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我らがグリフィンドールの王様であるタイリーが首席に。そしてハーマイオニーとロンが監督生に。それだけでこんなにもお祝いムード一色なのに、ただ一人、ハリーだけがどことなく暗い雰囲気を持っていた。
皆が飾り付けや料理をしている中、私は少しだけその場を離れて階段を登り、扉が開けっぱなしにされている部屋にゆっくりと足を踏み入れる。

「...ヒヨリ?」

眼鏡の奥の緑の瞳を曇らせているハリーが、ゆっくりと私の顔を見上げた。ベッドの端に座って、彼の隣に近づく。そっと手を伸ばしてハリーのふわふわの髪の毛に手を乗せれば、ハリーは少しだけ笑みを浮かべて目を伏せた。

「どうしたの、ハリー」
「...ううん」
「本当はハリーが、監督生になりたかった?」
「...なりたかった、わけじゃなくて」
「うん」

ゆっくりゆっくりと、ハリーの気分が少しでも晴れればいいなと手を動かす。

「どうして、僕が監督生に選ばれなかったのかなって...」

どこまでも責任感の強いハリーらしいその言葉に、私は思わず笑ってしまった。

「ハリーはすごいね。私だったら面倒って思っちゃうよ」
「そうなの...?ヒヨリの方こそ、いつも沢山の事を抱えているのに。僕は君の方が、すごいと思うよ」
「そうかなー...ぜーーーんぶ、捨ててしまいたいって、本当は思ってるよ」

ハリーの頭から手を離して、私は膝の上で頬杖をつき、その上に顎をのせてじっと前の壁を見つめた。

全部全部捨てて、投げ捨てて、誰もいない所でただひっそりと生きていたい。昔、お母さんとお父さんと3人で過ごしていたあの家のあった場所みたいに、ただゆっくりと時の流れに身を任せて。そんなことができたらいいけれど、まぁ、今の所できそうにもないし。だって、逃げ出してしまったから。

「...ヒヨリは、凄いよ」
「え?」
「僕、ヒヨリみたいになりたくて。監督生になれなかったことが嫌なわけではないけれど、ただ、少しでも君に近づきたかったんだ」

ハリーは、私の目をじっと見つめながら言葉を紡いだ。さっきまでの曇っていた顔はどこにいったのか。ハリーは笑顔を小さくその顔に浮かべて、そしてまた、口を開く。

「...本当はね、黙っておこうと思ったんだけど」
「うん?」
「僕の初恋は、君なんだよヒヨリ」

初耳のそれに、私は思わず目を見開いた。ハリーが私のそんな表情を見て面白かったのか、ふふっと笑い声をこぼして、手で口を覆った。

「タイリーには黙っててね。あ、もちろん、今は違うよ!!好きだけど、そういう好きじゃ...!!」
「うん、わかってるよ」

明らかに動揺しているハリーの肩に手を置いて、落ち着いて、と声をかける。自分から言い出したことなのにそんなに焦るなんて、やっぱりハリーは、昔から変わらずかわいい男の子だ。

「...今は、ジニー?」
「...え、どうして...あ...!!」

なんて、適当にかまをかけてみたら自分から墓穴を掘ってしまう所も。どこまでも可愛い弟のようなハリーに、私は笑顔を浮かべてもう一度、彼のくしゃくしゃの髪をゆっくりと撫で付けた。

「...気分は晴れた?」
「...うん。僕のせいでごめんね。折角タイリーが首席になったお祝いなのに」
「大丈夫。貴方が元気ない方が、私は気になっちゃうもん」

彼が入学した時から。ずっとずっと、彼を守ってきたつもりだ。誰に言われたわけでもないけれど、それでも。こんなに優しい男の子を、守らない人なんているはずがない。だからこそ、私はいつだってハリーの味方になってあげたい。











「「ハーマイオニー、ロン、タイリー、おめでとうー!!」」

双子達が今まで散々に作ってきていた(らしい)クラッカーなるものを取り出し、パンパンと鳴らして前に立つ3人に祝福の言葉を投げる。監督生バッチをつけたロンとハーマイオニーは少し頬を赤らめてそわそわとしていて。そんな初々しい二人を見るのがなんだか面白くて笑っていれば、ハーマイオニーが私の視線に気づいてまたさらに頬を赤く染めた。

「よう首席様、どうだいこのパーティーは」
「首席様のお眼鏡にかかったかな?」
「その嫌味ったらしい口調をどうにかすればな」

タイリーの肩にわざとらしく腕をからめてそう聞くフレッド達も、いつもどおりで。あの怒涛のように日本から逃げ出した一夜が嘘のように、今は心が穏やかだった。

「はぁい、ヒヨリ、楽しんでる?」
「あ...はい。美味しいご飯がたくさんで」
「ふふ、見た目にそぐわずに結構食べるのね?」

私の近くに寄ってきた魔女は、綺麗な赤髪をさらりと揺らしながらニコニコと笑った。

「日本から逃げ出してきたんだって?」

唐突に、前にいるタイリーを眺めながらそう聞いてきたニンファドーラさんに、私は思わず目を見開く。たしかに、未成年ではないけれど学生の身分で家を逃げ出した事は迂闊な判断だったとは思っている。それでも、今の私たちにはこれしか手段はなかったのだ。

「あぁ、べつに怒ってるわけじゃないのよ」

彼女はそういうと、ゴブレットの中に入っているワインをぐいっと飲み干して、そしてうっすらと染まった頬をあげながら私の顔を覗き込んだ。

「いいわね。素敵な恋愛をしてると思うわ」
「ニンファドーラさん...」
「あぁやめてやめて、私その名前嫌いなの。トンクスって呼んで。あと、フランクにいきましょう?」
「...トンクス?」
「えぇ、そうよ。リーマスから聞いてたの。貴方達二人のこと」
「私たちのこと?」

タイリーの頭をゆっくりと撫でながら、まるで親のように褒めているリーマスとシリウスを見る。タイリーは二人に囲まれて、なんだか少し照れているようだ。

「貴方達二人を、引き離してはいけないって」
「え...」
「だから、国から逃げ出した事は考えものだけれど、それでも二人を守り抜こうって。私達はハリーだけじゃなくて、貴方達二人も守ろうって決めたのよ」

そんな事を、不意に言われて仕舞えば。

ゆるゆると揺れる視界に、思わず下を向く。味方なんて、いないと思っていた。もちろん、フレッド達やアンジー達やハーマイオニー達は味方だと思っている。でもそれは、友達だから。親友だから。大切な人達だからだ。

だって。そうじゃないか。

「...泣かないで、ヒヨリ。ちゃんと皆が、貴方達二人の恋を大切にしてあげたいと思ってる」

反対されて今まで生きてきた。いや、反対されてたわけじゃないけれど、どう考えたって私の人生は一本道だったんだ。
それが今になって。こんなにもたくさんの人に支えられていたことに気づいた。動こうとしていなかった私達を、ずっとずっと応援してくれていたんだ。

きちんと恩返しをしないといけない。私達ができるのは、ハリー達を守ってあげる事だから。



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