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グリモールド・プレイス12番地。ヴォルデモートの復活を予期したダンブルドアが、不死鳥の騎士団を再建した。ここは騎士団の本部で、ハリーの名付け親であるシリウス・ブラックの両親の本家。あんまりにも埃とかが舞いすぎてて汚いものだから、俺達子供で片付けを手伝ってるんだ。

本当は俺たちも不死鳥の騎士団ってやつに入りたいんだけどさ。俺達は子供だからって、ママ達がいれようとしないんだ。もう成人してるのにな。フレッドと二人で不満たらたらだよ。ま、それでも俺達にはこの伸び耳があるからいいんだけどよ。

「...お、アンジーから手紙が来た」

いつも通りフレッド達と一緒に部屋を掃除してた時のことだ。もうかれこれここに何日すごしてるのかは分からないが、久しぶりにフレッドの元に梟が一羽やってきた。

「はいはい、お熱いことで」

付き合ってあともう少しで一年か。休暇中も絶え間無く連絡を取り合ってて、仲良しな事で見てて微笑ましいものだ。るんるんで梟から手紙を受け取り、片付けを放り投げて窓際に座り込んだフレッドを、ジニーが咎めた。が、恋人からの連絡だ、呆れてはいるが誰も文句は言わないさ。

「...はぁ?」

と、思った時に急にフレッドの素っ頓狂な声が部屋に響いた。何事だと、全員が取り掛かってる作業を止めた。俺も手に持ってた荷物を一旦床に置いて立ち上がる。

「どうした相棒」
「おいジョージ、これ見ろ」

フレッドはそう言うと、読んでいた手紙を俺に明け渡し、急いで部屋を出て行った。一体何事だ。残された俺も他の奴らもポカーンとしてる。でもあんなに急いでる相棒を見るのは珍しいことだ。慌てて俺も、手の中に無理やりつかまされた手紙を覗き見た。


『親愛なるフレッドへ。ごめんなさい、話したい事は沢山あるけれど、簡潔に要件だけ伝えるわね。

ヒヨリとタイリーが、日本から逃げて来たの。夏休みが終わるまで二人を匿ってくれないかしら。漏れ鍋にいるわ。できれば早く、来て欲しい。

アンジーより』

気づけばその手紙を床に投げ捨てて、俺も部屋を出ていた。階段を慌てて駆け下りて、リビングにいるママの所に行けば、俺と同じ事を考えていたのだろうフレッドが、支離滅裂な言葉でママに話しかけてた。

「お願いだよママ!!」
「なんなの!!しっかりした言葉にでいいなさい!!」

ママの言葉も最もだ。きちんとした言葉で話せよとは思うが、俺も焦っているためにきちんとした言葉じゃないけどそこは無視して欲しい。

「ママ僕からもお願いだよ」
「まぁ、ジョージまで!!一体何事です!?」
「友達二人をここに連れて来たいんだ!!」
「友達って?」

いつのまに俺達の言い合い(の様な話し合いの様な)を聞いていたのか、シリウスとリーマス(先生とは呼ばないで欲しいと言われたから呼び捨てだ)が、扉の近くに立ちながらそう聞いてきた。

「ヒヨリと!!」
「タイリーさ!!」
「Ms.陸奥村とMr.シェバンか...どうしてその二人を?」
「あの二人が!!」
「助けを求めてるんだ!!」
「テスト前でも余裕な顔で!!」
「一度もあの陰険スネイプに減点をされていない!!」
「「あの二人が俺たちに!!助けてって!!」」

あの二人は、助けてと素直に言えない奴らだ。いや、きっと助けて欲しいだなんて思ってもいなんだと思う。純血主義だから。使用人だから。次期当主だから。そうやって、あるべき運命を背負う覚悟があって。それに従おうと生きてた二人を、何かから助けてやりたくて俺達は勝手に動いたり励ましたりしていたのだけど。でもそんな事を無しにしたって、日本から逃げ出すだなんてよっぽどの出来事だ。

「おば様、私達からもお願いします!!」

事の重大があまりママには伝わっていない。一体どうしろっていうんだ。こう言う時頭のいいヤツは冷静でいられるのか?だとしたら不思議だ。フレッドと顔を見合わせて、どうしたら伝わるのか心臓をばくばくとうるさく鳴らしながら呼吸を荒くしている時、扉のほうからハーマイオニー、ハリー、ロン、ジニーの足音が聞こえて、ハーマイオニーの凛とした声が部屋中に響いた。

