今日も何も変わらん1日が終わる
僕は布団の上でボーッと天井を眺めてた
…………
「(………ユーリィちゃんが庇ったあの子が、妹なんかなぁ)」
前に本人から僕と年の変わらん妹が居ると聞いてたんやけど、今まで発売されてたあの漫画にはそれについて直接書いておらんかった
今月号でユーリィちゃんが喰い千切られて殺された後にヒストリアと名乗った子が「姉さん!」と絶望しながら叫び、近くにいた巨人化したユミルという女が怒りで咆哮しながら戦っておったシーンでユーリィちゃんとの姉妹関係が判明するんやろうな……
…………
「(………って!僕は何いらん事を考えとるんや!!今はそれどころやない!石垣君達が抜けた後の部活の戦力の低下対策について考えないとあかん!!)」
そうや。僕にはまだまだやる事がある
いらん事を考えて時間を潰すなんて……
ありえ……へ………ん…………
………………
………
ふと、気付くとそこは病室だった
昼間と夕方の間なのか、窓から差し込む光りは優しい黄色に見えて……
それに照らされてるのは病室のベッドと
そして………
「あ………」
「翔。来とったんなら起こしてくれてもええのに」
ベッドで寝ていた身体を起こして僕に優しく微笑みかける………母さんやった
「身体に障るから……無理せんでええで」
僕を気にかける母さんと、母さんを気にかける僕
病室でのいつもの会話
そして、いつものようにベッドの近くまでおいでと手招きされて、その近くに座ると「大きくなったなぁ」と喜びながら僕の頭を撫でる
………久しぶりに母さんに会ったなぁ
不思議と夢だと分かった僕は、そう考えながら撫でてくれる温もりを感じてると、母さんはその手をピタリと止め僕に言った
「翔。大丈夫なん?」
「何が?」
「翔の大事な人が居なくなって、辛いんやないの?」
「大事な人……?」
僕が大事なのは母さんだけ。そう言おうとした時、ふいに金髪でアホ面下げたあの女の顔が頭に浮かんだ
『翔君〜!!』
「(………なんで、こないな時にユーリィちゃんを思い出してしまうんやろ)」
「あの子なら、翔のお嫁さんにええかもなぁって考えとったからなぁ」
「ふぁ、ふぁ!?何言うとんの母さん!!あんなアホでマヌケで小うるさい女なんか……」
「あら?翔。母さんは別に誰とは言っとらんよ?」
「なっ……!」
しまった……母さんに鎌をかけられて、いらん事を言ってしまった……
母さんは「あの子はユーリィちゃん言うんやったね」と楽しげに笑い、また僕に聞いてきた
「ユーリィちゃんが居なくなって辛いんなら……泣いてええんやで」
「そ、そん……な、泣くわけないやろ。それに辛くなんか……」
「母さんは分かるで」
そう言いながら母さんは、僕の歯並びを確認した時みたいに僕の両頬に手を添えて顔が近くで見えるようぐっと固定した
「……辛いんと言うか、ただ……もっと、話したかった……んかな?」
母さんの真っ直ぐ見つめる瞳は僕の隠し事を見透かしてるようで僕は何だか申し訳ない気持ちになり、目線を外しながら自分でも驚くような事を言った
そうか……僕は……ユーリィちゃんともっと……
それを聞いた母さんは「正直に言えて偉いわぁ」と僕の顔を固定していた手を頭に持っていき撫で始めた
「そんなんで撫でるなんて……僕は子供やない」
思わず撫でてる手を軽く払いのけてしもうたけど、母さんは変わらずニコニコ笑ろうていた
「ふふっごめんなぁ。可愛らしい様子の翔を久々に見たからなぁ」
そして、一通り笑った後に母さんは「よし、分かった」と何やら気合いを入れるように腕を回して僕に言った
「翔。ユーリィちゃんの事は母さんに任せとき。ちょっと時間かかってしまうけど、母さんが必ずユーリィちゃんを………」
「?、母さん……?」
最後に何を言うたのか聞き取れなくて僕は聞き返そうとした時
窓の外から差し込んでいた柔らかい光りが強くなり
辺りは真っ白になって何も見えんくなった
次に僕の耳に入ってきたのはピピピピ…という目覚まし時計のアラーム音
ゆっくり瞼を開けると薄暗い自分の部屋
「(ああ……夢。やったもんな……)」
僕は今後の部活のメニューを考えていたんやけど、いつの間にか眠ってしもうて夢で母さんに……
「…………」
………何も気にする事はない
ただの夢や。母さんといつもの会話じゃない内容をしただけの……変な夢や
僕はアラームを止めカーテンを開け、夜明けの太陽が少し頭出した空を見て
いつもの朝の自主練習を始める事にした
『母さんが必ずユーリィちゃんを……』
「(あの後に……母さんは何て言ってんやろ……)」