激突!紫色の運命の出会い!?




「う、ウソだろう……?僕が、本気で……こんなヤツに……」



ヴェイグの後ろから覗き込むようにサレの様子を見ると、どうやら俺の一発が相当に効いたらしく、奴はよろめきながら立ち上がる



「………次は本気で叩き潰す。キミ達の……人の心をね!」






そう吐き捨てたサレはすぐにこの場から立ち去った



奴が見えなくなってようやく安心か。と思っていたら、エステルが俺達の方を向いて改めてお礼を言った



「あ、あの。助けていただいてありがとうございます!特にその………狐のお面の方、大丈夫ですか?」

「狐のお面?」

「あぁ。うん。それには色々あったから後で話す」



そう言えば狐の面はヴェイグ達と別行動した時に付けたものだから知らないもんね。はぁ……我ながらアホな作戦だったかな?なんて自己反省しながら真っ二つに割れた狐の面を見て苦笑いをした



「わたし、エステリーゼ・シデス・ヒュラッセインと言います。エステルって呼んで下さい」



ここで初めてエステルが自分の名前を名乗り、一通り自己紹介してると、後ろからエステルを心配する声と共に二人の人物が駆け足で近付いてきた


あれは……!!


間違いない!ヴェスペリアのユーリとリタだ!

どうやら彼らはエステルと行動していた途中でサレの妨害にあってはぐれていたらしい

エステルは俺達のおかげで怪我はない事を伝え、二人は安心したみたいだけど、サレはどうしたのか聞かれたヴェイグは少し難しそうな表情をした



「駐在しているヘーゼル村へ戻ったのだろう。この一件で、サレの監視が厳しくなって、オレの仲間も外には出られない状態になっているかもしれない」



そうだった。エステルを助けようと必死で忘れていたけど、俺達がここに来た目的はヘーゼル村の人達に物資を届ける事だった



「………ごめん。皆。俺のせいで、こんな事になってしまって」



ヴェイグの言葉にハッと気付かされた俺はいたたまれなく、下を向いてしまう



「そんな。レンさんは何も悪くないですよ」

「そうだよ!レンは何も悪くない!悪いのは女の子相手にハレンチな事したサレだよ!」

「あ、そこから知っていたのね」



仲間達は皆、俺を責める事なく心配してくれたりフォローしてくれたりして嬉しかったけど………あの脇腹掴まれたとこから見られていたのを知って、なんだかまた恥ずかしくなった

うぅ……皆の前で公開処刑(デブ晒し)だったのか……



悔しいけど今は落ち込んでる場合じゃないな。いつまでもここに居るわけにはいかないから、今日はもう諦めてギルドに戻り、エステル達にも体を休めるよう案内する事にした



……あれ?ちょっと待てよ

ふいに俺はある事を思い出す




「(行く前に見た雑誌のオタオタ占い……)」



たしか


『オタゲルなあなた!近々運命の出会いがあるかも!気になる人を見つけたら、控えめにするより猛アピールをして存在感を出しましょう!ただし、怪我や思わぬ出費が発生する可能性もあるので気をつけて!

ラッキーカラーは赤・黒・紫』



だった気がする


赤と黒は俺の服装の色でも使われてるし、割れてしまった狐面もそうだ。そして紫は……奴の髪色でもある……


……運命の………出会い?



……いや、ないな。ないない。そんな事ない。所詮は雑誌の占いよ。そんな事あるわけない



俺は一人、首を横にぶんぶん振りながら変な事を考えるのをすぐに止める


今はエステルたちを船に案内しないと……と歩みを進めた












船に戻ってすぐにアンジュさんに森であった事と任務の報告をした後にエステル達の事情を聞くと

あの大森林にはエステル達のガルバンゾ国の所有する星晶採掘地があり、現在サレの所属するウリズン帝国とその土地をめぐって緊張状態だそうだけど、その採掘地で最近になって土地の生物が変化する奇妙な現象が起きて、星晶を取り過ぎたせいではないかって仮説を立てた学者に国の評議会は聞く耳持たず世間を騒がせた罪で学者を逮捕したらしい


その話を事実を知ったエステルが国が動かないのなら、まず自分で調査をしようとユーリやリタのいるギルドを雇って国を出たまではよかったけど、森で迷っていたところにサレが現れて危うくエステルが拐われそうになったり………で、まだその問題の採掘地を見ていないため焦っているようだ

でもアンジュさんが長旅で疲れてるエステル達を心配してまずは休養が必要だと声をかけ、何かあればこのギルドも協力すると言うと、冷静になったエステルは少し落ち着きアンジュさんの言うとおりにする事にした


