スタートの勢いは凄まじく、こんな例えをしてしまえば失礼かもしれないけど、まるで俺達調査兵団が壁外調査へ出陣する時の勢いだ
それぞれチームがあって敵同士だけど、進む先は一緒だからスタート時は全体が一つとなって大きな生き物にも見える
あっと言う間に行ってしまい、スタート地点で待っていた俺達は度々発表されるリザルトを聞いた
最初のリザルトは千葉総北。次の山岳リザルトは箱根学園……一番目に表示された個人名と学校名がまず目に飛び込んできて、次に二番目、三番目って見るけど……翔君の名前どころか京都伏見の名前が無い
これを見て俺は翔君を信じたいけど不安になる。さっきから総北と箱学の一番争いしか想像できなくて翔君達は追い抜けないで必死なんだろうか?って。このままゴールの発表でまた総北か箱学なんじゃないか?って……
もうすぐ先に走っている選手がゴールする……俺は柄にもなく、手を組み合わせて祈った。そして……!
「発表します!一位……箱根学園!千葉総北!そして……京都伏見!!」
「…えっ!?」
俺はその発表に驚いた!なんとゴールしたのは三校同時で、その中に京都伏見……翔君の名前があった!
「翔兄ちゃん一位!?一位なん!?」
「うおおお!やったなぁ翔君!!」
同じく発表を聞いた久屋家も翔君の逆転勝利に驚いて大きく喜ぶ
……そうだよね。翔君は絶対に負けない子だ。きっと後から巻き返す作戦だったから、ゴール前のリザルトはスルーしていたんだなって不安に思ってしまった俺は翔君達に本当に失礼だったって反省して、一日目の表彰を受けに戻ってくるのを待った
表彰が終わった後にすぐ翔君の元へ向かう。スタート前と変わらずたくさんの観客を上手く掻き分けられない俺は、もうこうなったら選手が待機するテントに向かおうって方向転換する
「うわっ!あ、すまん……!」
その時に誰かとぶつかってすぐに謝ると、相手は「大丈夫じゃけぇ」って翔君の話す言葉と少し違う独特な言い方をして大丈夫だと言った
それに少し驚いて相手をよく見ると、緑色のジャージを着た黒い髪の男と赤い髪の男が二人……つまり、この人達も選手かって思っていると、黒い髪が赤い髪に何か言っている
「さすがミヤじゃのぅ……睨んだ通り京都伏見は使えそうじゃ」
「エッエッエッ……あいつも押さえておけば、確実に……」
「(なっ……!?)」
その内容は奴らは翔君を利用しようとしてるのがわかって、俺はすぐに掴みかかろうと手を出そうとしたけど、ここで選手の関係者がトラブルを起こせば……ましてや相手は敵選手となれば翔君に迷惑がかかるどころの話じゃなくなる
なんとかグッと堪えると、男二人は俺に気づいて話しかけてきた
「何や?嬢ちゃん。ワシらのファン?」
「あ、いや……」
「エッエッエッ!ファンやない言うても、最後に勝利するワシらに惚れるのはわかっとるけどな!」
な、なんだこいつら……いかにも自分の実力で勝つみたいに話しているけど、俺は翔君を利用しようとする発言を聞いていたから、そんな薄っぺらな言葉なんてすぐに聞かないで睨んだ
「あァん?なんや……」
「ロードレースには何が反則で、何がやっても良いのか、まだわからないけど……だけど」
俺は男達の間をすり抜けようとした時に一言を言った
「翔君に何かしたら、ただじゃおかねぇからな……」
10代の子に対して大人気ないけど、これだけを告げて俺は京都伏見の待機するテントに行った