ノーチラス号のかたちを真似た瑕瑾

2021/05/21
さみしんぼのエトワール‖わたしの視線を差し上げる。この水の中で眠りなさい。時代は拍手の中の夢、わたしはいつかあなたを酔わす。


2021/05/20
嫌われるくらいなら僕を好きなうちに死んでほしいよ‖私は自らの渇望を愛と呼ばなかったが、それと同等の意味があった。私の魂を繋ぎ留め、守る、重さと熱さとがあった。私の中にもあったのだ。


2021/05/19
どうしてこんなに良くしてくれるんだい?殺してほしい奴がいるとか?‖僕らはみんな自惚れ屋だ。この世で自分でなければならないという強みなど何も持っていやしないのに,自分が誰かに選ばれると思っている。


2021/05/18
彼女は心の柔らかなところを弱点と呼ぶ‖父親ってのはそりゃ悪魔みたいな生き物さ。だがね,お前にその悪魔の気持ちが分かるのか? まだ何もできないしわくちゃの,怪物みたいなお前を,重すぎる命を,受け止めてしまった悪魔の恐怖が?


2021/05/17
ぼくを女の名前で呼ぶんじゃない‖ああ、思い出した。夜中に両親の寝室を覗いたのは、雷が怖かったからだ。ぼくが嵐の夜に独りぼっちだったのは、母も雷を怖がったから。父は震える母を慰めていたんだろう。今のあなたみたいに。


2021/05/16
やがて訪れる歓喜と祝福‖死肉をついばむ禿鷲共の敷いたレールを走るか? それとも、俺と行くか?


2021/05/15
針を上げて今夜はおやすみ‖この世を堪能した人間から順に死ぬのさ。だから大抵は老人が死ぬが、時々太く短く生きる人もいる。可哀想に、お前はいつまで彷徨うつもりだ?


2021/05/14
一生忘れないと誓ったことを忘れながら生きていく‖ひとたび生まれ落ちてしまえば私たちには免れようのない宿命が待ち受けている。血はその証したる枷鎖。永遠に解けない呪縛。体を這い巡る不条理。


2021/05/13
男は霧のように鍵穴から忍び込み、眠る女を静かに殺す――熱烈な官能と冷徹な理性。またの名を、悪意。‖奇跡のような魔法。古き良き時代。懐かしいぬくもり。欲しかった家族。まだ歳若い自分。もう一度やり直せる人生。食後のアップルクランブル。雪景色の静かの森。美しい城。煙。メフィストフェレス。あなたの胸をときめかせるものすべてが憎い。


2021/05/12
spooky band‖男は霧のように鍵穴から忍び込み、眠る女を静かに殺す――熱烈な官能と冷徹な理性。またの名を、悪意。


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