「そうだったんですか!京都伏見高校の卒業生の……えっと」
「安や。今の三年生達の1つ上なんや」
たまたま慌てた状態で話しかけた人が、京都伏見高校の卒業した人で応援しに来ていたなんて……こんな偶然もあるんだな
そんなわけで、この安さんが運転する車に乗って先頭の翔君達を追いかけた
「ところで、応援のついでに旅行なん?」
「えっ!あ、はい……そんなところです」
安さんは俺が持っていた大き目のバッグ……立体起動が入った荷物をみて、そう聞いてきたからそうだと答える
や、やっぱ応援にこんな大き目のバッグじゃそう思うよな?ハハハ……
「にしても君……光太郎の言っとったあの強い一年生の知り合いなん?」
「はい」
「ふ〜ん。前に俺、差し入れ持って顔を出しに行った事あるんやけど、あの一年生ちっとキツい性格しとらん?」
「あ〜なんというか……下の人達をビシバシする……軍隊的なやり方ですか?」
「そうや。俺がおった時は和気藹々だったんやけどな〜」
「………」
たしかに、翔君のやり方は度が過ぎているのもある。けど……
「……彼は人との距離感とか接し方にいまいち慣れていないんです。石垣君と戦って勝って……自分がエースになったからにはって力み過ぎているんだと思います」
「ほうか……すまんな。君はあの一年生と仲ええのに、俺はいらん事言ったな」
「いえいえ!でも、これは今翔君が一年生だから言ってるわけで、これからもそんなやり方が続くようでしたら……多分、俺は拳骨します」
そう宣言すると、安さんは大笑いをする
けど、これは咄嗟についた嘘に近いもの。実際は翔君のやり方には口出ししないって約束したし、言いたくなる時があるかもしれないけど……もう、このインターハイが終わった先に俺はいない
それを考えると悲しくなるなって思っていると、安さんが「着いたで」って下ろしてくれたそこは…
今、先頭を走る選手を待ち構えている人達が並ぶ林道だ
「もう少しで来ると思うで」
「はい!……あ、」
そう話していると、奥から声援が段々近付いてきて大きくなる!つまり、選手がもう少しで来る!
最初に来るのは誰だ?って、待ち構えていると……
先頭に、三校のチームが二人ずつ争って走ってきた!
「翔くーーーん!!」
俺は翔君を見つけて、思わず大きな声で呼んでしまった
当然前を見続けて走らなければならない翔君達は見向きもしないで、走り去ってしまうけど、あの走る姿に思わずかっこいいー!とも言ってしまいそうになる
そんな翔君を見て満足していると、安さんが「そろそろ俺、研修に戻らなあかんから、行くで」ってスタート地点までまた乗せて行くと言ってくれた
仕事の合間縫って応援しにくるなんて後輩愛すごいなって思う俺は、そろそろ自分も“帰らないといけない”から、翔君にはさよならは言えないけど、せめて久屋家には言おうって考えて車に戻ろうとしたら……
「なっ…なんや……あれ……!」
「え?………!?」
その時に安さんと俺は奥の道から来る巨大な影を見て、驚愕した
なんだあれは!たしかに選手が固まれば大きな塊になるけど、何か異様性を感じる…
そう思っていたら、その影が段々こっちに近付いてきてその正体がわかった!あれは……!
「(あの集団………赤い髪の男が率いっている!)」
あの緑のジャージ着た赤い髪が中心にいて、他校の選手を壁にして進む集団は……前を走る選手を飲み込み、身動きを取れなくさせたところで集団の仲間入りをさせる奇妙なものだった!
「あかんな……」
「え?」
「あんな集団に捲き込まれでもしたら……あの中心におった奴に全て持ってかれるかもしれんな……!」
「っ!?」
おお、安さん。流石経験者はわかるな……って、感心している場合じゃない!俺の嫌な予感も的中してしまったんだ!
このままだと、翔君は……!あいつらの言葉を思い出して不安になる
「まぁでも、光太郎達はもっと先やから大丈夫やろ……」
「すみません!俺ちょっと行きますんで、ここら辺で……連れてきてくれて、ありがとうございます!」
「えっ!?あ、ちょっ……!」
俺はここで安さんと離れて、一人で追う事にした
なんとしても、この事を翔君に……あ、でもその情報伝達はルール違反かな?不安に思った俺は色々考えて……
ある事をしようって思い付く
―――――――
「……待宮達、約束通り来るんかな?」
「さぁ。それは待宮君の実力の問題やけど、ボクは別に協調せんでも……!?」
「どないした?御堂筋………なっ!?」
石垣と御堂筋が後ろを向くと、遠い所に……赤い煙が上がっていた!
「な、なんやろアレ……何か事故でもあったんかな?」
「……事故やないと思うで」
「御堂筋?」
「……さっさと前見て回さんか石垣クゥン」
「お、おう」
「(なんでやろ……あの煙がユーリィちゃんのやった事で、何かを警告してるように見えるんは)」
―――――――――
「ふぅ……見えてるかなー?」
俺がやったのは……持っていた信煙弾を放って翔君にあの赤髪の緑ジャージから逃げろ!って警告したんだけど……伝わっていない可能性が高いな
けど、なんとか異変に気付いてくれって思った
「なんだ?赤い煙はここからか?」
「(まずい…!)」
このままいれば、不審な赤い煙を出した人として警察に捕まる!
……ま、こんな事もあろうかと、信煙弾撃つ前に“着替え”ていたんだけどね
「(久し振りに着ると、ガチガチで固まっているみたいだな……)」
なんて苦笑しながら同じくバッグから出して着た久し振りの………調査兵団の制服で立体起動を……
動かした!
林の中で幸いしたな。いた場所から一気に離れた木の上に移動して、なんとか不審な人として発見されずに済んだ
さて……ここからどうしよう?
そう思いながら砂時計を見ると、スタート地点で見た時と変わらない様に見えた。けど、確実に少しずつ落ちているからゆっくり出来ない
「(お願い。もう少しだけ………翔君の近くに居させて)」
そう願って…
なりふり構わず、林の中で立体起動を使って追いかけた!