ルルイエにだって暖炉はある

2020/04/29
さよならありがとうだいすき‖はじける花火に足をひたして、僕は最後の夏にさよならをする。氷枕の中にはホッキョクグマが溺れかけてるんだって、あなたは本気で信じていたみたいだ。まぶしさに目を覚ますカーテン越しの朝日とか、たくさんのゼリーを重ねたみたいな海の色とかぜんぶ、忘れたくないなって祈るそばから忘れてくんだ。


2020/04/28
気ままな風が吹く‖あなたは私を見ていたと言う、そこに本物の私がいるかどうかなんて重要じゃない。今夜の海は騒いでいる。「嫌なら、来なけりゃいい、」タバコの煙ひとつ吐いて、他人のものになった男が冷たく笑った。よそいきの髪が海風に乱される。ブーケが塩に溶けますように。なりそこないの花嫁は、今日、死んだ、


2020/04/27
一秒ごとに求める‖冥土の海も青いのでしょうか。あとを引くのはあなたの声です。闇に浮かぶは淡い人魂。白い炎の輪郭、崩れて、うたが聞こえる。賽の河原にひらめく子どもらの指、顔は見えずに手ばかり浮いて。まるで哀しい花吹雪。あなたの未練が鎖になって、私の首を締め付けます。ああ、苦しくって私、鬼になりそう。


2020/04/26
空走る雲みたいに‖窓ぎわ、色とりどりのガラスモービルが光っていた。薄い琥珀糖みたいな硝子が触れ合っていた。結晶化された君の温度。顔も、声も、笑い方も思い出せないのに、平熱だけ覚えてる。君の手は夏も冷たかった。心があたたかいからよってうそぶいた君。君を忘れた僕の手は熱い。僕はまた君のいない夏にいる。


2020/04/25
うたた寝したら君の夢を見たよ‖あなたの目で見た世界は青みがかっていて、割ってしまったラムネ瓶を思い出します。あの時あなた、ひどく怒って私をぶちました。怒鳴り声すら懐かしいのです。ツンと痛んだ鼻の奥、まだ甘い匂いがする。ゆらゆら真水に揺れるあなたの目玉が海を見る。眼窩が懐かしいのでしょう。一緒にあの夏に帰ろう、


2020/04/24
見慣れた笑顔が苦しいの‖恋愛は幻想。誰に求められずとも生きてください。真顔で言える君は残酷。すがすがしい。来世は私、人魚になりたい。君が呼吸をやめてしまうほど美しくなりたい。美しい人は幸せって取り返しのつかない誤解。きれいは哀しい。人生はコンプレックスの病巣。それでも私、生きなければならないのですから。


2020/04/23
ラブの嵐‖寂しいなんてとんだ贅沢、ねむたいなんて麻痺した呪文、好きだよなんて甘いサーヴィス、あたしが痛いなんて泣いたら、あなた笑いながらぶってよ、もうどこにも行けない、行きたくもない、頑張って昇ってたはずの階段を狂ったように笑いながら転がり落ちるような、そんな恋がしたいの。あたしおかしい?


2020/04/22
桜ひらひら‖恋は呪いだ。駅前であなたとよく似た人を見かけた23時、わたしの心臓が音を立てて凍った。まだこんなにも君に支配されてる。だけど鎖の先には誰もいないの。ねえ今どこかで誰かと笑っていますか。お幸せに。ああ、本当は不幸でいて欲しい。私よりもずっとずっと不幸でいて欲しい。簡単に忘れないでよ。


2020/04/21
トランペットが切なく鳴り響く‖どうしようもなく寂しい夏の夕暮れは君の匂い。忘れたいことばかりでできていました、ぼくの人生は。一瞬のきらめきがほかの全部をゴミにする。あの瞬間だけで生きていられたらいいのに。あの時消した君の名前、どんなにスクロールしても見つからない。暗い部屋で一人、指先だけがいたずらにすり減る。


2020/04/20
あるいは遺言‖雨上がりの空に夢を見ていた。ぼくの顔と同じ大きさの蝶々が飛んでる。君はまとわりつく無数の蝶々を少しだけ鬱陶しそうに、でも指一本動かさずになされるがまま。ほら、これはおばあちゃんの魂、あの赤いのはおねえちゃんの魂、この青いのは昨日死んだ野良猫の……。皆無言でひらひらと、ひらひらと。


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