「まぁ...貴方達まで、一体どうしたというの...?」
「詳しくは私達が話します...!!だからどうか、二人を行かせてあげてください!!」
「ママ、僕からもお願いだよ!!」
「モリーおばさん、僕からもお願いします!!」
「ママ...!!」

ママの所に駆け寄って怒涛の様に話しかけにいく後輩に弟達を見る。あぁ、ありがたい。俺とフレッドは杖を握りしめて、ママの顔をじっと見つめた。

「...アーサー、貴方から言ってくださいな」

パパを見る。目を見開きながら俺達を交互に見てて、そしてふぅと息を大きく吐いたパパは、コクリと首を縦に振った。

「「ありがとう!!」」

そうと決まれば早く行かないと。今にでも姿くらましをしようとフレッドと顔を見合わせた時、シリウスの「待て」という声が俺達を止めた。

「これを持って行け」

渡されたのは羊皮紙だ。これをヒヨリたちに見せたら燃やす様に、と言われてしっかりと頷く。この場所は魔法がかけられてて、場所を知ってる人にしか入る事はできない。受け取った羊皮紙を強く握りしめて、俺とフレッドは本部から文字通り消えた。









目を開ければすぐに、漏れ鍋が見えた。見慣れたそのパブの扉の前には、2年前に俺達が日本に行った時に乗せてもらった"ウミツバメ"が二羽そこに座っていた。なんでここに...?そう思ってもいれらないので、俺とフレッドは勢いよく扉を開けてタイリー達の姿を確認した。

まだまだ夜更けという言葉を知らないのか、漏れ鍋には人が沢山いた。行き交う人々の中をぐるぐるを回って姿を確認していく。隅の方に置かれているテーブルだけ、やけに暗い雰囲気であることに気づいた俺は、フレッドの肩を叩いて、そっちに向かって歩くことにした。

「...タイリー!!ヒヨリ!!」

予想通り、そこにいたのはタイリーとヒヨリ。寄せあう様に、抱きしめあってる二人の前にはアンジーと、アリシア、さらにリーまでいた。なぜ3人には教えておいて、俺達には教えないのか。少し不満に思った俺の顔でも見たのか、リーが口を開いた。

「見ただろ?ウミツバメ達がタイリー達を乗せてイギリスに来たんだよ。そのウミツバメが、俺とアンジーの家に来てここまで連れて来てくれたんだ」

なるほど。そういうことなら仕方ない。梟便を飛ばしてる訳でもないのだし、責めるものでもないだろう。

「なにがあったかは知らねーけど、今すぐどこかに隠れる必要があるんだろ?」
「日本から逃げ出したんだ、それぐらいはわかるさ」

何かから避ける様にフードを深くかぶっているタイリーとヒヨリに話しかける。二人はゆっくりと俺たちの顔を見上げた。あまりにも真っ青な二人の顔に、思わず目を見張る。きっと、逃げるしか方法はなかったのだろう。怒涛の様に逃げて来たのだろう事を想像して、やはり今すぐにでもあそこに連れ出さないと、と思った。

「...すまない、フレッド、ジョージ」
「ごめんね...」
「何言ってんだよ相棒」
「あぁそうだ。困った時はお互い様だ、そうだろう?」

少しでも二人の緊張が治ればいい。俺とフレッドはにやりと笑って、そう言った。少しだけ肩の力が抜けたのだろうほっとした様な顔が見れたのを機に、フレッドはタイリーの手を、俺はヒヨリの手を握った。

「アンジー、手紙ありがとうな」
「ううん...私にはこれしかできないけれど...」
「ねぇ、夏休み明けにはまた会えるわよね?会えるって信じていいのよね?」
「ホームでまってるからな、タイリー」

今生の別れでもないのに、と笑うか?残念だが、もしかしたらそれもあり得るかもしれないのさ。事情はよく分からないが、二人が家から逃げて来たのには大きな何かがあったからだ。しかも日本からも逃げてる。国外逃亡ってやつだ。

