「ふぅ〜……お腹いっぱい。満足した?」
「ん〜……どうなんやろうな」
「おいおい。料理作ってって言ったのは翔君じゃないか。満足したかどうかだけでも聞きたいな」
「しゃーないなぁ……全体的に80点や」
「80点……?」
なんだそれは。つまり良いのか悪いのかわからない微妙なところだ
まぁでも押し返してきた卵焼き以外は完食してくれたから、良かったって事……だよね?
そう思っていると、テーブルから立った翔君がソファーの近くに行ってチラッと俺を見る
「ん?どうしたの?」
「ユーリィちゃん。ちっとこっちに来ぃ」
「ん。もう少ししてから行く〜」
台所で片付けをしていると、翔君にそう呼ばれて早めに終わらせて行く。すると翔君はソファーを指差して一言
「そこに座りぃ」
「座る……?」
何故、俺に座ってほしいのか理由を聞いたけど、それには答えずに座ってくれと言い続ける。本当に何なんだ…って疑問に思いながら言われたように座ると、いきなり座っている俺の膝に頭を置いて倒れ込むように横になった!
「えっ!?えええ!?あ、翔君?何があったんだ!?」
急に具合が悪くなって倒れたのかと思って、慌てて何があったか肩を揺らしながら聞く
「うっさいわぁ。そんな大声やなくても聞こえるで〜」
「え…?あ……?」
翔君は外側の横に向けていた顔を俺の方に向けて、だるそうに目を細めた目を付きでそう言うと、また横に向けて目を閉じた
なんだ…具合は悪くないのかって安心して、ふと冷静になって今の状態を考えてみる
ん……これってもしかして……
「(ひ、膝枕?これって膝枕か……!?)」
客観的に見てもその考えが一番有力だと思った俺は、なんだか顔が熱くなった……って、あれ?なんで翔君相手に顔が熱くなるんだろ?
まさか……いやいや、そんなわけない!
いつもは変な動きをして口を開けばムカつく発言しかしない奴が静かに目を閉じて横になっている姿にギャップを感じて、少し可愛いって思ってしまったからだ……!
こんな可愛い一面があったなんてって思ったけど、そう言えば恋人ごっこしているからその一連だと気づき、興味本意でやったのかって思い直した
「寝心地はどう?」
「まぁまぁ」
「え、そう?俺の膝は寝やすいって評判だぞ」
「誰からの評価や……」
「ん〜妹から」
「妹……キミ、妹おるの?」
あまり動かずに横になる翔君に妹からの評価の良い膝だから寝てもいい事を言うと、翔君は俺に妹がいるのを少し驚いているみたい
「あれ?話してなかったっけ。俺には翔君と同い年くらいの妹がいるぞ〜」
「……ふぅん」
「意外だと思った?」
「いや、こんな姉を持つ妹が気の毒やなぁって」
「な・ん・だ・と・?」
俺に妹がいるのを意外に思ったんじゃなくて、俺を姉に持つ妹に対して気の毒って…!なんて失礼な事を言うんだ!って軽く頭を殴ぐろうと思ったけど、ある疑問が思い浮かんでその手を止めて聞いてみた
「そう言えばさ……この家の中に不思議な棚があるよね」
「不思議な棚ぁ?」
「食べ物とか紙で出来た袋とか置いてて……あと、綺麗な女性が写った写真もあったな」
初めてこの家に来た時はリアルすぎる絵画だと思っていたら、それはカメラと呼ばれる機械を使って保存したい風景や人物等を写した写真だと後に学んだ
だけどその棚自体が何なのかは、わからなかった。だから聞いてみたんだけど……まぁ翔君の事だから他の人に聞けって言うだろうなぁって思っていると
「あの写真に写ってんのは……僕の母親や」
「え……」
翔君の母親?静かにそう言った言葉を聞いて驚いた。あの人が翔君のお母様……翔君は久屋家で暮らしていて、ご両親はどうしているんだろう?って考えた事があったけど……これは一緒に暮らせない事情があるんだなって理解した
一緒に暮らせない事情ってのは、何パターンがある
経済的・仕事の事情の理由で一緒に暮らすのは困難なためから。とか……その両親が亡くなっているから。とか
おそらくどれかの事情があるんだろうって思った俺は、これ以上言うと翔君を傷つけるんじゃないか?って思って話を変えようと「そうなんだ……」とだけ言って自分の事を少し話した
「母親の作る料理ってどれも美味しくて満足するよね……実はあの鶏肉のスープは俺の母の得意料理なんだ」
「……」
「同じように作っても、何か一味足りない感じで……って、翔君?」
さっきから黙っている翔君はどうしているのか顔を覗いてみると、目を閉じたまま呼吸していた……つまり
「(寝ちゃったか…)」
寝ないって言ったのに、やっぱ俺の膝は寝やすいじゃないか。素直じゃないな〜
さっきの話はどこまで聞いていたんだろう?って疑問に思ったけど、寝やすいってのが本当なのを知ってなんだか嬉しくなり、さっきと同じように熱い気持ちになる
……これは知らずの内に妹と重ねて見て愛しくなっんのかな?とりあえず、しばらく動けないから俺も寝る事にしたけど
数時間後に最初に帰宅したユキちゃんに起こされるまで、俺達は爆睡してしまうなんて!