記録 "6EQUJ5"のための三時のおやつ2020/04/09 まぼろしのすきま‖君のかけらを捨てられないよ。毛玉だらけ、かたっぽだけの靴下、初めてのデートで履いてた靴下。閉館まぎわの水族館、おそろいで買ったキーホルダー、プラスチックのイルカは取れて、うすよごれた紐だけがケータイにぶら下がってる。ぜんぶ未練がましく抱えてる僕も、君にとってはがらくたなのかな? 2020/04/08 ふれたい鎖骨‖君の影に焦がれる僕のこと。マンションの窓がランダムに光ってる、君の部屋はまだ暗いまま。さげすむのなら神聖な愛を教えてください、執着ってそんなにきれいなものですか。いちばん気持ち悪いのは誰?君は僕の存在すら知らない、君にとって誰も彼もがどうでもいい、君は今夜も冷たい鏡にキスしてる。 2020/04/07 ぼくらしたたる‖むなしくなるのはなんでかな。ベランダのバルコニーからひとり見上げる月は、君が日曜日に切ってた足の爪みたい。丸くてつややか、フローリングに置いてけぼりの、色つきの君の死骸。のんでやろうかと思って、むなしくなって、やめた、のむなら君の目の前にしよう。おびえた顔を僕に見せてよ。 2020/04/06 墓場まで‖君がいなくなるの寂しいって、それがちっとも本気じゃなくても、ただのリップサービスでも、その一言だけで生きていける気がしてしまうな。 2020/04/05 離れられない旅‖この寂しさがいつか僕の喉の中で花を咲かせる。手で触れられそうなくらいたしかなむなしさ。また今日が少しずつ死んでいく。水中みたいなバスプール、いつもより少し長いバスが深海魚みたいに回ってる。行きさきの表示されないバス、回り続ける案内板、同じ顔した人々の群れ。満員なのにひとりぼっち。 2020/04/04 とびきりしあわせな終末‖どうですか。お金ではかれそうですか。ほんとうに一瞬だけ、世界で一番幸せだと思えるあの瞬間のこと。消費されていくすべての中では約束なんか紙きれ、絶対壊れないものなどどこにも無いので、今夜一緒に海に行こうよ。目に見えるもっとも永遠に近いもの。僕らは花火だ、戻れないからきっときれいだ。 2020/04/03 ペチカのそばへ‖どうして笑うのですか。この心臓を刺しつらぬいたってばしゃばしゃと血があふれるだけで、生きている、なんて感覚どうしたら分かるようになるんですか。あの子可愛いねって言えなきゃ失格ですか、あの人かわいそうだねって泣けなきゃ罪ですか。人間の普通免許を欲しがる僕を今すぐ君が裁いておくれよ。 2020/04/02 あるいはさようならのふり‖僕には見えないキリトリセン、好きと依存の境界を、熱中と中毒の境界を、愛と執着の境界を、白いチョークで引いてみせてよ。そこに答えはあるのかないのか、きっと狭い黒板になんか書ききれないので、屋上から夕暮れの街を見下ろしましょう。流れ星だってきっと見えるよ。だから先生、ここでキスして。 2020/04/01 終末のすきま‖寒いと寂しいはよく似ているので、昨日捨てたものをゴミ箱から拾い上げて大切に抱えるような支離滅裂さも許してほしかった。少しずつ重たくなっていく僕の背骨はいつか砂漠に沈む。宇宙ゴミになりたかった。永遠にさまよう世界のかけら。がらくたの真ん中で途方に暮れる、それが愛だと誰かが言った。 2020/03/31 はだかのままいきてみようよ‖「いいですか。いかに透明であるか、ということが重要なのです。つまり、いかに『同じ』になれるかということです」先生の声は無機質で平坦だった。「争いは異質さから起こります。個性を、賢く隠す必要があるのです」 今年から始まった「没個性」の授業だ。ひたむきに話す先生の足元には、影が無い。 ;prev or next ☂top page |