記録 黄泉竈食ひもカニバリズムもできるまなざし2019/12/31 醜悪な男女‖大好きなのに大嫌い。愛しているのに愛していない。言葉だけではなんとでも言えるわよね。でも私はそれでいいの。欲望だけの探り合いなんてみっともないだけなんだもの。 だから貴方がキスしてくれたら私はそれで手を引くわ。 2019/12/30 どちらかが、どちらかを‖熱いのかぬるいのか、冷たいのか。もうどうだって良かった。少なくとも、ただ今この瞬間だけは、バスルームは静寂で包まれていたのだ。呼吸さえも聞こえない静寂で。 2019/12/29 地球の中心におはようと言った朝は‖私たちが死んだ後で、本当の意味で世界は生きるのだろう。本当の形を取り戻した世界は、やっとこれから始まるのだ。死んだ世界が生き返り、私たちは滅び、これでやっと、元の形に戻る。私たちでさえ、元の形に戻るのだ。 そして世界は、穏やかに生と死を迎える。 2019/12/28 雪って言っても片栗粉を踏んでるみたいじゃない‖凍えた声は音になっただろうか。なんとも言えない掠れた声だったかもしれない。音なんて出ていなかったかもしれない。冷たい身体を抱きしめて、このまま僕も、雪になってしまいたい。 2019/12/27 頭がかち割れそうなくらい考えて悩んで悩んでもちっともこっちを見てくれない‖さよならはこれで最後にしよう。そう思って書き始めた文字の羅列は思ったようにはいかなかった。思い出を文字にするのはとことん骨が折れた。そのうち考えるのをやめて、どうにでもなれなどという曖昧な気持ちでいると、いつの間にかペンは紙の端まで来ていた。もはや書くことも書く場所もなくなっていた。 この文字は震えてはいやしないだろうか。この文字に、水が滲んではいないだろうか。 と言ってはみるが、どんな形になったにせよ私は、便箋を変えるつもりなど毛頭なかったのだ。 2019/12/26 ぽっかり空いた傷口にはバターを塗りましょう‖誰が皿の端などに注意を向けるだろうか。彩りに過ぎないと思われたが最後、それは食べずに、そもそも気も向けてもらえず捨てられるのだ。わかっていた。 きっと彼にとって私はそんな存在なのだ。 2019/12/25 飴玉の雨を舐める‖眼前にはただただ白い雲があった。それとひとり、女がいた。ぱくぱくと口を動かしているように見えるが如何せん音が聞こえない。ただ白い雲と何かを喋っているらしい女のみが自分の見える全てであった。おかしな事に自分は女を知っている気がした。顔に見覚えはないし名前もわからなかった。ただ、女の何とも言えぬ髪の色だけが自分の脳裏をかすめて何かを燃やしているようだった。 2019/12/24 幻視の光‖美しく着飾った私は夜の海へと沈む。光がないとばかり思っていた海は存外きらきらと、月光がただどこまでも照らしていた。そこは無機質な海などではなく、何処か煌びやかなステージのようで、なんだかいけないものを独り占めしているみたいでわくわくした。私だけの、きっともう私だけの舞台。 2019/12/23 きれいごとの戯れ‖泣けば何かが変わると思った。言葉に出せば変われると思った。全然そんなことなんてなかった。結局出てきたのは、愛しいあなたへの恨みつらみ。 2019/12/22 永遠を捧げる時間がない‖今日も綺麗ですね、と言ってみた。当たり前でしょう、と返ってきた。 それだけ、たったそれだけのことだ。いつもみたいに屈託ない笑顔が帰ってくることに安堵している自分がいる。何故だか彼女は死なないのではないか、という浅はかな考えが浮かんでは消えた。ただ自分よりも長生きすることは明白な事実だった。 ;prev or next ☂top page |