静かな別れ







目を覚ました時には日付が次の日になっとってて、僕は京都の病院で寝ていた




「(……何、あったんやっけ?)」




ここに来るまで、自分が何しとったか思い出す

たしか……力を全て出し切って……

落車した時、ユーリィちゃんが来て救護を呼で……

その後は意識が朦朧してて、あんま覚えとらんけど


寝ていた僕にユーリィちゃんが色々勝手に喋っとったな……なんや石垣君みたいなキモい事をベラベラと

何回も聞いとってて、うんざりしとったのに、何故かすんなり聞いてしもうて…

最後に……ユーリィちゃんは僕に………





「(―――って、なんでボーッとするんや!あんなんキモすぎるやろ!あんなん……)」




なんで僕はあんな事されたのに、そんなに嫌がってないんやろ…

まぁ何だってええわ。とりあえず、調子こきのアホユーリィちゃんを取っ捕まえて文句言うて一発ぶん殴ろ

そう考えとると、病室に伯母さんとユキちゃんが来た




「翔君!目ぇ覚ましたんやね!」

「翔兄ちゃん!」




昨日から18時間も寝ていたから、心配するんは無理ないな




「心配かけて……すんません」

「ええよ。それより、よう頑張ったやな…!」




気付いとったで。ユーリィちゃんは僕の後をあの物騒なもんで追いかけてきて、伯母さん達は普通に応援しとったのを




「応援……しに来てくれて……おおきに」




それを言うと、二人は驚く





「えっ!?ウチらが応援しに行っとったの、わかったん?」

「わかるも何も……ユーリィちゃんと一緒に居たんやから、わかっとったで」




普通に考えればそうや。伯母さん達と一緒に来ていたユーリィちゃんと一日目から会っていたんや

それに、二日目〜三日目の野宿では伯母さんやユキちゃんと携帯で連絡とったから知らん方がおかしい。……まさか、ユキちゃんはまだとぼけてるんかな?



そう思っとったけど……








「翔兄ちゃん?………ユーリィちゃんって、誰?」




ユキちゃんが首を傾げてそう聞いて来た


ハァ………?




「何言うとんのや……ユーリィちゃんとはしばらく一緒におったよな」

「え……?」

「翔君?……それはいつの話なん?」

「……!?」




なんやこれ……伯母さんとユキちゃんは僕をからかってんのか?いや、表情だとあれはほんまに……!



「………」

「翔兄ちゃん?」

「……ごめん。何でもないわ。ちっと疲れてて、その……記憶が曖昧なんや」




そう言うと二人は納得して、病院を出る準備をしようって促してきた




「まだ疲れが残っとると思うから、早う家に帰って寝たらええわ」




僕の言葉に何も疑問に思わない伯母さんは、僕に着替えを渡しながらそう言うた

黙って受け取って着替える僕だけは、納得できひんままや



ほんま……これは一体どういう事や……夢なんか?

















―――――――――








病院から帰って寝て休んだんやけど……あれから周りは変わってしもうた


僕に対してはインハイの疲れや負けたのを気ぃ遣う声が多く、普段と変わらんかったけど……



皆の記憶からユーリィちゃんが消えとる










「御堂筋。どうや調子は」

「うっさいなぁ。僕は石垣君みたいにいつでも馬鹿みたいに元気やないで」



数日後に始まった部活に顔を出した時にも、ザク共に聞いたら……皆知らんって

短期で図書室の管理の仕事をやっとったけど……それに関して聞いたら、図書室は長い間誰も就いておらんらしい……




「ああ、そうや。俺ちょっと変な事思い出したんやけど……」

「どうせくだらん事やろ?僕はもう帰るわ」




部活に長居する意味無いって思った僕は、石垣君の話を切り上げてさっさと帰る




「あ!御堂筋!………あのインハイの……俺が落車した時に、微かに見た気がしたんやけどな。ありえへんけど……空を飛ぶ人を。あれは夢やったんかな?」












――――――――











僕が見ていたあの……うるさくてアホでキモいユーリィちゃんは、夢やったんか?僕だけが見ていた幻やったん?

……ちゃう。そんなわけない。たしかにあの女はここにいて、一緒に生活して、僕の周りや僕自身を色々掻き乱した




「(何なんや……ほんまに)」




ユーリィちゃんが消えとる世の中に納得いかん自分に、ほんまにキモいって思うけど、たしかにおった証拠を……せめて、ユーリィちゃんが何処に行ってしまったんかだけでも知りたい


ずっとそんなへばりつく考えに押し潰されそうになっとると……

帰宅時に本屋の店先で水田君と山口君に会った




「あ!御堂筋!大丈夫すか?もう歩けるん?」




僕を見て案の定うるさく心配する水田君。適当に返事をして、その場を去ろうとした時やった




「ノブ。進撃の巨人、もう売り切れやって」

「山口!俺の事は水田って……って、なんやってーー!?」

「………?」




いつもと変わらんくだらん会話やけど、何故か山口君の言うた事が気になった




「山口君」

「な、なんや……?」

「ほら!御堂筋君の前で決まりを破ったから、怒ってるぞ!」




なんや勘違いしとっててキモいわ。せやけど、別に今はそんなんはどうでもええ




「……今言ったんは何?」

「え……?」

「今言うた……進撃の巨人ってなんや?」

「え!ああ、それな……」

















――――――――――





「(全て………理解した)」



僕はあれから山口君から話を聞いて、水田君から今持っとる巻を全部借りた(水田君は僕との共通の話が出来るって、向こうから貸してきたんやけどな)



そう言う事やったんか……



進撃の巨人ってのは“エレン・イェーガー”って言う僕と年の変わらん男を主人公にした漫画やけど……


これに登場する地名、組織名、そして壁や巨人ってのは、みんなユーリィちゃんから聞いたのと一緒や。物語の最初に壁を超える超大型巨人が現れて、壁を破壊して並みの大きさの巨人達が街に入っていくのも……聞いたとおりやった


これは偶然なん?……そう心臓の音をうるさく立てながら、読み続けてくと


調査兵団が出てくるコマに、見覚えのある顔を発見して驚いた!

白い馬に乗った金髪の男と、黒い馬に乗る刈り上げた髪型の男の後ろに………眼鏡かけた人と並んで馬に乗るユーリィちゃんがおる




「(そうか……そう言う事やったんか。ユーリィちゃんは元の世界に帰ったんやな)」




そうやった……あの時、僕にあんな事した後に彼女は、来た時と同じ妙な格好をしてて、光に包まれて……見えなくなってしまったんや

つまり、あれは最後の別れをしていたんやな……あんな別れの仕方があるんかい。キモッ!


僕も寝ていたのが悪いんやけど、あんなキモいやり方するんか?普通。……あれはこっちでのアニメや漫画に影響されとるところがあったから、そこからキモい別れの仕方を取ったんやな……ほんまキモッ!!

僕はキモいやり方をしたユーリィちゃんに頭を抱えながら、ほんまにアホやな…って思うた


せやけど……




「(さっさと帰ってくれてよかったわ〜。あのまま居座られたら、ストレスが溜まって禿げるわ)」




ほな、そうわかったなら、後はまたペダルを回すのに集中しよ……あ、別にユーリィちゃんに言われたからやないで?

僕は本来の日常を取り戻したんや…!




「(そんなわけで……ユーリィちゃんが言うた事と、僕を…―――な気持ちは気にせんで、また前を見よう)」



これでよかったんやって思うた僕は







また前を見続けた