インターハイへ




「(ついに……来週から。か)」




翔君を見ていればわかっている事だけど、カレンダーも見て改めてそう思った。来週……ついにインターハイが始まる


この日本各地から翔君達みたいな高校生の競技部が集まり、夏の暑さに負けない勝負が始まろうとしている。そう思うと、俺が出るわけじゃないのに変な緊張をしてしまう

ちなみに、そのインターハイについて翔君に一緒に行ってもいい?って聞いたら即答でダメって言われて、ですよね〜って苦笑したけど諦めたわけじゃない

どうしても実際に見に行って応援したい俺は、なんとかしてIHが行われる箱根とやらに行くために、ヒッチハイクとやらをしようかとか立体起動を限界まで使うかとか色々考えていると、おばさんに話があるから居間に来てって言われる。なんだろう?




「な!ユーリィちゃん。翔君には内緒で応援しに行かへん?」

「い、インターハイに応援すか…!?」




なんと、実は久屋家でも翔君に内緒で応援しに行こうとしていたみたいだ!

よっしゃ!丁度俺も行きたいって思ってましたって言うと「じゃあ、決まりやな!」っておばさんは準備をし始める

皆やっぱ翔君の活躍を見たいもんね。さぁ俺も準備をしようかって部屋に戻った時に、あの砂時計に目が行く




「(砂……少しずつ落ちてるな)」




まだまだ残りはあるけど下に少量の砂が落ちてる




「(まだ大丈夫。まだ……居られる)」




残り少ない。明日にはもう消えてしまうかもしれないって不安になるけど、そうして焦って変な行動をするよりは、毎日を噛み締めて楽しく過ごしたい

そう思いながら俺はインターハイも気持ちを落ち着かせて見ようって思った


























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暑い日差しの中、電車やタクシーに乗って遂に着いた箱根

インターハイのスタート地点で開会式が行われる会場に行くと、そこには俺達みたいな沢山の観客や取材陣、そして他の選手が何人かいた




「うは〜ぎょうさん人おるね〜」

「そらそうやろ……って、ユーリィちゃん。荷物ほんまに置いて来んでよかったん?」

「はい。一応大事なもの入っておりますんで」




ユキちゃんの言葉に返事をしつつおばさんは、俺が持っているバッグのことを聞いてきた。大きくてかなりの邪魔になるけど、これには立体起動とかを入れてきているから手元に置きたい

何故なら……タイムリミットを知らせる砂時計の砂はもう少しで無くなる。もしかしたら見ている最中にとか、翔君や久屋家の皆にちゃんとした挨拶が出来ないまま帰らなくてはならなくなるかもしれないって思ったから

出来れば翔君が勝ったところを見て帰りたいな……って思っていると、前回の優勝者である箱根学園のメンバーがステージに立ち、司会者から意気込み等を聞かれている





「(あれが箱根学園のメンバー…)」




主将の福富と言う男をはじめ、メンバー全員のただならないオーラを感じて“王者”と呼ばれるのもわかる。かなりの強敵だ……って俺は唾を飲む




「(相手はどんな走りをするのか、わからないけど……翔君の走りはすごいから簡単には負けない!)」




でも、ロードレースも壁外調査と同じく何が起こるのかわからない……だから俺は翔君の実力を信じる!そう思っていると、司会者が今度はステージ前にいた選手にインタビューをしていた





「こんにちは」

「ちは」

「っ!?」




マイクから拾われた声……それってまさか…!





「今年の意気込みはぁー」





間違いない……あの声、そして紫のジャージを着る長身の細い体……翔君だ!




「翔兄ちゃん!翔兄ちゃんや!」

「ユキ、あんま騒いどると翔君に気づかれてしまうで!」




そう。俺達はあくまで翔君には内緒で来ていて、終わった後に実は見てましたーって言うつもり。だから、今はそっと見守らないと…




「箱学、ぶっ潰しまーす」

「ぶっ…!?」




うわあああ!そうこうしている内に翔君は大胆にも、箱根学園の主将の近くに言って宣戦布告をした!

俺は翔君らしいなって笑ったけど……この翔君の姿を久屋家の人達が見るのは初めてじゃないか?って思った

家では比較的大人しいし、俺とのやりとりは暴言・暴力あっても控えめ。あんなに過激なのは部活の時だけだから驚いて引いたりしていないかな?って心配して見ると…




「すごいなぁ〜!翔君はあんなにたくましくなったんやな!」

「家では大人しいから部活内でもひっそりやってる思うてたけど、成長したわ…!」

「よし!俺直伝の相手を怯ませる睨みを忘れてへんな!やったれ!」

「翔兄ちゃん!格好良いで〜!」

「あれ…?」




な……なんと、久屋家の皆は引くどころか家では見られない大胆な翔君に良い印象だ……!

久屋家の肝の座り様がすげぇって言う正直な感想を思った後に、翔君はやっぱり愛されているなぁって安心が出た

そうして翔君はと言うと、次にステージ下にいる人と何か話しているみたいだ

ん〜〜……ここからだと人混みで見えないし、遠いからマイク離して話すから何を話しているのか聞こえない……人混みを掻き分けて行くしかない

俺が居るのがバレたらダメだけど、近くで見たい気持ちが勝って見えるところまで行くと翔君はもう去った後で他のメンバーと待機するテントに向かっている

そしてその中で、観客と混じって見ていた黄色いジャージを着た長身の男が悔しそうに「御堂筋…!」って呟いていた




「(この人は……翔君の知り合いかな?翔君の事だから挑発的な言葉を言ったんだろう)」




今更、翔君のやり方には口出ししないけど、この男の様子から相当な事を言われたんだろう

たしかに翔君の言う事はムカつく言葉が多いけど、言い返そうとするは自分も引けを取らない位の強さだって言っているから、全て決まる勝負で白黒をはっきりさせるだろうって思って、何も言わずに久屋家の皆がいる所に戻った