生活費と彼の心配




職員室で先生方に挨拶をして、この前の面接で責任者って言っていた人が校長と呼ばれているのを改めて確認して、鍵を渡されて図書室に行く

そして、早速の仕事として本棚にある本の整理整頓

番号順に並んでいるかとか、本来別の棚にあるべき本が混じっていないかチェックしながら。だけどその時に別に思った事があった




「(あまり読まれていない本がすごく埃っぽいな…)」




そう思って手で擦ると、さっと埃が周りに飛んだのを見て、思わず「うわ〜…」って言ってしまう




「(もう。本棚だけじゃなくて、本一冊一冊もちゃんと拭いたりしてほしいな……って、あれ?俺はあまり掃除に対してここまで熱が無かったはずなのに……兵長の影響か)」




随分あの人から埃の取り方とかみっちり教えられたからね。面倒とか言いつつなんだか感染されたみたいで少し悔しい。なんだ朝から悔しい思いするなんて嫌だな……とりあえず自分なりに頑張りますか
















――――――――――









本一冊一冊を拭くのは当たり前ながら、すごく時間のかかる作業。昼頃になったのに気付いて拭き終わったのとまだ終わってないのを見ると、まだまだかかるな……って疲れが出てしまう

休憩と昼飯を食べようとした時、ふと、視線を感じて図書室の入口辺りを見ると………なんとそこには大勢の高校生達が俺を見ていた!




「(え?え?え?な、何々?俺何かした?)」




思わず何かしてはいけない事を知らないでしていたか?って周りを見たりしたけど、掃除以外特に変わった事はしていない。すると、大勢いる中の前にいた男子高校生が「ちわっす…」って挨拶をしてきた




「あ、ド…ドモ…」




そうガチガチに固まった言い方で挨拶に返すと「やったぁ!通じたで!」って周りと楽しそうに騒いだ

もう本当に何なんだ……人を見せ物として笑っているなら去ってもらいたい。そう思っていた時に、大勢のギャラリーを掻き分けて入ってきた人達がいる




「お!やっぱりか!」

「あ…!」




それは翔君を引っ張ってきた石垣君だった。その様子を見た大勢は驚いている中、石垣君は小声で俺に話しかける




「昼飯食べるんやったら、また部室に来ませんか?」

「いいの?」




確認をすると、はいって笑顔で答えてくれた

助かった〜この大勢が見ている中で飯は食べたくなかったんだよね!石垣君に感謝すると二人は先に行くって図書室から出て行く

相変わらず大勢は入口前で何かを話している。俺も荷物を持って素早く掻き分けて図書室を出て行って、なるべく目立たない通路を通って翔君達の部室に向かった


























部室に行くと、既に石垣君と翔君の他にも部活のメンツが来ていて揃っていた

話を聞くと午前の間休みに校内中に「図書室に管理する人が外国人で金髪美人の女性だった」って噂が立ったらしく、昼休みに見に行ったら俺だったって言う

なるほど、それであのギャラリーかって納得した点があったけど疑問が一つ




「でも、なんであの時に石垣君は“やっぱり”って言ったの?」

「ああ。その噂が本当か確かめに行った時、御堂筋が人だかりの後ろで心配そうに見て中に入りたがっている様子やったから、そう言えば噂の特徴はユーリィさんみたいやなって気付いたんや。で、御堂筋連れて入ったら確信と言うわけ……」

「石垣クゥン?何勝手にベラベラ喋ってんの?後、君付けしぃ」

「す、すまん……」




またお決まりの頬掴みをされている石垣君。でも彼の言っているのが本当だとしたら…




「もしかして、翔君。俺が気になって来てくれたの?」

「ファー!?そんなわけないわ!キモッ!キモッ!何キモい勘違いしとんの!!……問題行動起こしてへんか見に行ったんや」

「いや、だからそれが心配って言うんや……」

「黙っててや〜井原クゥン?僕はユーリィちゃんなんてどうでもええんや。ただ、僕に直接関わるような迷惑起こしてるかが心配なだけ」

「(照れ隠しか…?)」

「辻クゥン?何かいらん事考えたやろ?」

「っ!?……いや、してへんよ」




俺が言ったのに対して否定する翔君にツッコミ(?)を入れる井原君と辻君

その度に体をぐにゃっと曲げてぎょろっとした大きくて黒い丸い目で睨む翔君を見て面白いなぁって見る




「だいたい、石垣君は百歩譲って居てええとして、なんで他のザク共も居るんや」

「いや、石垣さんからメールで部室に集合って来たもんで……」

「い〜しが〜きクゥ〜ン!?」

「んぐぅっ!」




水田君から何で他のメンツが来たのか理由を話すと、石垣君からの召集メールで来たことがわかり、翔君はまた石垣君の頬を掴む




「まぁ、良いじゃないか。こうして親睦を深めるのも大切だ」

「ユーリィさんに賛成〜」

「キモッ!なら、僕は行くで」




やっぱりこういう仲間同士で集まって話すのが嫌いな翔君だから、親睦を深めようって言ったら嫌そうな顔をして部室から出て行こうとする

それを俺が引き留めて「そんなに嫌か?」って聞くと、舌を出して虫とかを見るような目をして言った




「そんな仲良しするんは僕にとって無意味で不要もんって言うたやろ?するんやったら君らで勝手にやりぃ」

「でも、今校内に戻ったら翔君は俺についての質問責めで大勢に囲まれるんじゃない?」




そう。さっき話した後にさっさと図書室を出たから、きっと校内にいる生徒達は少なくとも俺が石垣君と翔君の知り合いかもしれないって思って、戻れば「一体どういう関係?」なんて聞かれるのは目に見えている

それを聞いた翔君は黙ってしまったけど「たしかにそうかもな」って言うようにバツが悪そうな表情になった




「ほうか〜。御堂筋が居らんのは寂しいんやけど、じゃあ居らんのを良いことにユーリィさんから御堂筋について色々聞くで?」

「はぁ?キモッ!石垣君、そんなん性格悪かったんやね?最低や……」




勿論、この石垣君の言葉は冗談で、翔君もあまり本気にしてなくて「はいはい」って流すように言っている

だけど、それでも翔君はなかなか此処にいるって言ってくれないから、最後の押しで俺はお願いする




「ねぇお願い。俺は翔君がいないと安心出来ないんだ」




そうお願いすると、翔君は面倒そうに頬を掻いて俺達に言う




「……ほんまキモいわ、ユーリィちゃん。しゃあないから此処に居るけど、勘違いするんやないで。あくまで居るだけで君らとは話しせぇへんから」

「はいはい」

「せやけど、余計な事言うたらザク共には練習量を増やして、ユーリィちゃんには家賃制つけるで」

「わかったから、もう食おうよ?」




一々勘違いするなとか言って……素直じゃないなぁって思いながら、この前みたいに楽しく昼休みを過ごした