「ひっ…!な、何や、あいつ…!」
「この野郎……やりやがったな!?」
「や、やめようや!あいつただのガキやないで!!」
他の二人はそれぞれ、俺に仕返ししようか止めようかで揉めている
今のうちに逃げないなら、二人まとめて倒してやろう……そう思った時にいきなり二人が俺の後ろを見て「う、うわああああああ!!?」って怖いものを見たような表情で絶叫する
「怪物レーサーや!!」
「目ぇ合わしたら三日後に死ぬーー!!」
なんて意味不明な事を言って金髪の不良はバイクに乗って走って逃げて、赤髪の不良は俺が倒した前髪だけ白い不良を起こして二人で走って逃げ出す
本当に何なんだ……
ん?あの金髪野郎、さっきバイク壊れたとか言っていたけど、乗って逃げたって事は……
「嘘だったんだな……あんの野郎!!」
「待ちぃや」
「え…?」
不良達を追いかけようとした時、聞き慣れた声がしてそっちを向くと…
さっき追いかけていた集団と同じ紫とピンクと白の色の妙な格好した、見慣れた背の高い男の子が見覚えのあるロードに乗って俺の近くで止まる
「君、何しとんのや」
「翔く〜〜ん!」
そう、やっぱり集団は翔君達で、彼は俺の所に来てくれた!なんだか嬉しくなって翔君に抱き付こうとしたら「近付くんやない」って左手で押さえられて止められた
「どうしたの?なんでここに?」
「それはこっちのセリフや……今行った奴らは何なんや」
それを聞かれた俺は翔君達を追いかけていたのは内緒にして、ただ余所見して自転車に乗っていたら不良に絡まれたって話す
「こんの馬鹿女!何面倒起こしてんのや!」
「ごめん……でも、あいつらが……」
「喧嘩ふっかけられたからって、倍にして返す女がどこにおるん!?」
「……ごめんなさい」
翔君は俺が心配って言うより、久屋家に迷惑がいかないか心配しているように怒っているんだけど、その通りだね。居候させてもらっている家に迷惑かけたら追い出されるのは当然だから
で、翔君にしばらくここら辺は通らない事と二度と喧嘩を起こさないって約束したら、この事は久屋家には話さないって言ってとりあえず許してくれた
「ほな。僕は行くから、君はすぐに帰るんやで」
そう言った翔君はさっさとロードに乗って行く……その姿を見て釘付けになる
すごい……家での練習しか見ていなかったから、わからなかったけど、走るとあんなに速いんだ!それになんだかカッコイイな……!
遠くに速く行く翔君を見ながら、やっぱ翔君の部活している様子を見たくなる欲が高まる俺だった