紫色の執念



急に俺の身体がふわっと軽くなったと思ったら、視界がどんどん木の上にいく


つまり、俺は宙に浮いたって事だ!



「え?え?」



なんで急にこんな事に?ジャンプした覚えはないけど、俺はここまで身体能力が上がったのか?



一瞬そう期待したんだけど…………




「やぁお嬢さん。お楽しみのところちょっといいかな?」



木々を見ながら上に登っていく俺の目に………紫の髪に青白い顔の男が映ると一気に心臓がドクリと裏返りそうになった




「えっ!?な、なん……!!な………!!」



なんでお前がここにいるんだ!と言いたかったのに突然の事に頭が今の状況に追い付けず、上手く口が回らなかった



「僕がなんでここにいるかって?」



一方サレは、俺の様子を面白がってるのか愉快そうに笑いながら俺が何を言いたいかわかってると話を進める



「そろそろ感想を聞こうかなぁって思ってね」

「か、感想……?」

「楽しかったかい?僕の贈り物は」



ようやく口から出た言葉でサレに問うと、そんな意味不明な事を言った

贈り物だなんて………俺はこいつから何も貰ってないぞ?

何の事か分からず黙っていると「やれやれ、まだ分からないのかい?」と肩を落とす仕草をしながらサレは続けた



「じゃあ質問を変えるよ。どれが面白かった?天井が崩れて通路が塞がれたのもあったし、刈り取るはずだった素材の持たない魔物しかいなかったり……」

「(ん?それって………)」



奴の言う内容は、俺が嫌な苦戦したクエストの内容と似てる………



まさか!!



「依頼人に待ち合わせ場所変更の嘘の情報流したりしたり、今の魔物退治に苦戦してるのも…………お前の仕業か!?」

「フフッ君は隙だらけだから色々仕掛けられて、こっちも楽しかったよ」



俺の問いにイエスとは言わなかったけど、あの口振りだと自分の仕業だと認めてるに等しい!………と言うか贈り物の感想を聞きにきたって言ってる時点で100%認めてるな!



「はぁ?意味わかんねーよ!!なんでそんな事するんだ!?」

「んー……そうだね。君はヴェイグ達に加担して僕の邪魔したからそのお礼でもあるかな」



何の理由かと思ったら、そんな事で………

まぁ本来の世界であるリバースでサレはヴェイグに負けてからネチネチとしつこくストーカーみたいに妨害していたから、奴がそんな行動に出るのはたしかになって納得してしまうけど



「うわぁ………ここまで執着してきて、こんなしょーもない事するなんて………アホくさ」



怒りを我慢できなかった俺は思わずそう呟くと、足元のバランスが急に崩れて落ちそうになった!



「うわっ!?」

「あんまり生意気な事を言わない方がいいよ?今の君の命は僕の手の中にあるんだから」



サレの顔はニヤけたままだが、その目の奥から背筋がゾクッとするほどの冷酷さを感じた


クソッ………そうだった

俺が浮いているのは、こいつの術のおかげ

もし今落とされたら………と、ふと下に目をやると、俺を追いかけていた魔物達が俺が落ちてくるのを待ち構えていた



「(あの中に落ちたら絶対に助からない)」



悔しいけど反撃のチャンスや逃げ道を見つけるまでの時間稼ぎとして、ここはあんまり奴の反感を買わないようにしよう………



「で、どうなんだい。何が一番気に入ってくれたかな?」

「…………今回のこのホーリィボトルはなかなか驚いたぞ」



渋々と答えてしまったが、サレは「ああ。それね」とまた楽しげに話し出した



「今回はちょっと大変だったよ。君に気付かれないように道具袋を切るだけじゃなく、ホーリィボトルの中身をダークボトルにしたりとかね」



ああ。やっぱあの中身は逆の効果のダークボトルだったか

そこは納得だけど、道具袋を切るところまでやるなんて…………こいつは暇なのか?ウリズン帝国って星晶集めで忙しいんじゃなかったっけ?

またつい「しょーもない」って言いそうになった口をぐっっっと我慢して閉じてると、サレが俺の顔を覗き込んできた



「フフ……何か言いたげだね。構わず言って良いんだよ?」



ほざけ………構わず言って良いとか言いながら、気に入らない答えが返ってきたら魔物のいる地面に叩き落とすくせに

こいつは俺がそんな状態を気にしてるのをわかってて意地の悪い事を言っていると思うとイライラが募ってくる

だけど、我慢だ……!




「お前ほどのお偉い騎士がわざわざ手間隙かけてこんな素敵なお礼をするっつーことは…………さては」

「?」

「手先が器用で細かい作業が得意だな!?」

「………は?」

「(ヤベッ!何言ってんだ俺は!!)」



苛立ちをぶつけないように言葉を選んだら、自分でもこんな状況で問いかけるものじゃないなと心の中で頭を抱えた

サレも「急に何を言い出すんだこいつは」と言いたげに困惑した様子で眉をひそめた



「え、と………俺さ〜魔物討伐の時の罠仕掛けんの下手でね………お前みたいに器用だったら成功できるかな?な〜んて…………」



続けて言った話はもはや友達と話すレベルの内容で、あんまりにもぎこちない話題の振り方に冷や汗がじんわり出てくる

そんなサレはと言うと、「ふぅん」とつまらなさ気に返事を一言

ああ。もうこれまでか……



「ま、僕は君みたいに乱暴な性格じゃないからね。上手くいくかいかないかは、そこで差がつくんじゃないのかな」



お?意外に話しに乗ってくれた………のか?

まさか俺の言った事に返してくれるとは思わず呆気にとられそうになるけど、もっと時間稼ぎしなくては!と会話を続けた

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