『スタートまで、あと……』
そんなアナウンスを聞きながら、京都伏見の待機テントに行く。すると……
「あ、石垣君!」
「……っ!」
そこには慌てた様子の石垣君がいた。きっと翔君が戻ってくるんじゃないか?って信じて探しに来たんだ
「アカンやろ。こんな時間にこんな所でうろついとったら……石垣君。スタートで待っとかな。キミはボクのアシストなんやから!!」
「み…御堂筋!!」
石垣君は本当に嬉しそうだ。……今まで理不尽な練習を強いられてきたけど、ここまで来れたのは翔君のお陰だって感謝するみたいに
「ユーリィさん!ホンマに……ありがとうございます!」
翔君が来てくれたのは俺のお陰だと思った石垣君は、俺に頭を下げてお礼を言う
「何ユーリィちゃんにお礼言うとるの?来たんはボクの意思でユーリィちゃんは関係あらへん」
「うん、そうだよ。俺は何もしてない」
そう。俺も何とかしようとしたんだけど、結局翔君は“ユーリィの言葉や話を聞いて考え直した”なんて言ってないから、これは俺のお陰じゃない。翔君は自分で選択したんだ
それを伝えると、それでも俺にお礼を言って、翔君にもお礼を言った石垣は早くスタート地点に行かなければ!って翔君と一緒に行こうとした
「翔君!それに石垣君達も!……思いっきり戦ってこい!」
「はいっ!」
返事をしたのは石垣君だけだったけど、翔君にも聞こえているから届いている。…届いていればいいなぁ
「(翔君……君が思っている以上に翔君を必要としてくれる人はたくさんいる。その事も忘れないで)」
俺も観客側のスタート地点に急いだ
観客側のスタート地点に行くと、そこで久屋家と合流した
「ユーリィちゃん!電話に出てくれへんかったから事件に巻き込まれたと思ったんやで!」
「ごめんなさい…」
おじさんは仕事でユウタ君は部活で先に帰ったみたいで、残って最後まで見るつもりのおばさんとユキちゃんからすごく心配していたって怒られた
借りている携帯を見ると、ユキちゃんの携帯からの不在着信がびっしりとある。そういえば……昨日、久屋家が宿泊している旅館に帰ろうとして“遅くなる”ってしか連絡してなく、帰って来なかったからそれは心配するねって申し訳なく思った
「まぁでも、翔君を励ましてて気付かんかったんやろ?おおきになぁ〜。けど次からは来れん連絡もしてな?」
「もしかして思うて翔兄ちゃんに電話してよかったわ〜」
「え?」
どうやら、俺が電話に出ないから翔君にかけて一緒にいるのを知ったみたい
かけた時間を聞いてみると、俺が寝てしまった時だった
「すみません……けど、俺は本当に何も……」
「あ!スタートした!」
ユキちゃんがそう言ったのを聞いてスタート地点を見てみると、先頭にいた選手が次々と走ってきた!
箱根学園、千葉総北、そして……
「(翔君……!)」
翔君と石垣君が通って行った。止まって見ているから二人と残りのメンツはサッと行ってしまった
翔君……頑張ってね。プレッシャーになるこの言葉は本人には言わず心の中でそう言ったら……ある選手に目が行く
赤い髪でヘラヘラ笑う男と黒髪の男……緑のジャージを着ているあいつらは!
「(翔君を利用しようとしている奴だ!)」
俺はそいつらを見た瞬間に、何か嫌な予感が頭を過って、暑い夏なのに寒さを感じた
「(まずい……何かが……起こる!)」
そう思った時に足元に何かが落ちて、その音でびっくりしてしまう
こんな時に心臓に悪いな……って思いながら拾ったそれは……
一応持ってきていた、元の世界に戻るための鍵である砂時計
これか……って脱力したけど、ある事実を知ってまた驚愕した
なんと………上にある砂は、あと残りが少なくなってきている!
まずい!って焦りそうになったけど、まだ時間は少しだけあって俺は悩んだ。このまま帰ろうか、翔君を見るか……
答えは……
「おばさん、すみません!俺ちょっと行ってきます!」
「え!?え?……何処に!?」
おばさんに上手く言えないまま、走って行く
そして……
「あのっ!今、先頭にいる選手は何処ら辺に向かうんですか!?」
俺は翔君の最後の戦いを見るのを選んだ
そして、たくさんの観客の中にいた一人の男にそう聞いてみると…
「先頭?ん〜……今の時間やと富士山の北側ら辺やと思うで」
「っ!」
そう教えてくれたけど、ちゃんと聞けなかった。だって……
「あれ?その喋り方って……」
「ん?」