突拍子もないトリップ
「………ぇ…………だ…………」
「……………?」
「ねぇ、大丈夫?しっかりして!」
頭上から声がしてハッと目を覚ますと、横になっている俺に対してピンクの髪をサイドテールにした緑色の瞳の女の子が心配そうに見ていた
「あ、や、えっと……これは………」
慌てて起き上がって辺りを見回すと、険しく頂上が尖った岩山だらけ
一体、ここは………
「気が付いて良かった。空から降りて来たんだもん。すっごく驚いたよ!あれは、何かの魔術なの?」
「え?空から?」
「覚えて無いの?あなた、光に包まれて空からフワフワ降りて来たんだよ」
辺りを見て呆然とする俺にピンクの髪の女の子がそう尋ねてきた
「(そうか。やっぱ俺はあの暗闇に現れた光の声を聞いたあとに、足元が崩れたと思ったら大空に落ちていたんだな……)」
だとしても、参ったな………どう答えようか
ありのまま“花火を見ていたら炭酸飲料が目に入ってその拍子に滑り台から落ちたら、真っ暗闇にいつの間にかいて変な光に導かれて空から落ちてきた“………なんて言っても信じる信じないかの次元じゃなくて、理解してはもらえないだろう
ん〜〜〜………しかたない。これしかない
「実は………俺はある軍隊に連行されて飛行船に乗っていたんだけど、そこに海賊の奇襲があって逃げようとしたら窓から落ちてしまったんだ。宙に浮いて助かったのは………この飛◯石のおかげなんだ!」
「えっ!?」
俺は祭りで買ったペンダントを見せながら女の子にそう話した
そう。もちろん。この話は………天空の城の物語を参考にさせてもらったんだ!
だって、めっちゃ高い所から落ちたのに途中からゆっくり浮いて安全に着地したっての………どう考えても天空の城の物語と同じじゃないか!
ついに俺もラ◯ュタの一族の一員に!
「(………って、自分で言っておきながらラ◯ュタの一族は有り得ない話だな。だって祭りで買ったペンダントは飛◯石みたいに青じゃなくてピンク色の珠だから、これはどっちかと言ったら犬◯叉の紫魂の玉だな)」
俺自身も自分の身に何があったか分からないため、自分に納得出来る理由や経緯を探していたから思わずラ◯ュタっぽく話したり犬◯叉系の可能性も考えたけど、どっちもやっぱ無理があるな
…………なんて、ふざけた話しをしたら、女の子はキョトンとして困惑気味に俺を見ていた
「ああ……わりぃ。初対面のやつからいきなりボケられても困ってしまうよな。本当にごめん………正直に話すと自分でもよく分からないんだ。空から落ちたのは覚えてるけど、ここで目を覚ますまでは全然……」
今度こそ真面目に話すと、俺の様子から本当の事なんだと判断した女の子は「そうなんだ……」と困惑した表情のままだったけど、すぐに笑顔で俺が目を覚ましてよかった事を話してくれた
うぅ……優しい子だなぁ〜
…………にしても、初めは気が動転して何も気づかなかったけど、見れば見るほどこの女の子を何か何処かで見た事ある気がする
「私はカノンノ。カノンノ・グラスバレー。あなたは?」
そう女の子は名乗った
カノンノ…………え?カノンノ!?
「えっ!?ちょっ……君!……マジで!?」
驚きのあまりに勢いで出た言葉は途切れ途切れになってしまった
思い出した!ピンクの髪の女の子で名前がカノンノ…………
それってテイルズのマイソロジーじゃないか!!
まさか!俺はテイルズの世界に………トリップ?
いやいやいや!まさかね!そのまさか!
たしかに前にコンビニで立ち読みしたゲーム雑誌で発売がまだまだ先の作品を紹介してて、その中でマイソロジー3の情報を見たんだけど、その時載っていたカノンノのそのまんまだけど、そんな、まさか………!
「?、どうしたの?」
カノンノと名乗った女の子の自己紹介を聞いて、驚きのあまりに変な言葉を吐いて固まっていたけど、ここは一応自分も名前を名乗ることにしよう
「あ、いや、なんでも…………俺はレン」
「レン………いい名前ね。あ、そろそろ船が到着する時間だ。急いで山を降りなきゃ!」
「ん?急ぎの用事があるの?」
「仲間の船が来るの。船に乗ったら、あなたの希望する場所へ送ってもらえる様に伝えるから」
だから、一緒に下山しようと言ってくれたカノンノだけど………俺の希望する場所と言ったら………
「(××県にある◯◯市△△町と言いたいが、ここが仮にテイルズの世界ならあるはずの無い町名だし、さっきふざけて話してしまったせいで、これすら冗談だと思われる可能性が………いや、それ以前に頭がおかしい奴だと断定される!)」
だから、送ると言われてもな………どう答えようか悩んでしまう
「や〜………そ、そう言えば空から落ちてくる前の記憶も曖昧でさ………俺は何処で生活してたのかな?なーんて………」
「え………ええっ!?何もわからないの?んーんんん………それじゃあ、どうすればいいかな」
適当に答えてはぐらかそうとしたら失敗してしまった
カノンノは俺が自分の名前以外記憶が無い人間だと思って、これからどうしようか考え始める
やば………こんな深刻に捉えるなんて思ってなかった。今更「嘘で〜す!」なんて言えないし、第一俺の住む町が無いかもしれないから不用意に言えない。こう答えるしかなかったんだ………ごめん。カノンノ!
心の中でカノンノに謝罪しまくってるとカノンノは、とりあえず一緒に船に乗ってそれから考えよう!と提案してきた
「い、いいの?……うぅぅ!カノンノ、マジ天使!」
「そんな、大袈裟だよ」
俺がカノンノの優しさに感動すると、彼女は俺のリアクションに微笑む
そして、下山しながらカノンノは俺に話した
「ねえ、レン。ひょっとしたら、あなたは記憶喪失なのかもしれないね。何か、原因があって………そういう状態になっているんじゃないかなぁ」
「そうか、記憶喪失か………ん〜自分で言うのもなんだけど、あんまり重症ではないと思うんだけどね。こんな感じの記憶喪失なんてあるのかな?」
「わからない。それこそ、理由や軽度は色々あると思うから………でも、あなたがこの山へ降りて来た時以前の記憶が無い所をみると、あなたを包んでいた光に原因があったりするのかなぁ」
俺はカノンノの言葉に「ん〜どうだろ?」と答えながら、また彼女に対してものすごく申し訳ない気持ちになった
その俺を包んでいたって光はおそらく、トリップしてきた時の移動手段みたいなもので、全然記憶喪失と関係ないと思うんだけどね!
そして、俺は記憶喪失じゃなくて、本当の事を隠しているだけなんだけどね……!!
「レン?考え事?」
「え!あ、まぁ……何か覚えてる事ないか頭ん中を巡らせてみたけど、あんまり……はははっ」
「………うん。今は、無理に思い出そうとしない方がいいよ。あなたが良ければ、これからどうしていけばいいかを一緒に考えるよ」
「カノンノ……ありがとう」
そうこう話してる内に、開けた場所に出た
ここに船が?そう思って見渡すけど、それらしき物は見当たらない
それに“船”って言ったら、海に出ないと無いものだし………
と、考えてると、何処からかエンジン音が聞こえてきた
「船が来たよ!」
そのカノンノの声と共に上空を見上げると
空に浮かぶ大きな機械がゆっくり降りてきた!
あれは………間違いない!
「(バ………バンエルティア号だーーーー!!!)」
船と言うのは………空と海の両方を自由に移動できるあの“船”だったか!