そうだな………急ぎたい気持ちも分かるけど、晩餐な体調じゃないと何かあった時に対応できなくなると元も子もない


俺は部屋でゆっくりしているエステル達にロックスが作ってくれたお茶とお菓子を運んでいると、ロビーにヴェイグとクレアがいた




「すまない。物資を届けられなくて」

「仕方ないわ。サレがいたんでしょう?でも、今後はヘーゼル村へ接触するのは難しくなりそうね」

「(あ………)」



そうだった。あの任務はクレアからの依頼でもあるし、彼女がすごく気にしていたことだ



「クレア。俺からも本当にごめん。あいつをぶん殴らなければ、まだ村に接触できる機会があったかもしれないのに………」



俺は2人に近付きながら、そう謝罪した



「いいえ。レンは頑張ってくれたわ。ヴェイグから聞いたんだけど、一人でサレの気を引いてエステルさんを助けたのでしょ?」

「それは……まぁなんと言うか……」



クレアもまた俺は悪くないと首を振ってくれたけど、別に俺は気を引くために一人で行動したわけじゃないから、そんな勇気持って立ち向かったみたいに思われたらなんだか申し訳ない



「それに、そもそも私達が村を出てこんな風になったのは私がサレに逆らったのが原因だから」

「え!?」



それはどういう事なのか詳しく聞くと、サレがクレアに自分の身の回りの世話をするよう命令し、村人達から人質にしようとしたらしいけど、サレが好き勝手に村人をいたぶる姿を見たクレアはその村人を庇ってサレの命令に歯向かいヴェイグがそこに助けに入って奴の怒りを買った……それが原因だと教えてくれた

な……


なんだと…………!?



「あんのクソ紫野郎〜〜!!美女を自分の元に置いておいて良い思いしようなんざ、なんて羨ま………けしからん!!それで逆らったからブチギレって………あああ〜〜!!どんだけ女は自分の好きにできるって思ってんだろうね!!勘違い野郎マジキモす!!クレアやヴェイグ、ヘーゼル村の皆は全っっっ然悪くないよ!!」

「レン……?」

「まぁ、その気持ちは分からなくともないな」



おっと!いけない、いけない。奴から言われたのを思い出しながらクレアの話を聞いてしまったから、ついあの時の腹立つ気持ちが甦ってしまい、超個人的な気持ちと一緒にヘーゼル村の皆は悪くないと言うと、そんな俺の言い様に苦笑いするクレアの横でヴェイグは静かに頷いてくれた

そうだよ!あいつが残虐という称号を掲げて好き放題するのが悪い!

次にサレに会った時に「エステルだけじゃなく、クレアにもフラれて苛立つ激ダサ騎士さん!」って呼んでやろう………



なんて一人で考えて笑っていると手に持っていたお茶が冷めると思って、ヴェイグとクレアに「また別の方法で物資を届けよう!俺は諦めないぞ!」と宣言してエステル達の部屋に行った



そう。罪滅ぼしじゃないけど、俺は諦めないし次こそ絶対に成功させたい

アドリビトムの一員として、自分が何の為にこの世界に呼ばれたのか考えながら頑張ろう………






そう決意した数日後、ユーリがアンジュさんにアドリビトムに雇ってほしいと願い出ている所と出くわした


どうやらユーリはエステル誘拐の疑いで指名手配中になってて、しばらくガルバンゾには戻れなさそうだからだ

それを聞いたエステルが自分が城から連れ出して欲しいと依頼したばかりに……と悔やんでいたら、すぐにユーリが「お偉いさんにゃ、真偽なんかどうでもいいんだろ。大事なのは、王女が自ら調査に出たってのを周囲に隠せるかって事さ」とエステルに気にするなとフォローした

そして次に話し出したリタの事情は、国から兵器開発の協力を要請されたのだけど、興味ない上に協力する気もない。ただ、どこかに腰を落ち着けて自分の研究課題に取り組みたいとの事

だから自分もギルドに入りたいと名乗り出た後にエステルにもここに居た方が良いのでは?と提案した



「帰ったら、もう城から出してもらえなくなっちゃうかもしれないわよ」



そう言われて少し考え込むエステルにユーリが隣から



「そいつは、エステル自身が決める事だ」



と、エステルの気持ちを尊重する旨を言った


すると



「わたしは……わたしも、ここで働きたいです!!剣も多少は心得ていますし、お役に立てると思います。採掘場に起こる異常現象の原因を確かめて、出来れば自分の力で解決したいから。まだ、具体的にどうすればいいか、何もわかりませんが……」



と、気持ちをぶつけるように自分もアドリビトムに入る意思をアンジュさんに話した



それを聞いたアンジュさんは頷いて「それについては、みんなで協力して取り組みましょう」と言いながらメンバー登録のために書類にペンを走らせた


こうしてユーリ、リタ、エステルの三人が新たにギルドに加入し、次の課題である“コンフェイト大森林の星晶採掘地跡の調査”の同行者が決まるまで、しばし別の依頼をやって経験値を積む事になった


さてと、俺も負けてられないな!
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