黄泉竈食ひもカニバリズムもできるまなざし

2021/02/01
届かない365通の手紙‖短く真実を語るというのはとても難解であって、茶葉を香らす15時の喧騒に少し似ている。なのにどうしてかそれを辞められないのは恐らく、長ったらしい愛の言葉なんて笑い飛ばしてしまう位に君の笑顔が全てを物語ってしまうからだ。


2021/01/31
戯言は戯言だと思うからそうなので私にとってはそれがすべてだったりもする‖まるで不幸そうに涙を流す君の横顔ははるか何億光年だって届くくらいに美しくて僕はもうきっと飲み込めそうにないんだよ。あぁ、食べ過ぎた。


2021/01/30
檸檬の果肉を流し込む‖そのために人が死んだと聞くとどうしようもなく特別なものに感じられ、わたしも例に漏れず、そのオルゴールを手元に置きたいと思った。


2021/01/29
太っても痩せても指輪のサイズは変わらない。それが悪い、そういうわけである。ふと目をやったらその時にはもう失くなっていたのである。‖寂れた公衆電話がそれだけで嬉しくて、整理なんかめったにしない汚い財布をひっくり返した。ガムを包むために取っておいたレシートや、どこのか分からないポイントカード類を掻き分けて少しよごれた未使用のカードを引っ張り出す。電話をかけよう、と宛てもないのにそればかり考えていた。


2021/01/28
この国の人間は勝手にいなくなるのが好き。‖彼女はいつもなにかを探している。それは次の授業で使う教科書だったり、校舎の側の木にできた鳥の巣だったり、付け根からぽっきり折れた人形の脚だったりする。


2021/01/27
レンガを好きなように積んだ、子どもの落書きのような家だった。‖大人という生き物がいると思っていた。犬がいつまでも犬であるように、途中で猫になったりしないように、自分はいつまでも子供という生き物なのだと思っていた。


2021/01/26
怒らないで聞いてね、と前置きした彼女に悪気はあるのだろうか。‖世の中の女が全てそうであるみたいな言い方しかできない男だったから、いつか刺されて死ぬのだろうと思っていたが、まさかこんなに早く現実になるとは。


2021/01/25
白い指が操り人形みたいに動いて、地球儀のつるりとした表面をなぞるのがたまらなく怖ろしかった。‖「自分がされて嫌なことは人にしちゃあいけない」ってママは言うけど、だったらあたし、誰にもやさしくできないわ。


2021/01/24
緑色のゾウになって、優しい人間を好きになり、恋の痛みに苦しんで死ぬ夢を見た。‖君は視線だけでは愛は伝わらないと言うが、だとしたら八年飼っているあの金魚にはわたしの愛が微塵も伝わっていないのだろうか?


2021/01/23
「目から鱗が落ちたようだよ」‖先生は口から鱗を落としながらのたまった。食に対しての興味や知識の引き出しを全てその他のために空けてしまった先生は、その鱗のことは塩か脂か何かの塊だと思ったらしかった。鱗は再び先生の口の中へ戻され、やがて「不味い」と評価された。


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