ここは何処だ……?
真っ暗で……
何やら息苦しさを感じる……
たしか………俺は………
「(ああ………そうだ。俺はヒストリアを庇って巨人に………)」
だとしたら、ここは巨人の胃の中なのだろうか?
………いや、今は俺自身の事よりヒストリア……妹の事だ
あの後、ちゃんと逃げられただろうか……
生き延びてくれただろうか……
それだけが心配だ……
『………!』
「(ん……?)」
『ぁ……人……を!』
何処かから声がする……
真っ暗闇で何も見えないが、辺りを見渡していると
俺が立ってる場所を中心に声がだんだん近づいて聞こえてきた
「なんだ……?」
辺りを見ていると……人影が一人、また一人と現れ、やがて大人数になりその人達の姿がだんだんはっきりと見えてきた
あれは………兵士の装備もしていない………民間人。それが……苦しそうに泣いている?
何故こんな状況に?とか彼らは何者なのだろうか?とかで、なんとか自分で推測できそうなものは無いか観察していると……
『ユミルの民に……』
「え……?」
『我ら、エルディア人に勝利と自由を……!!』
エルディア人?初めて聞く言葉だ……そこで俺は近くで祈りを捧げるように手を組んで涙ぐむ男性に「何があったんだ?」と声をかけながら彼の肩に手を置いた
そしたら………その肩に置いた手からじりじりと暑い光りが渦巻き、俺の頭を目掛けて飛んでくる!!
あまりに突然の事で払う暇はなく、光は俺の頭に命中した!…………けど、痛みはなかった
そう。痛みの代わりに………ある映像が頭の中に流れた
彼らは……壁の外のある国に住む巨人化出来る一族。エルディア人と呼ばれる人達で、それが太古の昔から巨人化出来ない一族のマーレ人と争いを繰り返していた
今の時代はマーレ人が優勢でエルディア人は反逆の時を狙っていたけど、目敏いマーレ人から見つかったり仲間や身内の裏切りで密告された人等……大勢のエルディア人が酷い拷問を受け最終的には巨人化してしまう薬を打たれて俺達のいる大陸に放たれる……これを彼らは「楽園送り」と言っている
まるで俺自身が体験したような記憶の映像はおそらく彼らのもので、不思議な事に俺が触れた事によってそれが伝達したんだろう……
いや、今はそれよりも気になったのは、楽園送りにされた人達は俺の住む壁に囲まれた国のある大陸に向かっていたという事は……
「(まさか……俺達が今まで斬ってきた巨人ってのは……!!)」
彼らなのか………!?
たしかによく見ると、いつぞやに倒した事ある巨人達と似てる顔ぶれが沢山……
じゃあ……じゃあ、俺は……
「ひ、人を……殺していたのか……」
あんなにも……あんなにも人を沢山喰い殺していた巨人を憎んでいたはずなのに………こんな事って………
父さんや母さん、アマレットや多くの仲間を喰った巨人達も………自分達の自由のために戦っていた。俺達と同じ人間……
巨人にされた人は知能の持たない「無垢の巨人」で、巨人になっている間の記憶はないとは言え、誰もが人なんか食べたくないだろうに……無理矢理こんな事を……!
…………
俺は思わずエルディア人を無垢の巨人にしたマーレ人を恨みそうになったけど、マーレ人もかつてはエルディア人に虐げられていた。だから、これは……
「(人類と未知の生物の戦いじゃなくて………最初から何もかもが、古から終わらない人同士の醜い争いだった。という事か)」
それに気付いた俺は、その場に力なく座り込む
いつの間にか周りにいたエルディア人達は居なくなっていて、俺の目にはまた静かで重苦しい闇が広がっていた
そうか………
「(俺も……人殺しの罪で、この地獄に落ちたか)」
誰も、何も無い空間で……孤独と罪悪感で押し潰されろ。という訳か
「ははは………」
今の俺には乾いた笑いしか出てこない
人を斬ってしまったなら地獄の使いに斬られる罰を受けてもよかったのに
それすらやる価値は俺には無いか………そう思うと、もう全てがどうでもよくなり笑う事しか出来なかった
どうせ、ここから抜け出せないし……
「ユーリィ。また仕事サボって昼寝?」
「えっ!?」
不意に上から声がして顔を上げてみると……
長い黒髪で白のワンピースを着た女性がいた
えっと……この人、誰だっけ?なんか何処かで会ったような……
前髪は左右に分けてて大人っぽいけど、俺と年は変わらない雰囲気がある
「あ、そっか。私との記憶を消してるもんね」
俺がしばらく女性を唖然として見つめていると、彼女は何かを思い出して苦笑いした
「あの……貴女は……」
「待ってて。今、思い出させるから」
そう言った女性は俺に顔を近付け……自分の額を俺の額にくっつけた
その時、まるで雷が落ちたような衝撃とさっきエルディア人に触れて流れたような映像が頭に入ってきた!
エルディア人に触れた時と違う特徴は、映像は全て自分の目線になっていた事で………
これは今まで無くしていた自分自身の記憶だというのが分かった
「………!」
そして、俺は全て思い出した
彼女は………俺が兵士になる前、つまり父さんと行商していた時に会った子だ
あれはたしかウォール・シーナに行った時で、俺が荷物の中にあった果物をこっそり食べていた所に彼女が来て、そのまま友達になって……楽しい日々だった。ウォール・シーナに行く度に会って色んな本の話しをしたっけ
でも、ある日に彼女から突然別れを告げられる
『私はもう“先が短くなる運命”から逃れられない。もし私が何も出来ないまま終わってしまったら、あの子を私の代わりに守って。あの子は私達共通の大事な子よ』
そう言って俺の記憶を消したんだった
そして今、彼女との記憶を取り戻してあの別れ際に言った言葉の意味や理由が分かった。彼女は俺にとって親しい友人の他に言える関係は……
「そういう事だったんだね………フリーダ」
彼女……フリーダ・レイスは俺とヒストリアの異母姉妹。という事だ