帰宅して夕飯と風呂を済ませた俺は翔君の部屋に行き、彼の布団の上に横になってゆっくりとくつろいでいた
「……いつからここは、キミの部屋になったんやろうな?」
「え。この前、ここは好きに使っていいよって言ったじゃん……俺の夢で」
そうふざけて答えると、翔君はため息吐いて「邪魔や」って言って俺を布団から引きずり下ろした
「なんだよ、ケチ〜」
「ケチやのうて、当たり前の事をしたまでや。自分の布団にキモいもん乗ってたら嫌やろ?」
「キモいもんが乗っていたらって……それだとまるで俺が吐き気がするくらいキモい妖怪って言ってるみたいじゃん」
「そう言ったつもりやけど?」
「な・ん・だ・と〜?」
引きずり下ろされた俺は、机で勉強している翔君のところに行き、近寄って肩に手を回す
「俺みたいなイケメン捕まえてキモい妖怪みたいだと?失礼しちゃうな〜」
「ハァ?どこがイケメンなん?キミは視力まで馬鹿なんちゃう?」
またも失礼発言を聞いて、次は頬を引っ張ってやろうかな〜って手を伸ばした所で「やめぃや。ほんま邪魔や!」って直前で気づかれて払い除けられてしまう
「特に用無いんやったら出てってくれへん?」
「ん〜………あ、そうだ。聞きたい事あったんだ」
「なんや」
「翔君ってさ。明日から何か予定ある?」
そう、昼休みに話していたのを思い出して、翔君に連休はどう過ごすのか聞いてみた
「予定?あるで」
「えっ!?何するの?」
「練習」
「あ……そう……」
てっきり翔君にしては珍しい休日らしい事をするのかな?って期待して聞いたら……まぁ、予想通りっちゃ予想通りだけど
「キミはどうせアレやろ。石垣君達とどっかに行くんやないの?」
「え?なんでそれを」
「部活の帰り際にたまたま耳に入った話や」
あのザク共、明日の事ばっかで浮かれはってて……って思い出して呆れている彼。知っているなら誘ってみようかな?
「ねぇ、だったら……」
「僕は行かんで」
「ええっ!?いや、だから前にもこんな事あったけど、俺まだ何も言ってないよ……?」
「だいたい話の流れでわかる言うたやろ」
あぅ……なんか、とっとと話を終わらせるつもりだ
「行くんやったら勝手に行ったらええんやないの?」
「……翔君はそれでいいの?」
それを言ったら、翔君は机に向かっていた体をこっちに向けて、目を細めて鬱陶しそうに俺を見る
「ハァ?それでええか?って何や。キミに一体僕の何がわかるん?アレやろ、僕が一人で可哀想思うて同情して誘ったんやろ?そういうのほんまキモくて不要や!」
ここまで思いっきり否定するなんて……まあ、たしかに俺は翔君は一人で過ごすのはつまらなくないかな?っては思ったけど……べつに可哀想までとは思っていない
どっちにしろ、また機嫌悪くさせてしまったみたいで「わかったら、僕には構わんでええ」って言うと、さっさと机に向き直って俺を無視して勉強を再開させる
あう。参ったな……このままだとまた会話の無い日が続くかもって思った俺は、なんとか同情とかじゃない気持ちであることを話そうと、どう言ったらいいのか考えた
「う〜ん、同情とかじゃなくて……少し勿体無いかな?って」
「………」
「俺の世界じゃ壁の外には巨人がいるし、壁の中は大丈夫かと思ったら窃盗とかゴロツキも増えて最近あんまり安全じゃないし、それに王や憲兵団に規制されている事が沢山あって自由が無いに等しいんだ……だから、自由に伸び伸びと過ごせるっていいなぁって。その中でやりたい事を好きなだけやるのは勿論良いことだけど、体験したこと無いのをやるのもいいんじゃないかな?」
黙ってばかりの翔君に勝手にべらべら喋る
伝わるとは思えないけど俺が思ってる自由に色々出来る特権として、食わず嫌いしないのもありなんじゃないのかな?ってのを。
「……ほんじゃあ聞くけど、キミがやった事無いもんって何や」
「え?」
机に向いたままの翔君から、いきなりそんな質問をされて驚いた
今は翔君にどう?って言う話だったから、まさか自分にそう振られるなんて思っていなくて、すぐには答えられなかった
「う、う〜ん。そうだね……国から規制されている事では空を飛ぶ事かな?噂でしか聞いた事無いけど、立体起動使わないで空を飛ぶために熱を利用した乗り物を作って試した人達がいたみたいで……」
けど、その人達は飛ぼうとした所を憲兵団に見つかって殺されたってのは言わずにここで話を終わらせると、翔君は聞いた方なのにつまらなかったのか無反応
……真面目に答えたんだけどな。う〜ん、もう少し簡単な分かり易いのにしたらいいかな?あ、そうだ。翔君と共通していそうな体験した事無いものを話せばわかってくれるかも。そうなれば……
「あ、後は………異性と付き合う!かな?」
「………恋愛?」
お、ようやく反応してくれた!
これなら翔君も同じく体験……いやこの場合は経験って言ったらいいかな?とにかく、した事ないだろうって思ったら、どうやら当たったみたいだ!
そう、俺は友達や仲間と楽しく過ごすばかりで異性と付き合った事は無い
友達で彼氏が途絶えない子いたりして、よくどんなデートをしたかとか話してくれたけど、だからと言って俺も彼氏がほしくなったって思ったこと無いな
「うん。周りでカップルがいても別に何とも思わなかったけど。もし、経験出来たらいいかなぁって今は思う」
本当は今も別に興味ないけど、こうして俺も自由で色々出来るならそうしたいって例えを翔君に伝えるために、思ってもいなかった事を話す
どうだろう?こうやって話したら翔君も休日は部活のメンツと遊ぶって気持ちになるかな?俺の話を聞いて黙っていた翔君は何かを考えているようだった
そして――
「ほうか………なら、僕と付き合ってみるん?」
…………………
………は?
「え、ええっ、や、あの、えっ、お、おい……い、今なんて!?」
「せやから、僕と付き合ってみるか言うてんねん」
「え……………えええええええ!!?」
まさかの告白に俺は思わず大声を上げて驚いてしまった
なっ、ななななななんで!?冗談で俺に惚れてるだろ?とか言ったけど、まさか本気にしちゃったのかな!?
……どうしよう!俺は特に好きなタイプとかは決まってないけど、妹と年の変わらない子と付き合って大丈夫なんだろうか…!?
「…なぁに本気にしとんの?キモッ」
「……え?」
「僕が言うてんのはぁ“試しに”付き合ってみるか?やで」
「えっ……た、試しに?」
「そうや。明日だけ付き合ってみて、どんなもんか互いに経験できたらええやないか?って事や」
彼が真面目な表情からまた呆れた表情になり、俺のリアクションに苦笑してるようにも見えた
な……そう言う事だったのか。はぁ〜驚いた。そうだよな、翔君が石垣達と仲良くする前に俺を好きになるなんて、ありえないな
そして“試しに”か……そうすれば翔君とも過ごせるし、これをきっかけに石垣達と仲良くする気が起きればいいなって考えた。だから俺の返事は……
「なるほど……いいよ。一日だけの恋人になろうか」
「……決まりやな」
すぐにOKをして、お互いに何かを企むように笑う顔を見せ合った
まるで敵同士が一時的に協戦する約束をしたように……って変な例えかな?
まぁそれは置いといて。さぁて、石垣達には断りの連絡をして翔君とデートプランとやらを立てますか