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6年生は例にもれず全員が成人を迎える。月日は違えどね。
いつものメンバーの中で唯一成人をすでに迎えていたタイリーに追いつけると、最近のフレッド達はいつもウキウキとしていた。
そのウキウキがさらに助長されているのは、もちろん彼等の誕生日が近いからというのもあるけれど、一番は多分『姿くらまし』の試験があるからだろう。魔法界では、成人した魔法使いは姿くらましをする事が可能となる。マグルでいう運転免許みたいなものだ。

ホグワーツでは、その姿くらましの試験を受けるための講習会が開かれていて、何度かその授業を繰り返し受けていた。

「これが使えるようになればどこにでもいけるな相棒」
「あぁ。好き勝手し放題だ」
「やめておけ」

練習をしながらも余裕の表情で姿を消しては見せる双子達に、タイリーが呆れたように言葉を返す。それでも確かに、これが使えれば日本からイギリスに余裕で行けるようになるだろうし、皆と夏休みの間に沢山遊べるだろう。

「はやく試験をパスして、日本からイギリスに飛びたいな」
「でもヒヨリイギリスと日本じゃ距離が遠いから難しいわよ?」
「あ、そっか...」

姿くらましをする上で大切なことは3D。3つのDだ。

どこへ、どうしても、どういう意図で。
これら3つを頭の中でしっかりと考えることができれば使える。だから、イギリスに行きたいと考えれば理論的にはいけるけれど、やはり距離が遠ければ遠いほどそれは難しい。
アリシアに言われた言葉にがっくりと肩をおとせば、タイリーが少し笑いながら私の肩を叩いた。

「ヒヨリなら、大丈夫だ」
「そうかな?」
「あぁ」

まるで自分の事のように、自信満々にそう答えるタイリーに、思わず笑みをこぼして頷いた。今年の夏休み明けは、姿くらましであっという間に駅に現れる事ができるだろう。心の中で小さく「やった!!」と叫べば、私達二人をみていた5人に、生暖かい目を向けられた。












季節は過ぎて、姿くらましの第一回の試験が行われた。春の暖かい日差しに囲まれながら、魔法省の人間の前で姿くらましをバシッと決める。
言って仕舞えば、こんなに一番簡単だと言っても構わない程の呪文を失敗する方がおかしいと思うのだけど、なんと双子達も同じ事を言い出した。この二人と同じ事を思うなんてやっぱり嫌だなと少し失礼なことを思っていれば、ジョージに思い切り背中を叩かれた。

「ま、これで無事に全員合格したわけだ。夏休みは楽しみにしてるぜ、二人とも」
「いつでも遊びにこいよな」
「今度は俺たちがおもてなしだな〜」

無事に全員合格して、晴れ晴れとした気持ちで歩きながらホグワーツへ戻る。私とタイリーの前を歩きながら、そう話している3人を見る私の隣では、アンジーとアリシアも目を細めて笑っていた。

「おいしいもの沢山用意してるわ」
「ほんと?」
「えぇ、もちろんよ。貴女の好きなものをたくさんね」

ウィンクを1つ私に飛ばしながら、アンジーは前にいるフレッドの元に歩いて行き、彼の腕に腕を回した。

「熱いわね、ほんと」
「でもそれが、あの二人らしいよ」
「その通りね」

見てて清々しいほどにあの二人はどこでもイチャイチャしてる。でもそれが、元気溌剌なあの二人らしいところではあるんだけどね。

不意に隣で歩いているタイリーの手が伸びてきて、私の掌を包んだ。
突然のその行為にびっくりしたけれど、彼はこっちを向かずに前を向いたまま歩いていて。その視線はまるで、フレッド達が何か悪さをしないかと見張っている親のようだ。

澄ました顔をしながらも、手には力が込められていて。なんだか、タイリーも男の子なんだなと一人感慨深く思ったそんな春の日、もうすぐそこに、第三の課題が待ち受けていた。













6月まであと1ヶ月。タイリーはちょくちょくセドリックと共にどこかに消えていた。おそらく練習でもしているのだろう。
それに伴って、魔法省の人間が沢山きて毎日のようにホグワーツのクィディッチ競技場で何かを仕立て上げていた。ぱっとみた限りではなにやら緑のものが沢山ある。

「さて、ハリー、準備は万端?」
「んー...どうだろう」

そんな中、私はハリー、ハーマイオニー、ロンの3人を引き連れて中庭にきていた。できる限り呪文を沢山教えてあげるべきだろうなと思ったのと、最後の守護魔法をかけようと思ったからだ。

「これで守護魔法は最後だけど、今までの分の守護魔法も君にはかかってるから、大丈夫だとは思うんだけどね」

1年生の時からずっと何回も、ハリーには守護魔法をかけてきてるから。別に今回魔法をかける必要はないんだけれどね。

「じゃ、目を瞑って」
「うん、いつもありがとうヒヨリ」
「気にしないで」

最初に出会った時はあんなに小さかった(言い過ぎかもしれないけど)ハリーも、気づけば大きくなっていて。私よりも少し頭が飛び出るぐらいには大きくなっていた。

「この守護魔法って一体どうなってるんだ?」
「しっ...集中してるんだから静かにしなさい」

ロンとハーマイオニーの声が遠くに聞こえる。彼の頭を両手で包んで、ゆっくりとながれこむようなイメージで魔法をかける必要があるから、この守護魔法はある意味で、一番集中力が必要だった。学年1優秀なハーマイオニーだからこそのそのフォローは、彼女らしくて思わず小さく口角をあげる。

「...はい。終わり」
「ありがとう...」

ハリーの頭から手を離して、彼を見れば、ハリーは手を何度か開いたり閉じたりと繰り返した後に目をぱちぱちと瞬いた。
そして、隣に立ってハリーを心配して見ているロンに、ハリーは笑顔で声を掛ける。

「ヒヨリの守護魔法は、暖かいんだ」
「暖かい?」
「ハリー、どういう事?」

守護魔法にもいろんな種類がある。どの対象にかけるのか、どんな守護魔法をかけるのか。術者の思いや過去とかも関わってくるから、本当に人それぞれなのだ。その中でも、私は人を守る守護魔法を持っているから、きっと他の魔法とは少し違う。

「暖かいシャワーを浴びてる様な感じさ。そういえば...タイリーの守護魔法も暖かいんだ」
「タイリー...?かけてもらった事あるの?」
「うん。一昨年にね」

ハリーのその言葉に思わず目を見開く。なるほど、ハリーは一度タイリーに守護魔法をかけてもらっていたようだ。彼と私の魔法は本質が違うのに、かけてもらった張本人に同じだと言われるのは、なんだか少し嬉しかった。

「ハリー、第三の課題頑張ってね。貴方ならきっと、優勝を狙えるよ」

ハリーという後輩ができてから幾度となく何度も行なった行為。彼のやわらかい髪質に手を置いて優しく撫でる。こんなに勇敢で謙虚な子が、なんで大変な目にいつも合わないといけないのか。

どうか、最後の課題も彼の勇敢な行為で優勝に導いてほしいと。そう、いるかはわからない神に願わずにはいられなかった。


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