記録 ルルイエにだって暖炉はある2020/11/23 それは美しすぎる未開な青春‖ごめんね、わたし、思ってもないこと言えるんだ。君は本当に痩せて可愛くなったし良い女だから絶対幸せになれるよてかなってほしい! 2020/11/22 あの坂の上に花園があったの、確か。‖この部屋に溜まった歴史がわたしを攻撃する/あの子は守られていた暮らしたちの事を思ってそっと泣いている/秋雨なんかはまるでぬるい/痛い季節を痛い目つきで待っている 2020/11/21 秘密のカラオケ‖「気をつけてね」の意味がわかるようになったよ。ふとしたよそ見によって、あなたが大変な事故に遭ってしまわないように。些細な考えごとのせいで、クルマに轢かれたりまして轢いたりしないように。唯一無二のだいじなあなたが、今日も無事に帰ってきますように。 「気をつけてね」の美しさと切なさを、今日すこし理解したんだよ、母さん。 2020/11/20 足音のしない海だ、あなたが恋しい‖二年前も、五年前も、十年前も、こうして同じベッドに横たわって同じ刹那さを感じていたんだと思う。 2020/11/19 飛び込んでしまうから‖気をつけなくちゃいけない。飛び込んでしまう。腕をギュッとしていないと、黄色い線の内側で待っていないと、片足で踏み込んで舞い上がっていく。からだが浮く前に気づいて、飛び込んでしまう前に気づいて。 2020/11/18 騙し方‖ギュッと頬を包む。この時、黒目を逸らさない。舌を出す。おどけたマジの姿勢を作る。凹凸の事を想起する。そしてそれを共有する。ちょっとだけニヤリとする。空中に浮遊させた意図を掴むように瞬きする。「ねえもう眠いよ、だから帰れない」 では、もう一度。 2020/11/17 スポットライトと非行少年‖駅前のやよい軒やサイゼリヤやジョナサンや大戸屋を想っていつか泣くのかもしれない。私たちはそうなのかもしれない。 2020/11/16 きみの幸せがゆるせないよ絶対‖あなたが普通の女になってしまって1年が経つ。自由で可愛かったあなたが、今では息子の写真ばかり撮っている。「甘くて高いクリームソーダを飲もうよ」またいつかね。 2020/11/15 捨てられない女‖真夜中になると女はいつも考えるのだった。それは宇宙の行く先についてだとか、どうしたって憎い人の愛し方だとか、手を挙げて横断歩道を渡らなくなったのはいつからだっただろうかとか。それらは日によって変わった。散らかりっぱなしの部屋を掃除することよりも、彼女は熟考を選んだ。男の子の良いところについてだとか、抑えきれない本能に対する理性の働かせ方だとか、大好きなあの人をどうすればなんとも思わなくなれるのだろうかとか。それらをじっくり考えながら女は泣いた。泣けば泣くほど悲しくなって、ついには大きな声でおうおうと泣いた。(やっぱりね、) 泣きながら女は思う。(わたしはやっぱりまだ神様を捨てられない。) 今夜も結論は出なかった。 2020/11/14 服を買う女‖赤か黒か。問題はそこにあって、二者択一のオルタナティブ。彼女は二つのまったくおんなじリブのサマーニットを右手と左手に乗せ、きらんとした黒目を右手と左手にもっていく。赤か黒か。どちらもまったくおんなじに素敵。あとはもう好みの問題でしかないのは明白。女はふと思い出す。(こんなこと、つい最近もあった気がする。) 彼女は先日男二人を天秤にかけ、悩んだ末に一方を選んだのだった。優しくて誠実な男と、夢はあるけど金のない男。どちらも等しく好きと思っていたのに。赤か、黒か。(服はまたもう一方を買いに来ることができるけど、人生はそうはいかないのだわ。) 女は右手の赤を左手の黒の上に乗せ、そのまま二つをレジに運んだ。 ;prev or next ☂top page |