しばらく走って見えてきたのは暗闇の中でぼんやりと光る巨大なガラスの壁
向こう側が微かに見えるその壁の手前でフリーダは止まる
「ここからは私は行けないわ」
「え?」
「これは世界の境界線で、レイス家に縛られてる私は越えられない。でもこの先からは別の人が案内してくれるから安心して」
「フリーダ……」
そんな……死してなお、遥か昔から続くレイス家の呪いに縛られたままだなんて……
「大丈夫よ。私もいつかは生まれ変われるから」
俺の表情で考えてる事を察したフリーダはそう笑って俺を安心させようとした
本当なのか?そう聞こうとした時にフリーダは「あちら側のお迎えが来たわ」と壁の奥を指差す
一体誰だ?どんな人が来るのか……と目を凝らしながら見てると、ショートヘアーで黄色のスカートを履いた女性が近付いてきた
あれ……この人………どこかで………
「わぁ。ホンマもんのユーリィちゃんやぁ〜!実際会ったら格別にべっぴんさんやぁ」
「えっと、その……もしかして、貴女は……」
この独特な方言と呼ばれる喋り方を聞いて思い出した
あの顔……たしか、翔君の家で見た写真に写ってた人。つまり……
「はじめまして。翔の母です」
「あっ!ど、どうも……ユーリィです」
俺が尋ねる前に女性はそう自己紹介して頭を下げたから、俺も名乗って一緒に頭を下げた
やっぱり!この人が……翔君のお母さん
こんな風に会えるなんて思ってもいなかったから、顔を上げてすぐに翔君のお母さんをまじまじと見た
穏やかに笑っている表情はどこか儚げだけど、息子を見守る暖かさを感じる
こんな優しそうな人だから、翔君はお母さんを大事に思っていたんだな………
「さぁユーリィちゃん。おばちゃんが引っ張ってあげるから、心配せんでこっちにおいで」
翔君とお母さんについて納得してると、彼女は壁から手を出して此方に来るよう手招きした
え。この壁……固そうに見えるけど、スライムみたいに柔らかくて突き抜け出来るの?
まぁ……モノは試しだ……
「じゃあ、フリーダ。俺は……」
最後にフリーダに礼を言おうと振り返ると、もうフリーダの姿は無かった
俺に心配かけさせまいと、行ってしまったのかな……
「………ありがとう!フリーダ!俺の……姉さん!!」
誰もいない空間に俺は精一杯の大きな声で………姉妹にお礼を言った
どうか、この声が届いてますように
そして、言い終わった後に、すぐ翔君のお母さんの手を取ると……
ぐっと強めに引かれ、壁の向こう側に一歩踏み入れた
不思議な事に壁があったような違和感も何も無かったから、本当に突き抜けられたのか?と不安になったが、さっきまで向こう側に居た翔君のお母さんが隣にいて成功したんだ。とすぐに安心した
「大丈夫?ほな、おばちゃんの手離さないでこのまま行くで〜」
引かれて繋がれたままの手は、また引っ張られる
子供じゃないから手を繋がなくても歩けるけどなぁ……そう呑気に思っていたけど
翔君のお母さんは宙に浮かび上がり、俺も浮く………つまり
「え?え?行く先って……この上?」
「そやでぇ」
なるほど……ここは本当に地獄みたいな処だから、生きてる人達がいる世界に行くためには上に行かなきゃ!だもんな………けど
宙に浮かんだ俺達は………
ものすごい速さで急上昇した!!
これは立体起動装置のガス噴射とワイヤーでの移動よりもめっちゃ速い!!
「ぎ、ぎゃああああ〜〜!!!ちょ、なん、はや……!!!」
「長居は禁物!それに早よう翔とユーリィちゃんを会わせたいからなぁ〜」
ああ……なるほど……
この目標に向かって一直線と、猛スピードを恐れない心は……
「(やっぱ、この人は翔君の親なんだなぁ〜〜〜!!)」
翔君と彼のお母さんは外見はあんまり似てないけど中身が似すぎてて苦笑いしていた俺は、彼女に連れられるまま上に上に上がっていると……
急に暗いトンネルから抜け出たように目の前が白い光に包まれ、眩しさのあまり目を閉じてしまった