俺がこの世界に来てから一ヶ月が経とうとする。そんな中で元の世界に帰る方法を探しながらある事も探していた。それは…
「このコンビニの店員ってのは何をするんだ?」
「う〜ん、レジ打ち、商品の陳列、レジで売っている食品を作る……とかやない?」
「難しそうだな……あ、じゃあ、これは……」
そう。この世界での就職先
いつ帰られるかわからない人間が良い人達にお世話になりっぱなしじゃ駄目だ。せめて生活費を稼がないとな……って思いながら前から探しているんだけど、なかなか良い所が見つからない
面接とやらに行けた所があったけど、どれも資格は無いのと働いた経験は無いとかで結局断られる
そして、今日は土曜日で俺の使わせてもらっている部屋でユキちゃんと探してるんだけど、やっぱり良さそうな所は見つからない
「資格もいらなくて働くのが初心者でも大丈夫な所ってどこなんだろ〜?」
「ここら辺は観光地やから、経験者やないと駄目なとこばっかやしな〜」
二人でう〜〜んと唸りながら悩んでいると、買い物から帰ってきたおばさんが俺を呼びながら入ってきた
「ユーリィちゃん!ええバイト先見つけたで!」
「えっ!?何処ですか?」
嬉しそうにそう話してきたおばさんに、何処なのか場所を聞くと……それは驚く所だった
「……ええっ!?そこって募集してましたっけ?」
「たまたま聞いた話なんやけど、そこで短期間やけど募集しとるって!確かめに聞いてみたら?」
「はい、じゃあ…」
俺は半信半疑でおばさんの言った場所に電話して、募集しているのか聞いてみた
すると、やっぱり言ったように募集している事がわかって、そのまま詳しい話がしたいから来てくれと言われ、いきなりの事で自分でも少し動揺しながら電話を切る
「どうやった?」
「おばさんの言った通り募集してました!それで……もし良ければ今日詳しい話を聞きに来てくれませんか?って言われて……」
「ユーリィ姉ちゃんよかったやん!」
「ユキ、まだ決まったわけやないから、安心するのは早いで」
「そっか、じゃあ……頑張ってな!受かるように祈ってるで!」
「うん。ありがとう!」
俺はすぐにおばさんから借りた黒いスカートスーツに着替えて、就職希望先に向かった
「あの、お電話させて頂きましたユーリィです…」
「ああ、貴女が。どうぞ」
就職希望先に着いた俺は入口からそう名乗ると、電話の相手だった人(おそらく責任者かな?)が笑顔で迎えてくれて、その後に驚いて聞いてきた
「もしかして……外国人さんですか?」
「はい」
「おお〜!スムーズな日本語ですね!」
「ありがとうございます」
ここまで来るともう自分の設定がだいたい固まってきた
俺はドイツ生まれのちょっと良い所出身で、特殊科目のある学校を卒業した後に日本へ来る。日本語はその特殊な学校で学び、喋るのは大得意だけど文字にするのが苦手……ってやつだ
なんか我ながらバレる危険性が高そうな設定かも
そう考え苦笑していると、責任者が俺を建物の中を一通り紹介した後に就職希望先である建物の一室に案内される。そこは……本が沢山並ぶ場所。つまり図書室だ
「こちらで本の貸し借りを管理して、本棚の整理整頓、まだ返却されていない本は借りている人を調べて返却してもらうように言ったり、新しい本の発注等もお願いしています」
「なるほど。にしても沢山ありますね……歴史書もありますか?」
「はい。こちらに」
歴史書は何処にあるか聞いてみると、奥にある本棚を指した。すごい……あの本棚にある全部が歴史書なんだ……!
俺の世界では歴史書はあっても薄っぺらくて、ウォール・シーナにある学校や訓練兵の座学の時に渡される教科書並みにある程度の事しか大まかに書かれていない
それに比べてこの世界に……って言うより日本にはこんなに大きくて分厚い歴史書があるなんて!大きな本と言えば海とかが書かれている禁書を思い出して、読んでみたいなぁってわくわく感が出てきた
「日本についての勉強は好きなんですか?」
「はい!それは勿論!」
「ハッハッハ。目が輝いてますな。ここの京都は日本古来の文化が残る都とも言われていますから、ここに来たと言う事は勉強熱心なんですね」
「勉強熱心と言うか……興味があるものには、のめり込んでしまいそうになるだけで……」
そう言いながらのめり込む姿と言えば、仲良い上司で巨人の研究や実験を始めると風呂をそっちのけでやる人いるな
今の俺もその上司と一緒かな?って思うとなんだか、おかしくて笑えてくる。そんな俺に責任者が言う
「どうでしょう。働くついでに、苦手な文章を書く練習や漢字を覚えたり、そして歴史書を読んだりもして勉強しませんか?」
「はい。そうしたいですね!……って、え!、それって」
「はい。貴女をここの管理職に採用します」
「っ!ありがとうございます……!!」
なんと、たった会話をしただけで、就職が決まった!短期間だけだけど、金を稼ぎながら見たい本が読めるなんておいしすぎる!
俺は責任者に何回もお礼を言うと
「いえいえ、女神みたいな美人の貴女が居てくれるなら目の保養になりますので」
「え?」
「ハッハッハ。すみません冗談ですよ。美人なのは本当ですけど、採用したのはその学びたい姿勢を見て決めたんです」
「そ、そうですか……」
なんて冗談を言ってきて少し固まったけど、俺も笑って強張った顔を戻した。女神か……それは俺じゃなくて別の子に似合う言葉なのにな
そうと決まれば、すぐに責任者が普段いる部屋に行って契約書をもらって必要事項と出勤日を確認し終わると、よろしくお願いしますとお互いに言って部屋から出た
「(……よし!何はともあれ、決まったぞ!)」
俺はその場でガッツポーズをして、早速おばさんとユキちゃんに決まった事を報告しに早くに帰ろうとした
「………ユーリィちゃん?」
「!?」
帰ろうとした矢先に、なんと翔君と出くわした!
「はぁ?え、なんで君がここにぃ?」
「あちゃ〜……バレてしまったなら仕方ない。実は俺、ここの図書室管理の仕事に採用されたんだ!」
「ファ!!?な、なんやて!?」
翔君がひどく驚くのも無理はない。何故なら
………この建物と言うのは京都伏見高校で、俺は翔君の高校の図書室管理に採用されたからだ!
「ファーー!?ありえへん!キモッ!キモッ!キモーー!!」
「いやいや、さっきここの責任者さんから、よろしくお願いしますって言われてきたし…」
「嫌やわー!!なんで高校までこんなキモい女がついて来るんや!!最悪すぎて吐きそうや〜!!」
「そこまで言うなよ!もう決まった事なんだから!……安心しろ。お前の学校生活に(小声:多分)干渉しない」
「今、多分って言うたやろ!?」
「さぁね〜」
「小さい声で多分言うた!!」
「あーもー!うっせーな!決まった事に対してガタガタ言ってんじゃねーよ!いつまでも居候させてもらって肩身狭い俺の立場も考えろ!」
「そこまで肩身狭いなら、出ていけばええやろ!」
「うぐっ!それを言われると元も子も無いな〜……」
なんて、翔君と言い争いしながら玄関に行き「とにかく明日から学校でもよろしくね!」って言って、さっさと帰る
うん。決まったものは仕方ないさー!ハハハッ