ヒヨリから手を離した二人に、笑いかけるヒヨリの顔が、いつものような笑顔ではなくて痛々しかった。いつもは満開の花が咲く時の様な笑顔を見せるんだこいつは。その笑顔の端が震えていて、彼女の手を握る手に力を込める。

「手を離すなよタイリー」
「あぁ...」
「オジョーもだ」

こくりと首を縦に振ったヒヨリを見て、俺たちは一緒に付き添い姿くらましをして、漏れ鍋からきえた。









「これを見てくれ」

シリウスに渡された羊皮紙を、二人に見せる。

"不死鳥の騎士団の本部はロンドン、グリモールド・プレイス12番地に存在する。"

それをしっかりと覚えろともう一度言い聞かせて、二人が同時に首を振ったのを機にフレッドがその羊皮紙を燃やした。塵となり消えていくのを見届けたあと、目の前に立っているアパート達が左右に分かれる様に動き出し、あいだから押し出されるようにもう1つの家が現れた。

呆然とそれを見上げている二人の顔を見て、俺とフレッドは思わず笑ってしまった。あの二人でもこんなに驚くことがあるんだな。

家の扉を開いて急いで二人を中にいれる。扉を閉じて、二人がようやくローブのフードを脱いだ時、長い長い廊下の奥からハーマイオニーがはしりだしてきて、ヒヨリの腰に勢いよく抱きついた。

「ハーマイオニー...!?」
「ハリーまで...!!」

後ろからハーマイオニーを追いかける様に走って来たハリーとロン、ジニーがひとまず安心したのか笑顔を見せて近づいた。ハーマイオニーの背中に腕を回して、驚いた顔をしているヒヨリとタイリーに、とりあえず中に入れと背中を叩き先を促せば、リビングのほうからママとパパが出て来た。

「話は聞いたわ、ヒヨリにタイリーね?ようこそ」

ハーマイオニーがうまく説明してくれたのだろう。ここを出る時とは違って俺とフレッドと同じぐらいには焦ってる様な顔したママが、ヒヨリとタイリーを抱きしめた。とりあえずはこれで安全だろうか。二人がホグワーツに戻るその時まで、ここで安心して暮らせるだろうか。俺達の仕事も終わり、二人でハイタッチをしていれば、リビングの方にいるシリウスが声を上げた。

「ヒヨリ、タイリー!!」

シリウスの無罪を主張したのは、ヒヨリらしいという事はハリーからきいていた。裁判の時に会ったのだろう、シリウスを見た時のヒヨリとタイリーの顔は、驚きの顔だ。というかさっきから驚いてる顔しか見ていない。ママに抱きしめられた時も、パパに握手をされてた時も、ずっと目を丸くしていたしな。

「何があったのか、説明してくれるか?力になれることがあるのなら、私も力を貸したい」

二人の背中を押して再度リビングに向かわせれば、開口一番シリウスがそう言った。隣にはリーマスも真面目な顔で二人を見つめていて。何があったのか、詳しい事は俺たちも知らないから、とりあえず全員でリビングの椅子に座り、二人の話を聞く体制になった。

「まぁ、子供達は寝る時間ですよ」

なのに、ママがそうやって眉を顰めるものだから、思わず俺とフレッドはかたを竦ませた。やれやれ、俺たちは親友だというのに。この二人をくっつけたのは俺達と言っても過言じゃないんだぜ?

「ママ、俺達は二人の親友だぜ?」
「同じ寮で」
「同じ部屋で」
「七年間も過ごして来た」
「何があったのか聞く権利はあるさ」

それに助けを求めて来たんだ。その理由だって、俺達が聞かないで誰が聞くというのか。
ママは納得したのか、次にロン達を見た。当然聴くつもりだっただろうに、その顔を向けられて、ロンもハリーもむっとしている。

「ママ、僕達はタイリー達の後輩だよ」
「入学した時からずっとお世話になってます。何かできるのであれば、私達だって何かしてあげたいです」
「二人はいつも、僕達を守ってくれていた。次は僕達が...」
「ママ、お願いよ...」

もうお手上げなのだろう。パパに肩を叩かれて、ママは台所の方に向かうとケトルに水を入れて火をつけた。それを視線だけで見届けて、前に座る二人に目をむける。タイリーがヒヨリの腰に腕を回してきつく抱きしめていた。




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