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劇場はホテルと離れた所にあり、近くで見ると劇場を囲む大きな池が広がっていた

そこに架かる橋を渡り劇場内に入ると、真ん中ら辺の席から「おーい」と手を振る剣持さんと佐木君を見つけた



「せっかくですし一緒に見ましょう!隣どうぞ」

「いいの?ありがとう」



剣持さんと佐木君にお礼を言いながら隣に座ると、金田一君と美雪ちゃんの姿が見当たらないのに気付く



「あれ?金田一君と美雪ちゃんは?」

「それが、金田一のやつがテレビからなかなか離れなくてな……」

「へぇ〜そんな面白い番組が今放送されてるんですね」

「いやいや!有料チャンネルです!」

「ははは……なるほど」



遅れている理由を聞いて苦笑いした

それじゃあ今頃、美雪ちゃんに叱られながら劇場に向かってるんだろうな……



そして数分後、開演で照明が暗くなりかけた時に金田一君と美雪ちゃんが急ぎ足でやって来た



「よかった〜二人とも間に合ったわね」

「はいぃ……なんとか……!にしても、良いところだったけどなぁ〜……」

「も〜……はじめちゃんったら……!」

「ふふっ」



千鶴の言葉に息をきらしながら答える金田一君と美雪ちゃんに私も笑っていると、ステージにスポットライトが降り、カーテンの奥から由良間が出てきた

ステージ上の由良間は列車の時とは違い、上品な衣装を身に纏い丁寧に観客に挨拶をする

殺された山神団長に代わり新しく団長を就任して調子こいてるのか、ずっと得意気な表情でつらつらと挨拶を続ける



「(はぁ……団長が殺されたってのに、よくもまぁそんな風に何事もなかったようにステージに立てるわね。それに今更キャラを取り繕ったって、列車で美雪ちゃんにやった酷いマジックは忘れないから)」



そう心の中で悪態付きながら由良間を睨むように見ているとやがて挨拶は終わり、幻想魔術団のマジックショーが始まった



夕海さんは水を自由に操ったり鍵付きの水槽から脱出したり等のウォーターマジックを披露

桜庭さんは得意の念力で、ひとりでにバチが動いて叩く太鼓を浮かせて見せる

そして、左近寺さんは観客とトークしながらのカードマジックをテンポよく次々と繰り出す



列車の時よりも豪華で本格的なマジックの数々で、凄く目が釘付けになった


だけど……




「(近宮さんの弟子達だから彼女と似たようなマジックが出来るのは不自然じゃないけど……なんだろう。この何とも言えない感覚は……)」



なんだか、近宮さんのマジックを見ている時と感覚が違うような気がして少しだけ首を傾げていると、左近寺さんのマジックが終了し、バニーガールのような衣装を着たさとみさんが次のマジックの案内をした



「さーて、次はお待ちかね!我が幻想魔術団が誇る“生きたマリオネット”だよ!」

「(生きた……マリオネット……)」



セクシーなさとみさんに見とれている金田一君と佐木君の横で私は、ついに噂の仕掛けが全く分からないマジック・生きたマリオネットが見られるんだとドキドキしながら始まりを待った



明智さんの話では近宮さん亡き後に作られたマジックだと言われているけど………あの時の彼の様子から、幻想魔術団に疑惑を抱いてしまう………

あれ?そう言えば明智さんは何処だろう?山神団長の死体確認してから見かけてないけど、この劇場の何処かで見てるのかしら?


期待と何故か募る不安の中、ステージにスポットライトが降りると



椅子に座ってる大きな人形が照らし出された




「あの人形は……」

「ん?どうしたの?」



驚く金田一君に聞くと、あの人形は列車を降りる際に行った荷物検査の時に見かけたものらしい

たしかにあの大きさは一瞬だけ人と間違えてしまいそうだから、死体探してる時に見つけて恐怖だっただろうね……

なんて変な事を考えてると、椅子から立ち上がった人形は天井から繋がれている糸を全て切り、自由になったと喜んでいた



これだけでも驚きは大きいのに、人形は更に縄跳びや自転車の運転までやって見せ場内を驚愕させた


金田一君は最初、黒い糸で操ってみせているだけだ!と人形の動きのトリックを推測したけど、吊ったり支えたりする糸があれば、あんな人間みたいな動きは出来ないと推測を崩されてしまう


その間にも人形は色々やってみせていたのだけど、自転車で運転してる最中に箱にぶつかって転倒し、その衝撃で人形はバラバラになってしまう

慌てた人形はよいしょよいしょと掛け声を出しながら、わたわたと身体を元に戻そうとした

そしたら手と足のパーツが反対にくっついていて、場内はもう大爆笑

このマジックは……なんだか近宮さんらしい雰囲気がある。見る人を楽しませようと魔法で出した優しさのようで………



「すごいわね、生きたマリオネット!」

「ええ、本当にあの仕掛けどうなってるのかしら?」

「ねぇ、金田一君はわかっ………」



千鶴と生きたマリオネットの感想を語り合い、そう言えばトリックを見破ろうとした金田一君は何か分かったのかな?と思い、彼の方を見ると


金田一君は携帯で誰かと話していた

ちょっと。上演中の携帯使用は控えた方が……と注意しかけた時、金田一君の表情が緊張と怒りから強張っているのに気付く


まさか、その電話の相手は………



嫌な予感が頭を過ったと同時だった


突然、劇場内の照明が全て消え、辺りは何も見えない闇に包まれた!

観客達は突然の事に驚き、何が起こっているのかと騒ぎ始める

そんな中、剣持さんが金田一君を呼ぶと彼は立ち上がり、焦りながら電話の事を話そうとした



「オッサン!地獄の傀儡師だ!!奴が――」



席から立ち上がり辺りを警戒する剣持さんに金田一君は先ほどの電話の事を伝えようとした時、真っ暗なこの空間に一本の眩しいスポットライトがステージの真ん中を照らし出す



そこにいたのは………






「(あ、あれは………!?)」




生きたマリオネットに使われた椅子に人形の代わりに何かが座っていた



それは………左胸をナイフで刺されて死んでいる由良間だった!




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